チューリップ紫

連載『オスカルな女たち』

《 真実を語る 》・・・6

(早く寝たかったのに…)
 ぼやいてみても状況は変わらない。
 せめて今日が「休診日でよかった」と思う真実(まこと)。この日は夜勤明けであったにもかかわらず、朝から忙しくなりそうな予感がしていた。

「ごめんね、朝早くから。夜勤明けで疲れてるんじゃない?」
 電話連絡を受け、玄関先で出迎える。
「そんなことはどうでもいい」
 そう言ってしまって、気を遣うだろう織瀬(おりせ)に、
「いや、昨夜は比較的静かで、仮眠もとれたから…」
 と、言い直した。
「仕事は? これから?」
 普段と違う服装に、フリー出勤なのかと問う真実。
「今日はね、外で打ち合わせなの」
 スリッパに履き替え、見上げる織瀬の顔はとても疲れていた。
「なるほど」
 早朝に織瀬から「相談がある」と連絡が入っていた。
 だから、休診日のルーティン作業に茶々が入っても、苛立ちをあらわにせず受け流せると思った。
 自分らしくないことはもうしないようにしよう…そういうつもりで、濃子とのやり取りを受け入れたのだ。

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