前日譚
(修正なう。とりあえず出す。)
◇ ◇ ◇
「暇つぶしにクイズをしよう! ワトソンくん!」
いや、暇じゃないでしょ、あなたは。
やるべきお仕事があるじゃないですか。
「なあに、リフレッシュを兼ねた、かんたんな頭のエクササイズだよ。秒で片付くさ。」
お構いなしにつづけるんですね。はいはい。
「実は今、久しぶりに『黒猫のウィズ』を遊んだんだよ。ほら、最終章が遂に解放されたらしいからね。んで、『黒ウィズクイズ』っていう、画像をみて何か当てる四択クイズで遊んだんだよ。ほら、全問正解するとクリスタルがもらえるからね。」
仕事中に何やってるんですか、先生。。
いくらフリーランスみたいな仕事だからって、裁量労働制にも程がありますよ。
「そして、遂に最終問題まで来たぞ!ひゃっほい!」「クリスタルを賭けた運命の一問はこちら。どうぞ。」
四択クイズじゃなくて、なぜか二択クイズですね。バツがついてますよ。
「それはだな。どうにもこの問題がわからなくてね。迷わず使ってしまったよ。」
「50:50(フィフティ・フィフティ)!!」
「スーパーコンピューターが、こたえを2択にしぼります!!」
\ デ ン !!/
いや、鳴らないから。
古いから。一瞬だから。
「おこたえが、おふたつに、おしぼりになられたわけだ。」
なぜに丁寧語。
2つにすっかり分かれましたか。
「Cのスカラ座」と「Dのグローブ座」ですね。
「さて、幸か不幸かどちらでもないんだが、『Aのオペラハウス』と『Bのコロン劇場』が消え去った。」
◯A オペラハウス
「先ずAの『オペラハウス』だが、おそらく出題側が想定しているのは、オーストラリアのシドニーにあるオペラハウスのことであろう。白いヨットが集まったような特徴的な見た目で、世界遺産にも登録されているアレだ。誰もが一度はみたことがあるだろう。一発で違うとわかる。」
これですね。明白ですね。
「とはいえ、オペラハウスという名前は、別に特定の建物、オーストラリアのオペラハウスだけを指すのではない。オペラを上演する建物は、皆、オペラハウスだからね。お米じゃないのに、ごはんっていうようなもんよ。」
パンはごはんですか?って訊かれるのと同じか。
「さてはワトソンくん。『朝ごはん食べた?』って訊かれて、『食べてないよ。パンは食べたけどね(ドヤッ』ってドヤ顔する口だろ?」
いつの時代のギャグですか。自然言語の処理、苦手すぎだろ。昭和じゃあるまいし。
「まぁ、だから、『この建物はオペラハウスですか?』と問われれば、こたえはYESと答えても、間違いにはできなかろう。」
「また、世界三大劇場の並びでいけば、イタリア・ミラノのスカラ座、アルゼンチン・ブエノスアイレスのコロン劇場と並ぶ、フランス・パリのオペラ座のことをオペラハウスと言っている可能性もある。」
「個人的には、オペラをやるとこは皆オペラ座なんだから、ガルニエ宮と言い分けた方がよいと思うがね。」
「このように、コロプラさんが限定が甘い問題や、嘘問を垂れ流してきた可能性もあるわけだ。」
「だからAをとりあえず選んでおけば間違いない。もしAが正解だとすれば、全問正解のクリスタルをもらえるのでよし。逆にAが不正解だったとしても、限定が甘い!と、運営にいちゃもん、もとい、クレームをいれて、詫び石をもらうもよし。どちらにせよ、Aを選べばクリスタルはゲットできるという寸法よ。」
歪んだ遊び方してますね。
「しかしながら、ガルニエ宮がどんな外見なのか?と聞かれると、実はわからない。確か、屋根に金色のかざりがシャチホコばっていた気もするが、自信はない。」
んで、Aが消えてくれたと。
「まぁ、正解かどうか確証は得られなかったわけだから、スーパーコンピューターさんナイスプレーとほめてあげたいな。」
それは、ようござんしたね。スーパーコンピューターさんだけでなく、わたしにもお褒めのお言葉のひとつやふたつくださいよ。たまには。
「君が言うと、素晴らしい皮肉に聞こえるな。」
はいはい。
◯B コロン劇場
「そしてBの選択肢。コロン劇場。」
「これはクイズ的には名数問題で答えになりやすいことで有名な劇場だ。」
Q.「世界三大劇場」に数えられるのは、イタリアのスカラ座、フランスのオペラ座と、アルゼンチンのどこでしょう?
