アンチェロッティとグアルディオラ
スーペルコパ決勝で、レアルマドリードがバルセロナにマニータ(5得点)を喰らい惨敗した。
直近のリーグ戦3試合では、バルセロナが1分2敗、レアルマドリードが2勝1分で、どちらかと言えば、調子を上げているのはレアルマドリードのように見えていた。
ところが、蓋を開けてみたら、レアルマドリードがエムバペのゴールで先制するも、バルセロナがヤマルのゴールを皮切りに前半だけで4点を奪い、折り返す展開へ。後半3分に5点目をバルセロナが決め、勝負ありの展開かと思われたが、後半11分にバルセロナのGKシュチェスニーがレッドカードで退場、レアルマドリードが数的優位な状況になる。しかしながら、レアルマドリードは後半15分にFKからロドリゴが1点を返すのみで、それ以降はゴールを奪えずにそのまま2-5で敗戦となった。
スーペルコパは、スペインの独特のカップ戦(コパデルレイの優勝、準優勝チームとその2チームを除いたリーグ上位2チームが参加するスーパーカップ戦)ではあるが、クラシコで大敗したことはレアルマドリードにとって痛手である。
ちなみに、負傷者続出で大不振のマンチェスターシティの陰に隠れているが、レアルマドリードも負けず劣らず、負傷者が多いシーズンである。開幕から、アラバ、カルバハル、ミリトン、クルトワ、チュアメニ、バスケス、ロドリゴなどが負傷し、まだ復帰していない選手もいる。特に、ミリトンとカルバハルは、最終ラインの主軸で、ここ数試合は最終ラインにチュアメニとバスケスで急場を凌ぎながら戦っている(スーペルコパ決勝もこの2人を起用)。そして、この決勝は残念な結果だったが、それでも、リーグ2位で折り返すところが、アンチェロッテイの手腕だなと思う。
何か新しい戦術を生み出す訳ではないが、アンチェロッテイは世界最高峰の監督の1人だろう。2022年にイギリスのメディアが選んだランキングでは、1位:グアルディオラ、2位:アンチェロッティとなっている。また、直近のバロンドール受賞式では、世界年間優秀監督にも選ばれ、世界5大リーグ(プレミアリーグ、ラリーガ、セリエA、リーグアン、ブンデスリーグ)を制覇した唯一の監督でもある。
そんなアンチェロッティの考え方が気になって、アンチェロッティの戦術ノートを購入して読んでみた。
チェルシーの監督に就任した2009年頃に書かれたもので、時代背景などは古いが本人が書いているものであるので、かなり説得力がある。それでもって、奇抜なことはやっていないことがよく分かる。
この本で語られていることを踏まえると、クラブが求めるものと現有戦力を踏まえて戦い方のコンセプトを決め、それを丁寧なコミュニケーションで落とし込んでいくのが、アンチェロッティのスタイルだ。そして、現有戦力で最大限の力を発揮する為に、フォーメーションを決めていく。その中では、コンバートすることも厭わない(ピルロの例など)。
グアルディオラは、チーム戦術を最大化するために、高度な戦術理解と複雑なタスクをこなせる選手をピックアップしていくが、アンチェロッティは、個人が最大限の力を発揮できるポジションに当てはめていくイメージだろうか。
もしかしたら、リーグの違いはあれど、この違いが同じように負傷者続出の中でも、調子を落としたマンチェスターシティとなんだかんだで勝ち続けたレアルマドリードの違いなのかな、と思ったりもした。