連載『オスカルな女たち』
《 過去からの手紙 》・・・11
(動けなくなるほど…?)
〈急に…?〉
〈はい…。先生は胃痙攣じゃないかって言ってましたが…〉
〈いけいれん?〉
〈はい〉
〈そう…入院とかにならなきゃいいけど…〉
〈入院…! そうですね〉
力なく壁にもたれかかる真田。
〈でも、いてくれてよかったよ。おりちゃんひとりじゃどうなってたか…〉
状況はどうあれ、ひとりじゃなくてよかった。
〈そう、ですね…〉
〈もう、章悟くんがそんなんでどうすんのよ〉
言いながら軽く腕をこついた。
よく見ると真田のジーンズの腰のあたりから不似合いなハイヒールが伸びている。どうやらベルト部分に織瀬の履いていたハイヒールを引っかけているようだった。
その様子からつかさは、真田が織瀬をここまで抱えて来たのだろうと推測できた。
〈それ…〉
〈あ…織瀬さんの…〉
そう言ってヒールを差し出す真田に、
〈ありがと。でも、真田くんはもう帰って〉
連れてきてもらって悪いけど…と、厳しい表情で告げた。
〈でも…〉
〈うん。心配なのは解るけど、旦那さまにも連絡しないと…〉
言われて真田は口をつぐんだ。
〈ごめんね〉
きついようだが、状況を把握できていない状態で、どう説明すればいいのか思考が追いつかなかった。
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