ラストワンマイル24年8月期1Q決算の解説と考察を書いてみた。
※注意書き
・本レポートは銘柄の売買を推奨する趣旨のものではございません。
・著者の意見・主張の補足情報としてラストワンマイル社のHPよりIR資料を一部引用しています。
はじめに
今回この記事を書こうと思ったのは、
「正しい情報をもとに投資判断してほしい」からです。
基本的に大型株は1日の売買金額が多い且つ機関投資家がので、個人の発言で短期間に株価が大きく変動することはあまりありません。
しかし、ラストワンマイルのような小型株は1日の売買金額が少なく、個人投資家の参加率が高いため、株界で有名な人の発言が株価に大きな変動をもたらすことがあります。
私自身も投資を始めた頃は、投資サイトで有識者?のような方が推奨してる銘柄を買ったり、Xのいわゆる株クラの推奨銘柄に手を出して大損したことがあります。
その反省から自分が投資する企業のことは自力でちゃんと調べるようにしています。
本当は投資家1人1人が自分で調べて判断できるのがベストだと思いますが、そもそも調べ方がわからなかったり、何に着目すれば良いかわからなかったりする方も多いと思います。
今回は個人投資家の中でもラストワンマイルにはかなり詳しいはずの自分がなるべくフラットな目線で投資判断できるように情報提供してみようと思います。
ラストワンマイルの決算について
ラストワンマイルの1Q決算が1/12の引け後に発表されました。
今回の決算を見る上で以下の3つを大きなポイントに挙げたいと思います。
①決算までの株価推移と現時点の株価について
②1Q決算と上方修正に対する評価
③同タイミングで出たM&AのIRに対する評価
①決算までの株価推移と現時点の株価について
まず基本情報からおさらいしましょう。
(株価やPERは1/12引け時の情報)
会社名:ラストワンマイル
時価総額:118億円
株価:4195円
PER:60.0 (株価4195÷通期予想EPS69.9)
株価は前回決算後に乱高下して2500付近で底打ち後に上昇してきてます。
今回の決算はかなり株主の期待値が高い状態で迎えたと言えるでしょう。
PER60という数字にもかなりの期待が表れていると思います。
(業界・業種によってばらつきはあるものの一般的にPERは15くらいが標準と言われています。)
同じ決算内容でも株価が上昇傾向か横ばいか下降傾向だったかによって、市場からの決算は受け止められ方は大きく変わるので、この銘柄に限らず決算を跨ぐか考える際は意識してみましょう。
②1Q決算と上方修正に対する評価
前提として、ラストワンマイルは昨年度を経営改革を行ってました。
業務フローの変更や基幹システムの入れ替えなどに取り組み、あえて利益を抑えてでも今期しっかり利益を出せる体制にするための準備を行っていました。
それでは1Q決算を見ていきましょう。
1Q決算の営業利益の昨対比をみると12.1倍になっています。
この数字はすごいインパクトですね。
経営改革をすると言って宣言通りに今期1Qに結果を出してきたのはまさに有言実行です。
利益を出せることについては会社に対しての信頼感も高まるでしょう。
一方で、売上の伸び幅が昨対比10.1%に留まっているのは注意したいです。
というのも、経営改革である程度まで利益率を上げられても売上が成長しない限り、伸ばせる利益には限界があるからです。
今回営業利益が12.1倍になったのは、
売上の成長1.1×営業利益率の改善率11.07(今期営利率4.54%÷昨期営利率0.41%)によるものです。
今期は主に利益率の改善により営業利益は良い成長率が続く可能性が高い一方、来期は改善された利益率が基準になります。
高い成長を続けるには売上の急拡大もしくはさらなる営業利益率の改善が必要です。
これだけの高PERを正当化するためには高成長が必要なのです。
一般的に株価は来期の業績まで折り込むと言われています。
来期も高成長が続くかどうか、そこを市場がどう予測するかが今後の株価に反映されていくでしょう。
(来期の業績予想は株に詳しい人の中でも意見が分かれると思います。)
次に1Qで出してきた上方修正についてです。
前回の本決算の決算説明会にて、
「今期予想の利益が保守的すぎないか?」
と、多くの株主から指摘・質問されていました。
実際、渡辺社長も
「少し保守的に定めすぎたかもしれない」といった発言をしています。
