なぜ日本ではデザイン思考が受け入れられないのか!?

お久しぶりです。こんにちは。

今日は、日本でデザイン思考が広まりにくい原因について考察していきます。大まかに以下の3点に触れ、自分なりの意見を述べていきます。


学生の頃から、デザイン思考を活用したプロジェクトや、ワークショップに関わってきましたが、日本の文化的特性や価値観、日本人特有の協調性を重んじる性格など、他国とは異なる独自の感性に面白さを感じました。そして同時に、デザイン思考を用いるうえでの、デザイン思考の扱いにくさを感じていました。

デザイン思考の扱いにくさに、もやもやが溜まる一方、実はデザイン思考が受け入れられない原因の中には、デザイン思考の強みが伝わっていないことだけでなく、デザイン思考云々の前に日本独自の強みが十分にあることが挙げられるのではないかと思いました。
そこで、改めて自分の考えを整理するために、この度言葉に書き出してみようと思います。

1.デザイン思考から見た、日本の強み


そもそも、デザイン思考が欧米で生まれた背景には、日本の価値観が強く影響していたのです。私が他者にデザイン思考について説明する際、ざっくり言えば「人間中心デザイン」だよと言っていたのですが、これはつまり、人のことをよく観察して、人のためになるようなサービス・体験をデザインすることです。それがビジネス面で応用され、より多くの人に使われ、求められるものを提供することで儲けようというものです。

自分のことを犠牲にしてまで、他者が心地よく感じるために行動したり、他者が求めていることをしてしまう、そんな協調性を重んじる日本人の性格を合理性に強みをもつ欧米諸国がビジネスに応用した思考法だと言えます。

学生時代にデザイン思考を学んで、ずっと引っかかっていたことが、他国の作った思考法が日本で活かせているのか?という疑問でした。デザイン思考の事例として良く引き出されるものに、スティーブジョブスのiPod制作秘話。しかし、デザイン思考の実践を重ねるうちに、デザイン思考を勉強したとしても、アート思考が無ければ人を惹きつける発想・創造ができないと思ったのです。分かりやすく言えば、遊び心やユーモアのことです。

この点に関して、日本の画一的な学校教育では、自ら問いを立てて行動することや、自らの意見を持つこと、発信すること、他者と議論する機会があまりに少なく、日本が抱えている課題であると感じています。
(日本の教育現場で実際に学生たちが努力し苦労することは、他者とどううまくやっていくか、場の雰囲気を壊さないか、協調性を高めていくか、といったところが強いと思います。)

そして、そのような環境で生まれ育った私だからこそ、デザイン思考が日本で受け入れられるには、デザイン思考自体に課題があり、日本人が使いやすく効果を発揮できるように、デザイン思考自体をリデザインする必要があると思っています。
そんなことを考えながら、地域で仕事をしていると、日本にはデザイン思考云々の前に物事の創り出していく力が備わっていると感じているのです。

本当は身についているはず。共感、定義、プロトタイプの力。

デザイン思考には5つのステップ(共感、定義、アイデア出し、プロトタイプ、テスト)があり、それらを順序関係なく繰り返し続けることの重要性が述べられています。そこに、ユーザーからの意見を反映させながら、より人に求められるものを生み出すという考えです。

私は、共感、定義、プロトタイプに関して、日本人には生まれ持った素質があると思っています。少し弱いのがアイデア出し、最も苦手とするのがテストの段階です。
共感、定義に関しては、他者を観察する能力、実は(人間・他者・ユーザー)はこうなのではないか?と定義していく力に関して、自分なりの意見を言える環境であれば(環境が重要であるが)、かなり強みな部分であると思います。
そして、私の普段の仕事のなかで、意外と日本人の強みじゃないか?と思っているのがプロトタイプ力です。私は現在、とある島で働いているのですが、お店が少なく、100均も無いので、プロトタイプを作る際には段ボールや身近にある文房具などを組み合わせて色んなものを作っています。
そして、地域住民にあれが欲しい、こんなものを作りたいと相談すると、彼らは道具を巧みに使ったり、身近にあるものを組み合わせて、欲しかった機能を持ち合わせたモノを作っていくのです。

私が普段話す住民の平均年齢は60~70歳の方が多いのですが、彼らは島で生まれ育ったことも関係しているのか、ないものは自分で創るという精神が根付いているのです。そこで自然と身についていったプロトタイピング能力は、デザイン思考が言われる前から、当たり前のように彼らが身につけている人間の本能的な能力ともいえます。物質的に制限がある中で、自ら欲しいものを作り出す能力は、もしかしたら、私が働いている「島」という制限ある環境下で培われる能力なのかもしれませんが、物があふれる前の時代には人間が自然と身につける能力だったのかもしれません。

