連載『オスカルな女たち』
《 いちばんいい? 》・・・8
「い、言わない。言えるわけないじゃん」
(当然か…言えるくらいなら帰ってる…!)
ほっとするも、
「いじけてんじゃねぇよ! そんなちいせぇことで…」
デスクに拳を押しつけた。
「先生!」
「わかってるよ!」
「マコちゃんには解らないよ!」
瞬間、真実(まこと)は顔色を変えた。
「あ~あ~わからないね! おまえは玲(あきら)が…。玲がどんな想いでおまえを産んだのか解っちゃいない…!」
真実は小さくそう言って背を向けた。
(それこそ命の恩人だぞ…)
もちろん羽子(わこ)は、当時の玲が激しく周りの反対を受け〈里子〉の話まで出ていたことを知る由もない。
「先生、どこ行くんですか?」
出口に向かう真実を追いかける楓の声。
「あたしじゃだめだ…操先生と交代」
ため息交じりにそう言い残して真実は診察室を後にした。
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