職を転じて福となす
転職した。
大学卒業後、5年間勤めた広告代理店を営業が嫌で辞めてからちょうど2年と9ヶ月。
何がちょうどか知らんが2年と9ヶ月。
失業保険でアイドルとチェキを撮る時とコンカフェに行く時以外は実家の子供部屋に籠って過ごした2年9ヶ月。
この歳月ですっかり粗大ゴミと化し…いや、存在は矮小なので矮小ゴミと化し……いやいや、地元では「燃やすゴミ」の呼称が「燃やすしかないゴミ」と変わったので「燃やすしかない矮小ゴミ」と化したわけだ。
燃やすしかない矮小ゴミ。
なんとキャッチーな響きだろうか。
そんなキャッチーさのおかげかゴミでも雇ってくれる会社があった。
社長は黒い迷彩柄のジャケットを着こなし、「ムリゲー」「ワンチャン」といった若者言葉を使いこなす50代くらいの方だった。
人生立て直すのがムリゲーな落ちぶれた僕にもワンチャンを見出してくださったわけだ。
ありがたや。
副社長は綺麗な女性で声が低めなのがセクシーな40代くらいの方。
志望動機が「副社長にバブりたいため。」に変わり、熱意が通じたゆえの内定であったのだろう。
こうして無事、新ばぶ生活が始まった。
4月中旬からの入社。
4月には新卒が2人入ったらしい。
仮にも僕は社会人経験者である。
会社的には2週間ほどの先輩であるが、社会の先輩としてリードして、上司へのアピールとさせていただこうと意気揚々と初出社。
ん?新卒らしき2人、なんだかとっても馴染んでね?早すぎね?
話を聞いてみるとどうやらインターンで来てたらしい。
ずる!せこ!ずるせこやん。
インターンと縁遠い生き方をしてきた僕にはインターンなんかチートである。
来世ではインターンとお見合いして縁組みしてやるからな。
こうなってしまっては頼れるのは4月頭から中途で入っていたおっちゃんしかいない。
密かにそう思っていたら、中途入社おっちゃんの方から声をかけてきてくれた。
「昼飯、一緒に食べに出ません?」
よしよし、この中途おじを足がかりにこの会社でのぱにお勢力図を広げてやるぜよ。
しかし、おっさんとのサシ飯きついな。
まあ、結構年上っぽいし奢ってもらえそうやから許してやるか。
薄汚れた中華料理店に連れて行かれた。
んん…?ま、まあ、こういう店って案外美味しいしな、うんうん。
先客は一人だけだった。
チャイニーズおばちゃん店員「お好きな席ドーゾー(激気怠げ)」
んんん…?ま、まあ、接客態度と味は反比例することあったりなかったりあったりだしな、うんうん。
中途おじ「カウンターかボックス席かどうします?」
僕「ボックス席にしましょう。(こんだけ空いてたらボックス席でよかろうよ…)」
少し悩む素振りを見せ、先客の真隣りのボックス席に座る中途おじ。
んん…?ボックス席とボックス席の間隔が激せまやが…
空いてる席は多々あるんやがが…
普通なら真隣り以外のボックス席に座るんやががが…
ちょっとしたモヤモヤを抱えつつ、中途おじの対角線上の位置に着席。
僕の真ん前に座り直す中途おじ。
んん…?これはもしや…?
味より量!な油淋鶏を詰め込み、付き添えの冷め切った油ギトギトの焼きそばをすすりつつ、中途おじと話していると徐々に積み重なってきていたモヤモヤが実体を得て確信へと。
この中途おじ、戦力に数えてはならぬ。
社内でのぱにおキングダムストーリーの大事な大事な初手。
しくじってるやないか…
待ってくれよ…!
中途おじは漂(漫画キングダムの主人公の幼馴染)じゃなかったのかよ…!
二人で大将軍を目指すんじゃなかったのかよ…!
悪い人ではなさげだが、少しズレた性質があるので悪意なく足をひっぱってくるタイプだ。
距離を置いて接しよう。うん、そうしよう。
立志伝の第一歩を壮大に描くはずが、ただ中華料理店でのおっちゃん観察日記を描くに終わってしもうた…
油淋鶏と冷め焼きそばの油が蘇り、吐き気を催してきたので今回はこの辺りで。
それでは次回予告いくとしよう。
中途おじ、最速の社内レコードを打ち立ててクビにッ!
同日、社長から呼び出される僕ッ!
次回ッ!
『職を転じてクビとなる!?』
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