連載『オスカルな女たち』
《 スパイス 》・・・12
「ーーー町の件なんだけど…」
「は、はい」
「そうかしこまったものでもないでしょう。いつもの得意のお調子はどうしたのかしら」
「ま、まぁ」
「仕事よ。うわの空じゃ困るわ」
言いながら玲(あきら)は、内心楽しんでいた。秋山の怯えたような態度がおかしくてたまらないのだ。
「はい…」
秋山はしずしずとソファに腰掛け、綾香が給湯室に入ったタイミングで
「先日は、す、すいませんでした!」
激しくビンタを食らった左頬をさすりながら、秋山は気まずそうに小声でうつむいた。
「やめてよ。聞こえるわ…」
ちょっとからかってやろうと思っていた玲だったが、思いのほか真面目腐った秋山の態度にそんないたずら心も面倒になった。
「ぁ、いや、その…」
「べつに気にしちゃいないわよ」
もっと堂々としていればいいのに…と、玲はため息を漏らした。
「ぁ、はぁ。そう、ですか。てか、それもそれで、…落ち込むっていうか」
大いに気にしてほしい秋山としては、いつも通りの玲にさらに気落ちせざるを得なかった。
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