【スピッツ】コンサート2020 猫ちぐらの夕べ オンライン上映
観ましたよ。スピッツのオンライン上映。
上映してくれてほんとにほんとにありがとうスピッツとスタッフの人たち。なんだかものすごく観たいライブだったから嬉しかった。
猫ちぐらの夕べの本コンサートはチケットを3回ぐらい申し込みましたがあえなく撃沈。まあファンクラブにも入ってないし、スピッツのライブ自体も隼ツアー以来行ったことないからそりゃそうだわな、という感じ。
でもスピッツはずっと好きだったし今も大好きだ。
初めて出会ったのは姉が買った「ハチミツ」のアルバム。中学生のときだったと思う。
姉の車の中で流れていたのを偶然聴きながら、「自分にも自然にいいと思える音楽があったんだ」という新鮮な驚きで身体じゅうがいっぱいに満たされたのを覚えている。
私は漫画やアニメが大好きなオタクだったので、流行りのJ-POPというものは基本的にオシャレな人が聴くものだから、自分には理解できないものだと思い込んでいた。ピアノは習ってたけどクラシックが心底好きな音楽というわけではなかったし、姉たちが聴くドリカムやサザンやオザケンなんかも、メロディは好きだったけど、まだ当時は大人の愛や恋や別れの歌のよさは、ただ飲み込むだけで咀嚼はできなかった。
だけどスピッツを聴いたときは、なんというか、美味しいものを食べて美味しいと思うように「これいいな」と素直に思えた。
「私にも聴いていい音楽があるんだな」と。
歌詞カードを読んで、目の前にばーっと情景が浮かんだのも初めてだった。ピアノの先生に「この課題曲を聴いて浮かぶイメージを絵に描いてみて」と言われて描いたときはピンとこなかったが、あれってつまりこういうことか、と思った。
「歩き出せ、クローバー」のCメロで「混沌の色に憧れ 完全に違う形で 消えかけた獣の道を歩いて行く」という箇所で、金色と鈍色の雲が湧いて眩しいイメージを瞼の裏に感じながら、「ああ、この感じ、知ってるな」と根拠もなく思った。歌詞の解釈どうこう以前に、よくわからないはずだけどなぜか知っているという不思議な感情を、全身で味わう感覚に浸っていた。
これが正解の聴き方かどうかとかはどうでもよくて、へんぴな土地の片隅にいる小娘が自分の内側で妄想して満足しているだけだなあと自覚していたし、でもだからこそ自分だけのものとして聴いていた。ライブにもあまり行かなかったのはそういう理由もある。自分だけで楽しめればそれでよかった。
そういう音楽は後にも先にもスピッツだけだ。
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長い前置きというか、これ前置き?みたいな文章を書いたけども、
ここからは表題のライブの感想を書いていきます。ライブそのものの感想というよりも、そこでよみがえった思い出が中心です。
1.恋のはじまり
なんでこの曲から!とびっくりしつつも嬉しかった。たしか「スーベニア」の曲だ。むかし自転車でよくプールに通っていて、その道中によく聴いていた。
クジヒロコさんのキーボードがぴーわーぴーわーほみーほみーと響くのが好きだ。そこがちょっと水中みたいで、泳ぎ疲れた身体にぴったりだった。
2.ルキンフォー
「ぬおー!俺のためのライブ!」とめちゃくちゃテンションあがった。スピッツの曲の中でも1、2を争うほど好きだ。なりたい職業にまだなれていなかった時期で、歌詞にずいぶん励まされた思い出がある。間奏でだんだん大きくなっていく「てってれ てってれ てってれ」のギターの音が大好きだ。そしてよく河原で、光る水面を眩しく見つつ聴いていたので、MVを観たときは「おお!」と嬉しかった。
3.空も飛べるはず
