筋書きのないドラマ(天皇杯決勝:甲府対広島)
今日は、天皇杯決勝:甲府対広島をTV観戦した。結果は、1-1(PK:5-4)で甲府が勝利し、天皇杯優勝となった。この試合、むちゃくちゃ感動した。そして、解説が中村憲剛と言うところが、いろいろと泣かせた。
ざくっと、ゲームを振り返ります。甲府/広島ともに、1541のフォーメーションで、前半序盤は固めの展開。前半中盤頃から、甲府の攻守切替が速く、広島はやや押され気味に。その流れから獲得したCKから、甲府が見事に先制。広島の右WBの背後を甲府はずっと狙っている感じで、このCKからのゴールも、結果的にはそのスペースを使ってのゴール。前半終盤になるにつれ、広島がボールを持つ展開になるが、得点には至らず、甲府リードで前半を折り返す。後半、広島は2枚替えで、前線に流動性を付けてくる。後半序盤、中盤と攻め立てる広島に対して、後半中盤に甲府は前線2枚替えで、カウンターを狙う交代。この狙い通りに、1本惜しいシュートが甲府にあったが、試合のペースは広島が握ったまま、次々に攻撃のカードを切り、84分に川村のゴールで、試合は振り出しに戻る。流れは広島に見えたが、広島前線のエゼキウが傷んでおり、効果的な攻撃が出来ず、後半終了。試合は延長戦へと。延長に入っても、どちらかと言えば、流れは広島だったが、何とか凌ぎ切る甲府。
そして、ドラマは延長後半7分から始まる。この時間に、甲府は在籍20年の山本を投入。残り8分でPKとなるこの時間帯、試合は後半から圧倒的に広島ペースの中、耐え凌いできたチームの精神的支柱として、そしてその経験からチームを救うための投入であることは明白だった。ところが、その山本が後半11分にハンドからPKを与えてしまう。甲府は万事休す。その窮地を救ったのが、ベテランGKの河田であった。河田は後半いくつか決定的なピンチを防いでおり、何とこのPKをも防いでしまう。結局、試合は延長でも勝負がつかず、PKにもつれ込む。ここでも、河田が1本止めて、最終キッカーが山本と言う、激アツの展開。左隅にゴールを決めて、甲府の天皇杯優勝が決まった。
この試合の途中、中村憲剛が山本と同じ年齢であることを話したあたりから、私の中では何となく胸騒ぎがしていた。山本は、キャリアをジェフで始めているので、正確にはワンクラブマンではないのだが、20年在籍すれば、クラブを支えたレジェンドに他ならない。そんな彼が投入される時は、ゲームを決めにかかる時、締めにかかる時しかないだろうと思っていた。そして、フロサポがかつて憲剛にトロフィーを、と思っていたように甲府サポも山本へトロフィーを、と願っていたと思う。そんな思いで観戦していたので、山本が投入された時はテンションが上がったし、ハンドを取られた時は、何とも言えない気持ちになった。そして、そのハンドによるPKを河田が止めた時、何となくドラマが始まった気がしていた。PK最後のキッカーが山本なのも、チームでは満場一致で決まっていたと思う。
かつてシルバーコレクターと揶揄されながら、ワンクラブマンとしてタイトルに辿りついた中村憲剛と言う存在があったから、今日の甲府の喜びはよく分かる。解説の中村憲剛が涙声だったのも、頷ける。(ましてや、同じ年齢だし)
こうやって文章にすると、出来過ぎた展開なのだが、筋書きのないドラマを見たなぁと言う充実感がある。
ヴァンフォーレ甲府の皆さん、おめでとうございました。