TRPGはVRで遊ぶとどうなる?一年向き合って見えた事
こんにちは。VR-TRPGサークル「ぐだぐだぶとん」代表の逆凪と申します。今回はVR-TRPGについて、制作者の視点で分かった事を纏めました。VR-TRPGとTRPGの比較・棲み分けを無料部分で説明し、実際に制作するためのノウハウは有料部分で説明します。
VR-TRPGとは?ぐだぐだぶとんとは?編
VR-TRPG(VRで遊ぶTRPG)については、こちらの記事を見て頂くと分かりやすいです。
TRPGをVRで遊ぶ事で高い没入感を得て楽しく遊べるんじゃないか、という試みですね。といってもスマホでもPCでも遊べるのである意味3D-TRPGかもしれないと思っています。
今までの制作履歴
弊サークルは4月に「全て忘れてしまえたなら」という別のVR-TRPGをclusterにて公開しています。
これはリアルで遊ぶ時と同じようにVR空間で机を囲んで物語を進めて行く「TRPG寄り」のVR-TRPGでした。最新作の「ハローバーチャル」は主人公の視点でダンジョンを探索して物語を進めていく「VR寄り」のVR-TRPGです。
「ハローバーチャル」とは
弊サークルが8/31に公開した第二のVR-TRPGです。スマホ・PC・VR機器で遊べるVR-TRPGでDL(進行役)1人・PL(主人公)1~2人で1時間強で遊べます。
詳細は弊サークルのホームページをご覧ください。
VR-TRPGのノウハウ編
VR-TRPGのノウハウ編の一部・VR-TRPGサークルは生き残れるか・コラムは有料部分にします。概要を以下に箇条書きしておきます。
VR-TRPGのノウハウ編
[STEP1:VR-TRPG何も分からん人向け](無料)
[STEP2:制作に関わる事]
[STEP3:快適に遊ぶ為の努力]
VR-TRPGサークルは生き残れるか
・サークルの方針
・作業分配
・イベントと配信
・今のclusterとVR-TRPGの相性(作りやすさ/遊びやすさ/clusterの文化・人数/収益化/VR-TRPG文化の根)
コラム
・リソースの割り振りと作業分担
・新たなイベント・配信対策:■■■■■(伏せときます)
[STEP1:VR-TRPG何も分からん人向け]
まずはVR-TRPGについてVRサークル(ぐだぐだぶとんではない・TRPGプレイ経験有)で言われた事に返しながら、VR-TRPGの概要を説明しようと思います。Twitterでも同じ意見観測されてて草。
①「TRPGの世界を再現する為に3Dモデル全部用意するのダルくない?」
そんな事は無いのですが、確かに何も知らないとそういう反応になりそうですね。シナリオに関わらない3Dモデルを用意する必要は無いのですが、例えばあるNPCの部屋を調べる事になった時、調べられる対象だけ3Dモデルで用意されていると違和感があります。他の家具はどこに行ったとか、露骨すぎて微妙だと言いたくなりますね。
ですのでこれに関しては「没入感が失われない範囲で3Dモデルを用意すればいい」です。ベッドの下のホコリに至るまで作る必要はありません。3Dモデルで用意していない追加情報はDLの口から言えばいいでしょう。
②「技能振る場所無くなっちゃうよ」
いくつか技能を考えてみましょう。
<観察眼>→部屋に入ってとりあえず観察眼は消えます。(むしろ消えて良かったのでは?)探索に詰まったPLにヒントを出す時に使ったり、ワールドに用意されていない追加情報を出す時に使ったりします。
<聞き耳>→リアル聞き耳に託す意味が無いので、ワールドに音を用意するとしてもダイスを振ってから音を流します。音を用意しないならDLが判定後に情報を出します。
<心理>→ワールドがあるからと言って何か変わる技能でも無いですね。
はい。やってみるとそんなに困りませんでした。ワールド制作は程よく手を抜けばどの技能も普通に使えます。また、技能の結果がワールドに干渉する場合は、こういったパネルを置くようにしています。
③「シナリオに無い事をしたPLのために景観とか3Dモデルをすぐに用意するにはAIが必要でしょ」
お前は天才シナリオブレイカーか?
シナリオが壊されるならそれはシナリオライターが悪いです。うまく行動制限と誘導を組み込み、分岐を用意しておけばPLがシナリオを意図せず壊してしまう事は無いでしょう。ただし、無理にシナリオを壊してつまらなくするようであればそれはPLが悪いですね。
ただ、シティシナリオでは確かに火炎瓶や変な爆弾、違法武器を持ち込む輩が存在します。そういうプレイスタイルが認められるべきだという主張も分からないでも無いですね。クローズドと違って所持品の没収も難しい。そういう時の解決策は3つあります。
(1)ワールドに結果だけ用意する
これは「全て忘れてしまえたなら」でやっている事です。
木造建築を破壊するならトラックで突っ込んだり放火したりと様々な手段が取れますが、結果は全て「木造建築の破壊」なので倒壊した建造物のモデルをワールドに用意しておけば、少し没入感は失われるもののシナリオが壊される事はありません。
(2)NeosVRに行く
clusterではできないけど、他プラットフォームに行けば解決する事もあります。その場合スマホ・低スぺPCユーザーははじかれてしまいますが。NeosVRではユーザーが自分のインベントリを持ち、自由にインベントリの中から3Dアイテムを取り出してワールドに配置できます。火炎放射器が好きなPLがいれば、火炎放射器を自分のインベントリに入れてからVR-TRPGワールドに向かえばいつでも使えるんです。すごいぞNeosVR。まあ私はNeosには行ったもののNeosでTRPGしてないエアプ野郎ですが()。VRCの方は一切行っていないのでご自分で調べて下さい...
