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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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2024年4月の記事一覧

「日本酒」の基礎知識と地質学

前回紹介した「醤油」も「日本酒」も発酵食品ですが、酒造りのためには醤油同様、いかに発酵の働きを活用するか、によります。 その前にお酒とは何か?、に関して地質学に触れる前に、生物学的視点から、確認したいと思います。 ⒈お酒とは何か?酒とは、アルコールを含む飲料の総称。アルコール(エチルアルコール)は糖質の一つであるブドウ糖が、チマーゼと呼ばれる「酵素」によってアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解される「アルコール発酵」によって生成されます。 つまり、アルコールを作ると

「しょうゆ」と地質の関係とは?『「美食地質学」入門」より

引き続きマグマ学者、巽好幸著『「美食地質学」入門』より、醤油と地質の関係について。醤油は発酵食品ですが、発酵には酵母菌、乳酸菌、カビ(麹菌・クモノスカビ)を利用します。 今回紹介する醤油の場合、麹菌を使って大豆や小麦を「麹」にし、麹に塩水を加えて「諸味」とし、乳酸菌や酵母によって発酵させて作ります。 ⒈醤油の起源は「和歌山県」醤油の起源として最も有力な説が禅僧・覚心の偶然。覚心は中国留学から帰国後、1227年今の和歌山県日高郡由良町にて興国寺を開山。 そして地域住民に中

なぜ出汁は日本の水がいいのか?『「美食地質学」入門』より

<概要>地球科学&気候学&生物学の裏付けに基づく植物相・動物相を踏まえた日本各地の美食を支える各種食材&料理を解説したマグマ学者の著作。 <コメント>本書は、食べ歩きと地理学が大好きな私の興味とドンズバ一致する著作で、複数回に分けて紹介したいと思います。 まずは日本の出汁について。 ⒈料理を美味しくする三つの旨み成分とは?以前ミシュラン二つ星の某和食屋の料理長と話した時に、彼曰く、 と言っていたことを思い出します。すでに彼はこの店を辞めてしまいましたが、この言葉がまさ

地理はこうやって役に立てよう『現代世界は地理から学べ』読了

<概要>地理とは「歴史の最新のページ」と定義した上で、地理学的な視点で、国際情勢や災害問題、経済問題などを紹介した、代々木ゼミナール地理講師の著作。 <コメント>地理好きの私としては「地理なんか勉強したってなんの役にも立たない」なんて言われてしまうと、非常に悲しくなります。 私自身は地理を勉強すると、自分の世界が広がる感じがして心地よいし、聖地巡礼みたいに地理で勉強したその地域を旅行して実体験すると、とても感動して楽しくなるので、国内外問わず頻繁に出かけてます(以下はその

天国と地獄を味わった「近代のユダヤ人」

『物語ユダヤ人の歴史』より、今回で最終です。 「近代」という時代は、ユダヤ人にとっては天国と地獄をジェットコースターのように通り過ぎた時代です(そして現代はユダヤ人にとって歴史上初めて訪れた「天国」が続く時代)。 特に欧米では、ゲットーなどの隔離政策もなくなり、歴史上初めてユダヤ人が「ヒト」として扱われた時代ですが、一方で反ユダヤ主義の台頭でポグロムやホロコーストなど、歴史上稀にみる惨劇に遭うのです。 ⒈近代のユダヤ人とアメリカ移住(19世紀〜)⑴ロシアにおけるユダヤ人

近世ヨーロッパとユダヤ人

『物語ユダヤ人の歴史』より、今回は15世紀から18世紀までの「近世」のヨーロッパにおけるユダヤ人(とその社会)について。 カトリックが支配した中世のヨーロッパ社会は、十字軍を契機にしたイスラーム世界との出会い、黒死病流行による人口激減などを経て農民の力も増幅し、さらに大航海時代と宗教改革によって崩壊(一方で東欧の一部ははイスラームの強大な軍事国家オスマン帝国が支配)。 そしてヨーロッパは近代に向けた新しい時代「近世」を迎えます。近世は商業主義と資本主義が拡大すると同時に啓