連載『オスカルな女たち』

《　結婚記念日　》・・・５

このまま、いつも通りに過ぎていくのだろうか…。

世間では俗にいう〈Sweet１０ダイヤモンド〉、本来は結婚１０周年を記念して夫が妻に感謝の意を込め「愛の証」としてプレゼントする指輪のことを指す。
もちろん妻とて感謝の気持ちがないわけではないが、結婚当初と違いお互いに余裕もでき、この先の１０年のために「新たな誓いを立てる」意味ではいい趣向ではないのだろうか。

（べつにダイヤモンドが欲しいわけじゃないんだけどな…）

幸（ゆき）がそんな商業用キャンペーンに踊らされる人間ではないことは承知している。むしろ知らないかもしれない。

わざわざ耳に入れる気もないが、現実問題、優雅に１０粒のダイヤモンドをプレゼントしてくれる旦那様の具体例を聞いたこともない。

逆にダイヤモンドにお金をかけるくらいなら…と、現実的な夢のない奥様の方が多いのかもしれない。記念日を祝うことはあっても、この素敵な響きのイベントが各家庭で行われているのかといえば、それはごく一部のこと。

いずれにせよ〈Sweet１０ダイヤモンド〉、女性なら誰しも憧れるもの。
もちろんそれだけが「愛の証」というわけではない。
夫婦それぞれ、いろんな「愛の証」の形があるだろう。だが…。
もちろん、幸は頓着しない。

そして織瀬（おりせ）自身「感謝」を求めているわけでもない。