(3)VR-TRPGでやらない
後で詳しく解説しますが、普通のTRPGでやった方が良いシナリオも勿論あります。TRPG・TRPG寄りVR-TRPG・VR寄りVR-TRPGで上手く棲み分ければいいだけです。
④「TRPGは想像で補えるから良いんじゃん。VR-TRPGにしたら外見が決まってつまらなくなっちゃうよ」
部分的に正しいですが反論があります。ここで棲み分けについても解説しましょう。
具体例としてあるシナリオの描写を超簡略化したものを持ってきました。
「貴方は今地下壕の中にいます。手には松明を持ち、体はズタボロ。目の前には電気銃を貴方に向けて放つミ=ゴと周囲には幾千もの脳缶がズラリ。」
はい。全部想像できてますか?無理です。特に幾千の脳缶というのが非常にキツい。人間は(巨大な)数の意味を理解するのが苦手です。壮大なシーンをシナリオライターが用意した所でプレイヤーが頭の中で生み出せる光景なんざたかが知れてます。
逆に言えば、シナリオライターが思い描いた壮大なシーンを再現するのにVRは非常に適しています。なのでVR-TRPGを作る時はクライマックスにできるだけ力を入れて下さい。
また、それとは別の棲み分けポイントも存在します。
共鳴者がハリウッドみたいなアクションをする・共鳴者の四肢が吹き飛んだりするといった人体に不可能な動きは、身体所有感のあるVRでは不可能なので普通のTRPGでやった方が良いですね。(何でもVR-TRPGでできる論者は一度PLの準備負担を考えて来て下さい。)
それと、ガンプレイはVRで再現できるものの行為主体感は無いのでVR-TRPGでやって楽しい演出では無いかもしれません。(ガンプレイ:銃を使ったジャグリング)(行為主体感が無い:アニメーションで処理するんじゃなくて自分で銃回したいよね)
逆に身体所有感と行為主体感に関して問題無い非現実的な演出はVR-TRPGだと効果的です。例えば剣を振り回す・腕を前に出して火球を放つ等です。どちらも人間に可能な動きですし、行為主体感もあるのでVRでやると楽しいです。
⑤「VR-TRPGは突き詰めたらCRPGになって意味無いよね」
CRPGの理解が間違っていないと信じたいですが、これは本作のような自分で考える事を要求するシナリオが否定しています。CRPGにも選択だったり人に考えさせる箇所が存在するのは確かですが、TRPGにおける選択は「話を聞いてくれる人がいる」んです。1度きりの選択であり、隣にそれを聞く人がいる事が自分の選択に強い意味を持たせます。
また、これはもっと単純な話ですが「脚本を知っている人がいる」事もTRPGの強みとなる事があります。例えば謎解きで詰まった時、CRPGなら諦めるか攻略サイトに頼って答えを見ますが、TRPGならDLにヒントを聞く事ができます。DLはPLの好み(TrueENDに行きたい/ロストでも構わない)に合わせて適切な対応ができます。より自分で謎に向き合う事になるので、TRPGの方が謎解きを楽しめる事があります。疑う方は弊サークルの一作目のVR-TRPG「全て忘れてしまえたなら」を是非遊んで下さい。
そんな訳で、確かに突き詰めたらCRPGになるようなシナリオも存在するでしょう。しかし、VR-TRPGが全てCRPGとなる訳では無いことをご理解頂きたい。棲み分けしましょう。
[STEP2:制作に関わる事]
⓪超基礎的な事
VR-TRPG制作者は、clusterやVRChat、NeosVRなどのメタバース(バーチャルSNSともいう)というプラットフォーム上にワールドをアップロードし、そのワールドに皆で集まるといった形で遊んでいます。
弊サークルが利用しているclusterにワールドをアップロードするにはUnityを必ず使う必要があります。clusterは日本発のメタバースで、サポート記事が多く出ているのでやってみたい方はこちらを読んだり、このディスコードサーバーに入ったり、clusterでオンラインの人に聞いてみたりすると良いでしょう。弊サークルも毎週木曜日21時~23時に「ぐだぐだ書房」というワールドにいるので良ければ話を聞きに来て下さい。ウミガメのスープとか普通のTRPGでも遊んでいます。
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?