ってベタ問ですね。
「そうだ。ミュージカル『オペラ座の怪人』や、金田一少年の事件簿の『オペラ座の怪人殺人事件』で有名なオペラ座、オペラの生誕国イタリアにおいて最高の舞台と称される歴史あるオペラハウスのスカラ座。この両劇場の知名度を鑑みるに、『は?コロン劇場?何それ?人形劇の劇団ですか?プププップーク』なんて思われても仕方がない。」
「また、他の2劇場がヨーロッパにあるのに対して、アルゼンチンって、ちょ、おまっ、オペラ全然関係ないやん!ってなるじゃん。」
「まぁ、コロン劇場のdisりはこのぐらいにして、世界三大劇場と並び称されるだけあって音楽設備は素晴らしいらしい。あと、クイズ的には、ヴェルディのオペラ『アイーダ』がこけら落としとして上演されたというのは要チェック知識だね。」
「だが!外観は知らん!!」
「南米? アルゼンチン? イッチミリも知らん!!」
「南米だからヤシの木でも建物の脇に生えてんじゃね(ホジッ くらいのイメージしか湧かないが、こんな印象だけで、ヤシの木が生えてないからBは違うな~と言うことはできない。なにせ、クリスタルがかかっているのだ。」
要は、Bの選択肢がなくなってくれて、よかったってことですね。
「そうだ!!スーパーコンピューターグッジョブ!!」
◯オペラ愛とクイズ愛(CとD)
「うまいぐあいに、私を惑わす選択肢を消し去ってくれたのだ。あとに残すは、CとDのみ。ふふっ、知ってるぞ、知っているぞ!僕はオペラに詳しいんだ!」
◯C スカラ座
「Cの『スカラ座』。改めてテアトロ・アラ・スカラと呼ばせて頂こう。」
「それは、幾年にわたるヨーロッパ芸術が到達した頂点。総合芸術たるオペラが生まれたお膝元イタリアで最高の劇場と呼ばれる建物である。イタリアで最高のオペラハウスということは、つまり、この世界で最高のオペラハウスだということだな!疑問の余地など一切なし!人として生を受けたならば一度は訪れるべき場所といえる。」
「かの名作~~、巨匠〇〇の~~などが初演された歴史ある劇場は、内装もまた豪華絢爛。気高い紅絨毯を優美かつ繊細な金細工が飾りたてる。」
「ナポリを見て死ねといわず、スカラ座でナポリタン食って、〇〇のカンツォーネを聴いて死ねと、声高に主張するぞ!!僕は!」
「まぁ、それぐらい素晴らしい場所だ。」
はぁ。。
◯D グローブ座
「一方、Dの『グローブ座』。これは、イギリスの沙翁、シェークスピアの傑作を上演するために作られた建物だ。」
「『世界はすべて劇場』の言葉通り、グローブ座では、悲劇・喜劇・人の世を彩る様々な名演が繰り広げられてきた舞台だ。クイズ的には、~~~~。ぐらいを押さえておけばよいだろう。」
◯こたえは?
ふーん。で、どっちなんですか?先生?
「・・・・・・。」
ん?
「・・・・・・知らん。」
え?
「外観など知らん!!」
えぇー!!??
