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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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#イスラエル

ユダヤの風土:今に生きるユダヤ人を知る

引き続き社会言語学者の鴨志田暁子先生の講義をベースに以下紹介します。 個人的にユダヤ人で尊敬する人は、哲学者のエトムント・フッサールと、進化心理学者スティーブン・ピンカーですが、ご存知のようにユダヤ人は、数多くの学者・実業家・芸術家を輩出しています。 ⒈ユダヤの有名人⑴学者 多すぎるので、人間社会に大きな影響を与えた人物のみを何人かリストアップ。結果的に啓蒙主義を促進した人ばかり=同時代人ばかりになってしまいました。 *化学肥料の発明:フリッツ・ハーバー(1868ー1

ユダヤの風土:イスラエルとは、どんな国なのか?

ユダヤのアシュケナジ系言語イディッシュ語を研究している社会言語学者、鴨志田聡子先生の「現代イスラエルとユダヤ人」に関する講義を受けたので、まとめがわりにここで整理。 なお、イスラエルは1948年建国時、そうはさせまいと近隣のアラブ諸国がよってたかってなきものにしようと戦争仕掛けられましたが、イスラエルも負けじとエジプトのシナイ半島を一時占領するなど、生きるか死ぬかの領土争いが今現在も継続している地域。 そしてイスラエルによるパレスチナへの入植は、国際法的には明らかに違法で

ユダヤ社会とはどんな社会なのか?『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕著 読了

<概要>ユダヤ人とユダヤ教について「歴史」「信仰」「学問」「社会」の四つの切り口からその概要を紹介したユダヤ思想の専門家による新書。 <コメント>本書を読むと、ユダヤに関する基礎知識が網羅的に把握できるので、ユダヤ入門としては中々の好著ではないかと思います。 歴史に関しては、以前ここで紹介した『物語ユダヤ人の歴史』とほぼ相違なかったので、ある程度、ユダヤ人の歴史は、専門家に共有されているように思います。 以下、いつも通り印象的内容を整理。 ⒈生活と密接不可分のユダヤ教

天国と地獄を味わった「近代のユダヤ人」

『物語ユダヤ人の歴史』より、今回で最終です。 「近代」という時代は、ユダヤ人にとっては天国と地獄をジェットコースターのように通り過ぎた時代です(そして現代はユダヤ人にとって歴史上初めて訪れた「天国」が続く時代)。 特に欧米では、ゲットーなどの隔離政策もなくなり、歴史上初めてユダヤ人が「ヒト」として扱われた時代ですが、一方で反ユダヤ主義の台頭でポグロムやホロコーストなど、歴史上稀にみる惨劇に遭うのです。 ⒈近代のユダヤ人とアメリカ移住(19世紀〜)⑴ロシアにおけるユダヤ人

ユダヤ人とユダヤ教の関係とは?

以下著作『物語ユダヤ人の歴史』のほか、 『ユダヤ人の起源(シュロモー・サンド著)』『ローマ人の物語(塩野七生著』も読むと「ユダヤ人=ユダヤ教ではない」ということがどんどん明らかになってきます(そうは言っても、もちろんユダヤ教徒の大半はユダヤ人ですが、ユダヤ教徒でないユダヤ人は多数)。 それでは「ユダヤ人とは誰か」と問えば『物語ユダヤ人の物語』著者レイモンド・シェイドリンによれば、それは厳密に規定できるはずもなく「ユダヤの歴史を共有する人たち」という程度でいいのではないか、

「エジプトの風土」『エジプト近現代史』山口直彦著 読了

<概要>エジプトの近現代史を学ぶには最良の著書。啓蒙主義の価値観をベースにしつつ、日本などと比較もしつつの客観的かつ論理的に歴史の事象を時系列に従って記述されている点などは非常に好感が持てる。 <コメント>イスラーム教勉強の流れで、昨年11月のカタール、今年5月のトルコに続き、同じイスラーム圏の国家エジプトツアー参加にあたり、エジプト関連著作をいくつか通読中。 中でも本書はエジプトの近現代史を理解するには最良の著作でした。 本書のあとがきが、2011年の「アラブの春」

『戦火の欧州・中東関係史』福富満久著 書評

<概要>「オスマン」という、長年「トルコ」「アラブ」「ペルシャ」「一部ヨーロッパ」地域を支配してきた「帝国」が瓦解していく時代において、欧米が同地域でどのように自分達の国益を拡大させていったか?そしてその結果、今に続く戦火が絶えない不安定な地域になってしまったか?をわかりやすく解説した書籍。 <コメント>本書を読むと、有史以来、残念ながら今に至るまで、世界は「道徳」で動くのではなく「暴力」で動くのだ、ということが実感できます。 著者が副題とした「略奪と報復」というのは、有