タラモサラダ__2_

連載『オスカルな女たち』

《 やさしくなれない 》・・・18

「ほらね…」
 口元を歪め、カクテルを飲み干す織瀬(おりせ)。
「まぁ、犬も食わないって程度のことだったし」
 玲(あきら)にとってはそれほど大げさなことではないと流す。
「おりちゃんのおかげなんだね」
「おかげかどうかは解らないけど…彼女、とってもピュアで、本当にお兄さんのこと全身全霊で『愛してる』って感じだった。羨ましいくらいに、疑いもなく。もちろんお兄さんもね」
「それで、なにか感じちゃったわけ?」
 珍しくつかさが突っ込んだ言い方をした。
「結婚期間が長いと、自然にそういうのってなくなるものじゃない? 新婚当初のような身から染み出るようなしあわせ?…っていうの? でも、なんだかんだ言っててもこのふたりは『しあわせなんだろうな』って、あの日目の前で見ていて思ったの。揺るぎないなにかがふたりの間にはまだある。…花束抱えて来たお兄さんも、それを受けていじらしいくらいにそわそわしてる明日香さんも、憎らしいくらいだった」
 織瀬はひとつひとつ、とつとつと静かに語った。それは感情を押し殺し、取り乱さないためにあえてそうしているかのようでもあった。実際トイレに立つ前と後では、織瀬の表情がまったく違う。

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