あんなにご高閲を、たらたらとたれていらっしゃったのに、外観の写真を出されて何劇場でしょう?っていわれてもわかんないの!?こんなにクイズ知識があるのに。何と言葉をかければよいのやら・・・。
「あまり他人をチクチクすると、後でブーメランになって返ってくるぞ。」
一般的にブーメランって、戻ってくる物事の代名詞として使われていますが、大きくて重い、戦闘用のブーメランは戻ってこないのをご存知でしたか?
手元に戻るのは、軽くて薄いお遊びのものだけですよ?
「……だが、今しがた、わかった。」
え?わかったの?
「とはいえ、森羅万象データベースに片足を突っ込んでいる君からしたら、こんな問題、どれが正解かなんて朝飯前、マイクロ秒で正解してしまうだろう。」
まぁ、検索すれば一発ですわな。
「そこで問題です!」
\ デデン!! /
Q.次の問題の正解を導け。
ただし、回答者には以下の知識制約があるものとする。
・「スカラ座」については、「イタリアの劇場である」ことのみ、既に知識を有する。
・「グローブ座」については、「イギリスの劇場である」ことのみ、既に知識を有する。
◇ ◇ ◇
ずいぶん長いモーニングミュージックでしたね。オペラハウスのくだり要りました?もう時間切れになってません?
「案ずるがよい。お助けアイテムでタイマーストップ中だ。クリスタルがかかっている。大事に答えてくれよ。」
タイマーってそうやって使うんですね。。。カンニング、教え合い推奨だわさ。。
■エクササイズ開始!
さて、こたえは分かっている。
Cのスカラ座だ。
間違いない。
(メモ:知識派で博覧凶気なワトソンらしい、こまごまとした知識説明。)
それに、Dのグローブ座は、世界は劇場のとおり丸い見た目をしている。外観はこんなに角ばっていない。
とはいえ、これは森羅万象データベースから持ってきた知識であり、黒ウィズクイズのこたえであっても、この問題のこたえとはなりえない。
なにせ、この回答者は、「スカラ座はイタリア、グローブ座はイギリス」という点の知識しか、各劇場に対して持ち合わせていないんだで。。。
スカラ座について、熱く愛を語りながら、外観を知らないとか、ありえないでしょ。。
何か使えそうなもの……。
使えそうなもの......。
くぅ……。
こんなにも知っているのに、わかることができないなんて。
先ほど先生に向けた苦言が、ブーメランで戻ってきて、この胸にぶっささるとは。。口惜しや。。
「ふむ。インプットする情報が足りないかな?」
「では、君の教師として、ひとつアドバイスをしよう。」
「『よくまわりを、みて、みる』ことだ。」
よく、みるか。うぅむ。
スカラ座の周辺の情報を漁ってみるか。
白い建物。
有名人の〇〇が、スカラ座なう!ってインスタで写真を上げてるね。
スカラ座が燃えたときの絵画もあるよ、うわぁ。だけど、それも使えないわけでしょ。
今、既にこの場で手に入れられる情報のみで、何がいえるだろうか。。
うーむ。この写真。。。
手前に道がある。なんだろう?
解析。横断歩道のパターンだな。
よくみると横断歩道のわきに信号機も見える。
手前と奥の片側一車線なのか。
車、車線、横断歩道、停止線、、、
深く潜る。
!!
ひらめいた!!
