2021年9月新譜プレイリスト

◎Best Song

・「I FEEL IT」Jon Bellion ft. Burna Boy

Lawrenceの新譜にも参加していた、マルチプレイヤーのジョン・ベリオン。フック「アイフィーレッ」で溜めた後のベースリフがなんと気持ちいいことか。前半部はどことなく不気味さを感じさせる複雑で機械的なビートだが、生ドラムに移り変わりそこに覆い被さった大仰なサックス(The WeekendIn your eyes」で鳴り響く唐突なケニー・Gサウンドを彷彿とさせる)で大団円。こんな奇怪な曲にアフリカン・ポップスターBurna Boyをフィーチャリングしているのもニクイ。

◎Others

・「Help!」Gentle Bones

シンガポールのアーティスト。ベットルームポップとエレクトロの中間のような絶妙な音色。巷で流行っているビートスイッチも見事に取り込んでる。

・「It's Alright」Johnny Orlando

カナダの18歳ソロミュージシャン。マイケルプリンスリスペクト全開のサウンドで特に新しさは無いが、リフがクセになる。

・「Can't Believe it」Moses Sumney

モーゼス最大のシグネチャーでもある多重録音・一人和声に加え、歪んだボーカルエフェクトはボン・イヴェールも想起させる。折坂悠太の新作にも登場予定の、”何でも屋”ことサム・ゲンデルが本作に参加している。

・「Silk Chiffon」MUNA ft. Phoebe Bridgers

MUNAといえば「I know a place」のイメージが強かったためエレクトロなサウンドを予想していたのも束の間、フィービーの手が加わった途端開放的なフォークロックに。性的マイノリティのカップルが多数登場するMVも素敵。

・「in the darkness」mxmtoon

mxmtoonを知ったのはBLACKPINKLISAが公開していたプレイリストからでした。緻密に張り巡らされた和声に、途轍もなく耳障りの良いサウンドバランスが合わさっていて、最高の仕上がりに。

・「La Funka」Ozuna

軽快なレゲトンビートはいつ聴いてもアガる。スネアの鳴りが最高。

・「SYNCOPATE」MICHELLE

NY出身の6人組コレクティヴ。サウンドはオーセンティックなソウル路線だが、ボーカルの多彩さで飽きさせない作りに。フックのタイトなフロウはマイケル・ジャクソンの「Man In The Mirror」オマージュか。

・「Don't Go Changing」Ylona Garcia

当ブログでも紹介したROSEの「Gone」にも通ずるような、コーラスエフェクトが掛かったギターのリフでグルーブを作り出すシンプルな構成。88Risingは、星野源も参加したマーベル映画「シャン・チー」のオリジナル・アルバムのプロデュースを手がけたことでも話題になった。

・「Altar」Kehlani

正統派R&Bマナーを踏襲しながらも、声とオケが入り混じったような、揺蕩うサウンドプロダクションはかなり新鮮。

・「CHERRY」AB6IX

安定のAB6IX、良すぎる。今年リリースされた「CLOSE」と同様、K-POPが超得意とする軽快なディスコチューン。

◎Best Album

・「LOGIC」LEX

19歳の日本人ラッパーによるこのレコードには、その「ビート&オケの多様性」にまず驚かされる。Trippie reddPlayboi Cartiによって盛り上がっているレイジサウンド(ゲーム音楽のようなシンセ)を取り入れた「LAZER」、シティポップな「Without You」、ダンスホール・リズムの「LOVE CARTEL」、サンダーキャット風AOR「ARE WE STILL FRIENDS?」などなど...
「音楽的な興味はヒップホップというよりもエレクトロニカに向いている」という彼の言葉通り、フローの特異性よりもサウンド面に気を配った一作と言えるであろう。

◎Others

・「MONTERO」Lil Nas X

時に過激に、時に内省的に、どちらにしろ”攻めた”内容の楽曲をリリースし、ヒットさせ続けてきた若きポップ・スターとしてのフレッシュさと、その戦略的な巧みさが際立つ記念すべきデビュー・アルバム。
個人的には、既出曲だが「SUN GOES DOWN」のミニマルなリリックとサウンドに泣けて泣けて仕方ない。

・「The Melodic Blue」Baby Keem

ケンドリック・ラマーのいとこ”という情報が先走りしている気もするが、アルバム自体はとても聴きやすく、ビート・スイッチの”あざとくなさ”もモダンでかっこいい。ただケンドリックの参加した曲の破壊度、インパクトが強すぎるのは致し方ないことか。

・「Sometimes I Might Be Introvert」Little Simz

若きアフリカン・アメリカンの女性ラッパーによる新譜からは早くも漂うマスターピース感。60~70年代ソウルの重々しさと、90年代以降のモタったビートが組み合わさった「I Love You I Hate You」や、ヴェイパーウェイヴ風シンセが鳴り響く「Protect My Energy」まで、遥かなるジャンルの横断と、それを一手に受け止めるリトル・シムズの落ち着いた声色のバランス。

・「Certified Lover Boy」Drake

Papi's Home」における絶妙なサンプリングソースの濁し方、「N 2 Deep」のビートスイッチ、「Get Along Better」のメロウな心地良さなど、個々の曲について語るべきところは多く存在するが、”アルバム”としての評価は未だどう位置付ければいいのか迷っているのが本音である。(ドレイク的にはむしろ今作も”プレイリスト”と捉えてほしいのかもしれない)

・「Larderello」Dos Monos

サウンドもリリックも超ハイパー・コンテクスト...と言ったら取っ付きづらく思われるかもしれないが、メジャー音楽ではなかなか味わえないその「取っ付きづらさ」を存分に体感してほしい。テレビ東京の停波帯に急遽放映された「」や、Spotifyで配信されている公式解説ポッドキャストを参考にするのも一つの手であろう。
追記:爆笑問題フリークとしては、「medieval」という曲の中に登場する「MR.ALL MISTAKE MAN」というフレーズにニンマリすること間違いなし。


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