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街猫街犬パラダイス、トルコ 7

イズミル空港、まさかの大ポカ

 エフェス遺跡で古代のロマンだけでなく、なぜかあちこちにいる街猫街犬を堪能したヨシオは、旅の最後となったセルチュクの宿で翌日の長い一日を頭の中で段取りしていた。
 予約したイズミル空港発イスタンブール国際空港行きの飛行機は19時前の発。1時間あまりのフライトでイスタンブール国際空港に。同空港から羽田への帰国便は、翌日午前2時台の出発、約11時間のフライトとなる。 

夕方のセルチュク。街猫が元気に動き始めた

 イズミルの中心まではトルコ国鉄セルチュク駅から1時間あまり。途中にイズミル国際空港駅があるから、ホテルのフロントの助言は次のようなものだった。
 朝9時の電車でセルチュク駅からイズミル国際空港駅へ。ロッカーに重いスーツケースをいったん預けてから再び電車に乗って半時間ほどでイズミルの街に行けば、最後の日程を楽しむことができる、と。
 ヨシオもイズミルでエーゲ海をひと目見て、旅を締めくくろうと思った。

セルチュクのホテルではヨシオの帰りを待ってくれていた

 イズミル国際空港は関西空港より広いのではないか。インフォメーションで聞いてロッカーにたどり着いたヨシオは、一つだけ開いていた大きい扉を見つけほっと一息ついた。
 スーツケースを入れ扉を閉めて液晶パネルの言語を英語に設定。指示通り6桁の暗証番号を入力、ヨシオは光るスロットルにためらいなくクレジットカードを差し込んだ。
 トルコでは大抵の店でカード決済できたし、街のあちこちにATMがありカードでリラのキャッシングもできた。

ホテルを出ようとドアを開けた途端、部屋に入り込んできた猫。走り回ってなかなか出て行ってくれなかった。ヨシオの旅の終わりを惜しんでくれたかのように

 ところがカードはシュルシュルという機械音とともに吸い込まれ、液晶画面がオレンジ色の警戒色となってトルコ語の文字が出ているではないか。ヨシオは「アレッ」と驚き、スロットルの下を見て青ざめた。「紙幣のみ」。
 「しまった!」。ヨシオはスマホの翻訳アプリに事情を打ち込み、ロッカーを利用しに来たトルコ人らしい男性に助けを求めた。彼はロッカーに書いてある電話番号に問い合わせ、あれこれやり取りしながらスロットルの下の取っ手を強く引っ張った。ボコッと箱が外れ、中にはゴミと一緒にヨシオのカードが転がっていた。

いずれも朝のトルコ国鉄セルチュク駅

 短いイズミル観光を終え、といってもエーゲ海沿いのトラムに乗っただけだが、再び空港のロッカーに戻ったヨシオ。間違わないようにメモしておいた6桁の暗証番号をパネルに入力、次にロッカー番号をタッチしたが、うんともすんとも反応しないではないか。
 額の冷や汗にいやな予感がにじむ。2回、3回と試みても駄目なので、ヨシオは改めて冷静になって表示を読んだ。
 「色を選べ」と。「色?」。表示されているロッカー番号に何色かの色が重なっていた。ヨシオは使ったロッカーの色を確認、番号とは異なるが同色の所をタッチ、ガシャンと扉は開いた。

イズミル・コナック埠頭の公園にて。かすかに見えるのはエーゲ海

 北ではロシアのウクライナ侵攻、南ではイスラエルとガザの紛争という緊張した中、トルコの人たちは皆親切でヨシオの危なっかしい旅を支えていただきました。
 思いもかけず、街猫街犬との出会いが旅を楽しいものにしてくれました。
 では、また、いつかどこかで。

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アキボー@時代遅れのジャーナリスト
シニアの旅に挑戦しながら、旅行記や短編小説を書きます。写真も好きで、歴史へのこだわりも。新聞社時代の裏話もたまに登場します。「面白そう」と思われたら、ご支援を!