連載『オスカルな女たち』
《 水曜日。家出。》・・・8
つかさは目を丸くし、ふたりいるうちの娘のどちらか…などという思考は当然、
「なにがあったのよ~。羽子(わこ)ちゃん、と…?」
と、本題を突き付ける。
対し、玲(あきら)は言いにくそうに深く息を吐き、
「…ママにはあたしの気持ちはわからない、って…」
以外に普通の言葉に、
「そう言われたの…? 珍しいこともあるものね…」
と、つかさは何気ないことのように返した。
「わからないわよ。…私、自分があの子の年頃のとき、父親が大っ嫌いで、世の中みんな敵だったから。それに、…お母様と、まともに話したことがないから、あの子にどう接していいのか。…わからないのよ」
玲の母親は、玲が物心つく前に他界していた。
話をしながら語尾がだんだんと小さくなっていく。そうして玲は
「正直、苦手…」と、取り繕うことなく付け加えた。
「そうか、玲。泣かないで…」
「泣かないわよ。悔しいもの」
取り繕わなくていい関係…玲にとって「こちら」のオスカルたちはそれだけ大切な存在になっている。
こうして声を掛ければ、誰かが必ず駆けつけてくれる。「あちら」のオスカルたちにはそんな真似はとてもできないし、あちらはあちらでそんな付き合いがあるのだろうかと、先日のことを思い返すだけだ。
「さすがにそこまでじゃないか」
「そりゃそうだ」
玲が娘ごときで涙を見せるわけがない…と、当然のように言う真実(まこと)に、4人が一斉に笑ったところで飲み物その他が運ばれてきた。
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