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「日本列島100万年史」書評ー列島編

<概要>
最初にプレートテクトニクスから入って全体の説明をした後、日本列島を「北海道」「東北」「関東」「近畿」「中国・

四国」「九州」の5つのエリアに分けて、エリアごとの地球科学的な地形の成立にまつわるエピソードを紹介したブルーバックスシリーズ。

<コメント>
地形学は地理学なのか地球科学なのか微妙なところですが、地理学自体はサイエンスとカルチャーをクロスオーバーした最も興味深い学問の一つであることには間違いありません。

まず地形そして文化、という順番で人間社会を俯瞰すれば、こんなに面白いストーリーはない。NHKのブラタモリがウケているのもよくわかります(決してグルメ紹介でないところがいい)。そして本書は、このストーリーの面白さ満載の日本列島版です。

日本列島の成立を整理すると以下の感じでした(ちょっと長くなってしまった)。

◼️1900〜1500万年前→300万年前:日本海誕生と拡大
①日本海開裂:ホットスポットによってユーラシア大陸東辺部が切り離される。太平洋プレートの沈み込みによる摩擦熱で発生?
②列島北部は時計回りに、列島南部は半時計回りにきり離れ、フォッサマグナを境にくっつく
③同時に太平洋プレートとフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込み、列島が弧状に形成(プレートは球面なので沈み込むと弧状の形になるから)

◼️900万年前ー100万年前:伊豆バー衝突
①太平洋プレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むことで「伊豆バー」と呼ばれる厚い火山性地殻が形成
②900万年前:御坂山地形成
③500万年前:丹沢山地形成
④100万年前:伊豆半島衝突

◼️300万年前:列島の凹凸発生
①フィリピン海プレートの方向が変わり列島に圧縮する力が加わる
②フィリピン海プレートが斜めに沈み込むことで、日本アルプスや瀬戸内海の島々の配列は雁行配列(※)となって右斜め方向に形成される。
③一方で東北地方は、列島に並行して太平洋プレートが沈み込むため、海溝に並行して凹凸(山地と盆地)が生まれる。

※雁行配列:雁が斜め一列に飛ぶように「杉」の「つくり:のように斜めに並列にシワとなって地形の凹凸ができる配列

◼️260万年前(第四紀〜)
①260万年前ー100万年前
4万年単位で氷期と間氷期のサイクルが生まれ、このサイクルが陸上に氷を発生(氷期)させたり溶かしたり(間氷期)することで海水準が変化し陸地が拡縮
②100万年前ー現在
ヒマラヤ山脈の形成により氷期と間氷期のサイクルが長期化して10万年単位に

*氷期と間氷期のサイクルで海水準は変化し、河岸段丘やリアス式海岸を形成。
*12万年前が最も海水準が高い時代

◼️2万年前(ヴェルム氷期の最盛期)
①最寒冷期を迎えて、大規模な氷床が生まれる
②海水準が現在より120メートルも低くなる
③新たな海岸平野が形成され、今は大陸棚となって海中に。

◼️1万年前〜現在(間氷期)
①氷期が終わって大陸の氷床は溶け出し、海水準が急速に上昇
②特に7000年前ー8000年前には縄文海進と呼ばれ、一時的に海水準が現在よりも2mー3m高くなり、すっぽり関東平野の低地(江戸川区や江東区、利根川沿いの水郷地帯など)が水没
②今の地形が完成

こうやって整理すると、日本列島の形成は
「プレートの沈み込み(内的営力)」と「第四紀の寒暖サイクルによる海水準の上下(外的営力)」
によって形成されたことがわかります。

以上のほか、火山発生の原理や過程などを紹介しつつ各地域の形成過程を紹介されていますが、長くなるので追って個別に展開したいと思います。

*写真:2018年北海道 硫黄山

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