蜜月の刻(とき)
よく、大事なものは失くした後に気づくっていうけど、そういうのとは違うと思ってた。だって、追いつきたかったし、同じスタートラインに立ちたかったから・・・・
編集者:匿名希望
もっと自分を大事にすべきだと思った。
「最低ですよね」
「それを自分で解ってるだけまし」
(呆れられているのだろうか)
女医さんの表情は、最初から変わらずちょっと怖い。でも、産婦人科の先生だものね。その先の最悪を考えると、やっぱりわたしのした行為は最悪だ。
「当然だけど『初めて』って、たった一度しかないからやり直せない」
「そうでもない。自分のしたことに責任を感じているなら、やり直せないことはない。確かに、もう『初めて』じゃないかもしれないけど」
それは「自分の中の問題」だ…と、彼女は自分の胸を指して答えた。
「あ…。あ、れ?」
気が付くとわたしの頬はぬれていた。
あれはヤキモチだったのか、やっかみだったのか、よく解らなかったけど、あの頃はみんなと同じじゃないことが、悪いことのように感じた。あの頃は、ちょっと休んでる間に、授業に遅れてついていけなくなったくらいのことと同じように感じていたけど、本当はそうじゃなかった。
「先生。聞いてもらえますか?」
わたしは急に、すべてをぶちまけたくなった。彼女は小さく微笑んだ。
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