鍵となるのは、『車の停止線の位置』だ。
画面下部に注目してみよう。車道が走っており、右下には信号と横断歩道が見える。
加えて、停止線の位置だが、横断歩道に向かって左側、手前の車線に引かれている。
ここから読み取れることは、「この写真が撮られた場所は、車が右側通行だ。」ということである。
ここまでわかれば、話は早い。
車道と言えば、我々の日本では左側通行がおなじみだ。しかし、一般に世界の国々を調べると右側通行が大半である。国連加盟国の〇カ国中、〇カ国。割合で言うと〇割が右側を走っている。
一方の左側通行はというと、日本のほかは、インド、アフリカの一部などが挙げられ、そして、日本と同じ左側通行の国の筆頭が、そう、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国、イギリスである。
これは、『書籍名』『書籍名』『サイト名』等によると、つまるところ、イギリスの影響を受けた国々が左側通行になったものであり、日本がそうなのも、~~~という経緯であるそうだ。
そういった意味で、
命題「イギリスならば右側通行である。」は真であり、無論、この対偶「右側通行でないならばイギリスではない。」もまた真である。(①)
一方、「この写真」の画像は、「左側通行」である。広く言い換えると「右側通行ではない」。(②)
したがって、「この写真はイギリスではない。」となる。(①+②=③)
同様にして、
「Dの選択肢が正解ならばこの写真はグローブ座である」と「グローブ座はイギリスにある」から、
「正解がDならば、この場所はイギリスである。」を導く。(④)
あとは、
「この写真はイギリスではない。」③と、「正解がDならば、この写真(場所)はイギリスである」④の対偶「この写真がイギリスでないならば、正解はDではない。」④’を組み合わせると、「正解はDではない」が導かれる。(③+④'=⑤)
ここで、「正解は、CまたはD」(⑥)であるから、
あわせると、「正解は、Cである。」(⑤+⑥)が導かれる。
Q.E.D
ーーーこの間、わずか0.2秒である。
◇ ◇ ◇
「わかりましたよ!」
「イギリスは左側通行の国だから、Dのグローブ座は左側通行の写真とあわず不正解なので、残ったCが正解というわけです!!」
(どうだ!ほめたたえるがよい!!)
「へぇー、すごいな。」
ふふん。褒め称えるがよい。
「初めて知ったよ。」
へ?
「イギリスって、日本と同じ左側通行だったんだねぇ。へぇ~。やっぱ、ワトソン君は物知りだなぁ。」
(゜ロ゜)
こ、こいつ!!
普段は「英国紳士たるものは」とかほざきながら、アフタヌーンティーをたらふく飲んでいるくせに、イギリスの文化について、ここまで無知なのか?モザイクの脳細胞か!デフラグ定期的にした方がよいぞ、まじで!!
アフタヌーンティーは紳士の嗜みとかいって、深夜の零時、未明を過ぎてからお夜食を食べ始めるんじゃないよ!だから、健康診断でBMIが「少し肥満」とかになるんだよ!!
「心外だな。体重は変わっていない。身長が0.5cm縮んでいたんだよ。こいつはきらりん☆に抜かされる日も遠くないな・・・。はぁ。。。」
「今度から、紅茶にミロ入れよっと♪」
身長186.5cmもあれば、十分ノッポだろ!!
何だ?アンタは三十過ぎてまだ身長を伸ばしたいのか!?
何だ?何を目指しているんだ?
仮面ライダーアギト(195cm)でも目指しているのか?あれ、靴はいてるからね、あとツノも生えてるからね、タッパましましだからね。知ってる?知ってる?
まぁ、しかし、我ながら素晴らしい正解を出したと思ったのだが、想定解ではないらしい。一体どうやって、、、うぅ、、、
「さて、着いた。」
「ワトソン君。さては、君、冷蔵庫から水を持ってきてと頼んだら、野菜のナスビを持ってくるような口だろう。これだから、引きこもりはね。部屋にこもって、アルアルアルアル!と100人に聞きましたばっか見てるからだよ。関口宏ばかりみてないで、もっと、お外に出ましょうね。」
「言ったでしょ?『よくまわりを、みて、みることだ』って。」
車のドアが開く。
「さぁ、世界最高の劇場がお待ちかねだ!!」
眼前にイタリア最高峰の劇場が広がる。
「ってことで正解は『C スカラ座』だね。っと」
スマホをタップする。
\ ピコーン!! /
\ Conguratulations!! /
クリスタルを獲得。
ファンファーレが鳴り響いた。(続く)
澤木恭介・著『問答企画佰物語』収録 ~スカラ座のキジン・変人事件~より