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連載『オスカルな女たち』

《 母か、女か、》・・・18

 織瀬(おりせ)が倒れた夜、駆け付けた真実(まこと)がだいたいの話を説明してくれていた。おかげで織瀬は悲しみのすりこみをしなくても済んだわけだが、それでも会話を繋ぐことはできなかった。
「あなたのしたいようにすればいいわ。なにかあれば言ってちょうだい。あの様子じゃ幸(ゆき)は役に立ちそうにないから」

 あの夜以来、また沈黙が訪れた。
 幸は織瀬にどう声を掛けたらいいのか解らないようで、なにか言いかけては口をつぐむ、そんなしぐさを繰り返すばかりであった。
「息子にも責任はあるし。失礼だけど、お金のことはこちらに任せてちょうだいね。いいえ、そうさせて…」
 反論しようにも声が出なかったが、頼子ははじめからその件に関して譲る気はないようだった。
「お見舞いも、あなたがいやなら控えるわ」
「そん、な…」
 声にならない言葉を発する。
 でも、きたからと言ってどうなのだろう。今は考えられない。
「織瀬さん、」
「は…ぃ…」
 この期に及んで、「返事がない」と叱られるのかと思った織瀬だったが、
「幸と、別れてもいいのよ」
「え…」
 それまでコーヒーカップに添えられたスプーンに映った自分の顔を眺めていた織瀬は、その日初めて顔を上げた。

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たゆ・たうひと
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