2.日本のデザイン思考のこれからの課題


「1.デザイン思考から見た、日本の強み」の章で挙げたように、日本人はもとより共感、定義に関して観察力を持ち、何かしらの意見、インサイト鳥屋呼ばれる直感的なモノを持つことは得意だと考えます。そのうえで、共感、定義に関して自分の意見を出しやすい環境を整えることが課題であると考えます。
そして、プロトタイプに関しては、もとより物質的に制限のある環境下で培われやすい?自分たちで創造したいものを作る能力は、日本人からも学べるのだということが知られるべきだと思います。欧米諸国では、プロトタイプ能力を高めるためにそれ専用のモノを使うことが言われていますが、それだけではないということをもっと知ってほしいのです。プロトタイプは、そもそも頭に浮かんだイメージをあいまいな形から具体的に、イラストやモノへ、他者と共有できるように変換する、試作することを指しています。そこに、必ずしも専用のモノは必要なく、身の回りにあるものを使って、どれだけ自分のイメージを他者と共有できるか、に着目されるべきです。

また、やや弱いと思われるアイデア出しに関しては、仕事や生活の中で様々な経験をしているかに結局はゆだねられると思います。私の働いている島では、仕事と別で海や農に関わり、自給自足な面も強い方が多く、様々な道具を扱い、時に自然を活用して暮らしを営んでいます。そんな彼らから学ぶことは、日々の暮らしでの経験が発想の豊かさを育んでいるということでした。何が直接的な原因なのか、はっきりとはまだわかっていませんが、彼らが日々自分なりに考えて暮らしていなければ生活で支障が多少あることも、少なくとも関わりがあると思っています。
アイデア出しの課題点として、自分の境界線をはみ出して、自分自身の体を動かして様々な経験をすることがアイデア出しの能力を高めるために必要な事なのではないかと思います。

そして、テストの段階に関しては、自分たちの創り出した試作品(プロトタイプ)をユーザーに試してもらい、正直な感想を聞くという点で課題が多いと感じています。
まず、プロトタイプを試すという感覚があまりないということです。日本特有かもしれませんが、完璧主義といってよいのか、試作品を本番のように完璧に作ろうとする気質があるのではないかと思っています。そのため、試作品をさらに改善していくこと、テストで拾った声次第では、全く形を変える可能性があるということ、これらを意識することや、その必要性や有意義、合理的であることを体感する経験が少ないのではないかと考えます。ここには、デザイン思考自体が大切にしている、とにかく5ステップを順序関係なく繰り返していくという考えがうまく浸透していない可能性が高いと感じています。
また、テストで声を拾う点に関して、ユーザーの声を正直に聞けない可能性があるのではと感じています。アンケートやインタビューで、ユーザーの声をどれだけ本音を聞き出せているのか、それ自体に不信感があります。日本の場合、言葉で反応を伺うよりも、非言語コミュニケーションとしての動作などに着目し、ユーザーの正直な反応をテストで拾っていくことが重要なのではないかと思うのです。

3.デザイン思考が日本でどう扱われるべきか


多くを述べましたが、総じて言えることは、デザイン思考で大切な5ステップを順序関係なくひたすら繰り返し改善していくこと、そのために試作品をテストして正直なユーザーの反応を拾うこと。ここに、デザイン思考を日本で活用していくうえの課題が大きいのだと思います。

デザイン思考は、座学では絶対に身につかないものであると思っています。効能を実感するには、実際に実践を繰り返していくことが必要だと思いますし、そのためにはデザイン思考を曖昧なまま、感覚的に理解されるように活用していく、広めていくことが意外と必要なのではないかと思っています。

また、従来のデザイン思考のツールでは賄いきれない日本人特有の課題に関して、5ステップの中にはツール自体をリデザインし、新たなツールを考案していく必要があると思うのです。

感覚的な理解を得意とする日本が、デザイン思考への抵抗感なくとっかかるためのきっかけとして、曖昧、感覚的理解が必要であることを示さずに明確かつ合理的な面をうまく伝え広めていく必要があると思いますが、その方法自体が、日本で受け入れられにくいことが、デザイン思考が浸透しない原因とも思います。
それより、もともと日本人に備わっている能力なんですよ!こういう時、困りますよね、そんな時はこうしよう!といってツールが使える。そんな、日本人特有な複雑な心理にも対応した方法論として広まれば、少しは活用されやすくなるのでは?と思うのです。

以上、もやもやしていたことを書き出しましたが、私は現状の考えを書き出すことができてスッキリしました。
これからは、今後デザイン思考がどうあるべきなのかについてモヤモヤをためながら、自分にできることをアイディエーション、プロトタイプ、テスト、適当なステップで繰り返していきたいと思います。





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