前回の決算説明会動画を見ている人からするとサプライズ感はそこまでなかったような気がします。
そうは言っても1Qで上方修正するというのは相当な自信があるはずなので、
好材料であるのと同時に2Qでの再上方修正期待にもつながるでしょう。
また、今期から会計基準をIFRSに変更したことにより、今回2つの上方修正が出ています。
決算説明資料上はIFRSの上方修正の数値が記載されていますが、純粋に昨年度の業績と比較するいう意味では日本基準を見るべきです。
実質的、実力的には16.6%の上方修正と捉えるのが良いのではないかと思います。
(買い煽り側と売り煽り側で見解が分かれそうですが。。)
ちなみにこの上方修正を踏まえてPERを再計算すると、日本基準では51.08、IFRS基準では39.41まで下がります。
2Qでの上方修正の可能性とこのPERをどう捉えるかがポイントになりそうです。
③同タイミングで出たM&AのIRに対する評価
今回の決算でいちばんポイントになりそうなのがこの3社同時M&Aです。
ポイントは2つあります。
(1)通期業績予想の修正予定、(2)株式交換によるM&Aです。
(1)通期業績予想の修正予定
どのくらいの修正があるのかが大事ですよね。
IRを読んでも過去の業績はベンダー社しか情報がありませんでした。
ベンダー社は過去から考えると、今期は最小1000万~最大5000万くらいの営業利益になるのではないかと推測できます。
HOTEL STUDIO社は2023年12月の会社のため完全に未知数です。
ただ、株価を意識するラストワンマイル社が赤字の会社を買うことは考えにくいかなと思います。
買収の際に渡す株数がベンダー社向けとあまり変わらないため今期の営業利益貢献は0~5000万くらいと見ておくのが妥当な気がします。
プレミアムビジネスサポート社は買収価格が3000万円と他2社に比べてかなり安価なため、営業利益の貢献はいったんないものと考えるのが妥当かなと思います。
つまり、このM&Aによる上方修正の影響は営業利益ベースで最小1000万~最大1億程度と見ておくのが良さそうです。
(2)株式交換によるM&A
決算説明資料では明確に書かれていませんが、ベンダー社とHOTEL STUDIO社のM&Aは株式交換によって行われます。
現金の代わりに自社の株を相手に渡すことで買収するということです。
ベンダー社に対しては155,896株を渡しますが、自己株式の90,072株で足りない分(差分の65,824株)は新しく株を発行するそうです。
HOTEL STUDIO社に対しては136,055株を渡しますが、全株を新しく発行します。
つまり、合計で201,879株を新規に発行するため、株主にとっては1株価値の希薄化が起こります。
この201,879株は現時点の発行済株式数2,808,718株の約7.19%に相当します。
よって、先ほど1Qに出した上方修正を踏まえて再計算したPERを日本基準では51.08、IFRS基準では39.41まで下がるとお伝えしましたが、また再計算が必要です(笑)
この新株発行によってEPSが日本基準で82.13→74.07へ、IFRS基準で95.99まで下がるのでそれぞれPERは56.64、43.70となります。
いずれにせよ、4月末に出てくる上方修正の幅に要注目です。
この上方修正によってまだEPSが変わるのでPERも再計算されることになります。
さいごに
ラストワンマイルの決算について見るべきポイントの解説と考察をしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
決算情報をしっかり読み解いていくことで、期待できるポイントと注意すべきポイントが明確になった気がしませんか?
株価というのは投資家の主観の総意によって形成されるものなので誰か1人が絶対こうなる!と決めることはできません。
でも大口投資家ほど企業をしっかり分析していると思うので、そういう人と同じ目線で意思決定できるようになるためにも、投資の判断材料をしっかり集めることはとても重要だと思います。
そして、判断材料がそろった上で投資判断に自信が持てない場合は、「買わない」というのも重要な判断だと思います。
今回の記事は以上です。
少しでもみなさんの投資や決算の読み方を練習する上で参考になったら嬉しいです。
(参考になったよって方はイイねしてもらえると嬉しいです😊)