連載『オスカルな女たち』
《 ギフト 》・・・4
院内に戻り、2階の新生児室の赤ちゃんの様子を伺ったあと階下に降りると、正面玄関で看護師が客の応対をしていた。
「あ、真実(まこと)先生。お客様でーす」
真実の足音に気づき、看護師がこちらに声を掛ける。
「は~い」
少々やる気のない間延びした返事をしてしまい、「やべぇ」と急いで駆け降りるとそこには、
「織瀬(おりせ)…?」
とうとう検診にやって来たのかと身構える。
「ちょっと、いいかな」
だが、少し様子が違う。強張った笑顔に、なにやら段ボールを抱えてる。
「どした…?」
「できれば、人払いしてもらうとありがたいんだけど…」
診察室に向かう途中、織瀬は小さくつぶやいた。
「え? いいけど…」
真実にとってはデジャヴのような展開だった。だが織瀬に対し、思いつく要素はない。
「診察じゃないから、手伝いはいいよ。下ろしちゃって…」
さりげなく窓口の看護師に声を掛け、もう患者も来ないだろうと受付のシャッターを下ろすよう指示する。黙ってうなずく看護師を確認したのち、「とりあえず、こっち…」と足早に織瀬を診察室に促した。
「座って…」
デスクの椅子に腰かけながら、織瀬に目の前の椅子を勧めた。
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