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「日本列島100万年史」 九州編
「日本列島100万年史」シリーズの最後は「九州」。といっても本書で扱っているのは南九州というか、ほぼシラス台地だけです。
■南九州のシラス台地が「平ら」な理由
南九州で最も地形史に大きな影響を及ぼしたのは「シラス台地」。
シラスとは、
白い軽石やガラス質の砂で構成されたカルデラ形成を伴う巨大火砕流が流下して堆積した火山噴出物。
南九州、特に鹿児島県で有名なシラス台地は、約3万年前に姶良(あいら)カルデラ(=鹿児島湾)の大噴火で噴出した入戸(いと)火砕流で形成。3万年前とは随分昔と思うかもしれませんが地球科学的に「3万年」というのは、ごくごく最近の出来事(※)。
※地球科学でいう「現代」は260万年前に始まった「第4紀」
まだ出来立てホヤホヤの新しい地形なので、雨風などによる浸食がまだ進んでいない地形なんです。つまりこれからどんどん侵食されて谷ができて山ができて川が流れる、という前の地形。
なおかつできた当初から、火砕流が流れた直後に雨風によって地表が平らにならされて堆積した為、平坦な地形ができたといいます。
更に、シラスは隙間が多く雨が降っても表面を流れずに地中に吸い込まれてしまうのでなかなか侵食されず、余計に平らな地面が残っているそうです。
■なぜ南九州は、シラスに覆われたのか?
それは、南九州のマグマに含まれるシリカ成分の割合が多かったから、となります。
でも紹介した通り、マグマに含まれるシリカ(二酸化珪素)成分の割合によって噴火の仕方が変わります。南九州の火山を形成するマグマは富士山と違って、シリカを66%以上含む、粘度の高い流紋岩質のマグマなので、噴火をしてもなかなか爆発せず、溜まりに溜まって一気に噴火する爆発的な噴火になります。
そうすると「噴煙柱」といって噴火口の真上に垂直に柱のようにガスと軽石、火山灰の混じった噴出物が吹き上がります(下図参照)。
噴煙柱が大きくなりすぎると、その重みに耐えられず、自身を支えられなくなり噴煙柱は倒壊、もしくは崩壊してしまいます。すると噴煙柱を構成していた火山灰や軽石、岩片が地表を高速で流れます。これがシラスを噴出する巨大火砕流
となるわけです。
■シラス台地の活用
<飛行場>
平坦なシラス台地を活用して熊本や鹿児島では、飛行場がシラス台地に建設されました。確かに大分や宮崎、長崎、福岡、北九州、佐賀など、他の九州の空港は、みんな海沿いにありますが、熊本・鹿児島だけが内陸にあります。
シラス台地は平坦なので、安いコストで飛行場が建設できたからでしょう。
以下は本書の紹介外ですが。。。
<さつまいも>
これは有名ですね。シラス台地は水捌けが良すぎて水田はムリ。水捌けの良い土地での栽培に適した、主食になりうる農産物として、400年前ぐらいにさつまいもが選ばれたらしい。さつまいもは、もともと中南米原産の芋ですが、鹿児島には琉球を通じて中国(唐)から伝わったっということで、地元では「唐芋」と呼ばれているそうです。
<お城>
これはブラタモリで紹介していましたが、薩摩藩には他藩と比較して膨大なお城があるのですが、シラス台地は、一旦崩れると一気に崩れる性格上、崖が多い。崖という自然の要害を活用できたこともあって、お城がたくさん作られたそうです。
*写真:2014年 鹿児島市の西郷隆盛像(知り合いの鹿児島人曰く「こっちが本当の西郷さん=上野公園の西郷さんじゃない」)