連載『オスカルな女たち』
《 水曜日。家出。》・・・4
「ほかはよろしいですか…?」
そう応えながら真田は、正面に見える織瀬(おりせ)に目を移したように見えた。
「ない。とりあえず飲み物…」
そう答える真実(まこと)の言葉をよそに、織瀬は多少の居心地の悪さを感じていた。なぜなら今日は、旅行の一件で先日つかさと訪れて以来の来店だった。
わかりました…と言って去っていく真田は、いつも通りで憎らしいくらいだが、だからと言ってあのやり取りがなかったことにはならない。
「やっぱり、私にはこちらの方が気が楽だわ…」
ほっとしたように右隣に並ぶ3人を眺めるように順に見る玲(あきら)。
「こちら…ね…」
その言い回しには少々しこりが残るようで、真実は頬杖をついて黙り込んだ。
「それで、どんな話をしたの?」
玲を覗き込むようにしてすぐ隣のつかさが言った。
「どんなって?」
「女、子、会…」
こちらも、それはそれで興味の惹く話題ではある。
「それは…。実に、くだらない話よ。覚えてないわ…建設的では、なかったわね」
そう言って玲は誤魔化すようにして取り皿に手を伸ばした。
(お兄様が浮気してるかもしれない…なんて話題、ここでまで持ち出したくないわ)
「でも、久しぶりに取り巻きに囲まれたのね。ちょっとその場を覗いてみたかったな」
「他人事だと思って言ってくれるわね、織瀬。…でもあの人たち、私たちが羨ましかったって言っていたわ…」
言ってしまって、話の内容をどう処理しようかと言葉を飲み込む玲。
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