久しぶりに…というか初めてかな、CD以外の演奏を聴いたのは。コツコツとマイナーチェンジしてきたんだなあと思った。昔よりも彩度があがったような、ぱっと一段階明るくなったような気がする。何よりいいなと思ったのは「空もーとべーるはずー」の「もー」のところのコード運び。音源ではこんなにパッキリわかりやすく切ない和音じゃなかったような気がする。
「白線流し」の頃のような、白くくぐもった風景はもう見えなかった。きっとこの歌の彼らはいま本当に自由に空を飛べているのだ。
4.あじさい通り
中学のときに、同じクラスの子に「あじさい通りの歌詞って知ってる?」と言われて、だけどそのときは「ハチミツ」をまだちゃんと聞き込んでいなくて答えられず(前述の姉のCDはレンタルだったのだと思う、忽然と消えた)、だから今回も「今なら全部教えてあげられるのになあ…」と悔しく思いました。
5.スカーレット
高校のとき、クラスのレクリエーションでカラオケ大会をやって、それで友だちとこれをハモったことを思い出します。いつも。スカーレットはいつも冬のイメージ。イントロを聴くと、寒い教室ででっかいストーブにあたったような感覚に陥ります。シングルカットされたときのCDジャケットを帰り道のCD屋さんで手にとったことを覚えている。赤い毛糸と緑の毛糸があったような気がする。
6.小さな生き物
アルバムを買ったのがちょうど妊婦のときで、CD屋のお兄さんがすごくにこにこしながら接客してくれたのをいつも思い出す。
そして子どもが生まれて、夜中におっぱいをあげながらとか、寝かしつけによく歌ってた。寝室の小さいランプの、蜜色の明かりをぼんやり見つめて、まるでこの世に自分と子しかいないような感覚に陥りつつも、ここが「小さな星のすみっこ」だと思うととても安心できた。我が子に出会えるって思いもしなかったし、同時に自分がなりたいものに向かってもう一度果てを目指してもいた。
こんなにもムダに力をいれずに「負けないよ」と思える歌は他にない。産後のボロボロの身体でも「負ーけないーよー」と気負わず聴けたし、口ずさめた。この曲を届けてくれて本当にありがとうと思った。
7.魚
「俺のためのライブ!!」と思った二度目。99epはたしか元旦発売のはずだったけど、高3の大晦日になにげなく寄ったCD屋さんで見つけて「あれ!?」と驚きつつ買った思い出。フラゲという言葉を知ったのはもっとずっと後。
スピッツで好きな曲は山ほどあるけど、これは特別な曲だ。
よく晴れてた冬の日で、遠くの空の雲がよく見えて、クロゼットで服を探しながら聴いてたら間奏が全身にあふれこんできてそのまま動けなかったのを覚えている。
頭のなかに海が見えて、防波堤が見えて、太陽が出てるのに凍り付いたような影を地面につけているイメージが広がって、「この海は僕らの海さ」と言われて何の疑問もなく「そうだなあ、私の海だなあ、これ」と思った。そんな自分の中だけの特別さだ。
8.ハートが帰らない
MCで、これをライブでやるのは二度目、と言っていて、え、じゃあもしかして私が唯一行ったあの隼ツアー以来ってこと!?その貴重な2回、私両方とも聴けてるってこと!?と興奮。
女の人と一緒に歌っている曲は好き。ヘチマの花も好き。
そうだねえ深呼吸をするのに大事なのは吐くことだってヨガとかでもよく言うねえと思い、そして田村さんと同じく「めちゃめちゃ歌うまいな」と思った。
そして田村さんはすごくよく動くベーシストとして有名だけど、昔からどういうリズムで動いてるのか見てても全然わからない。私には彼の動きと曲のリズムがシンクロしてないように見える。独特だ。きっと田村さんだけの秘密のリズムがあるんだと思う。
9.猫になりたい
これを聴くと、大学時代に同じサークルだったともちゃんを思い出す。ともちゃんは関西弁ですごく可愛くて気立てのいい女の子で、すごく大好きだったんだけども、その彼女がライブでこれを弾き語っていて、それがすごく忘れられない。
イントロを聴くと今でも不思議な気持ちになる。霊園のそばのアパートに、猫としている気分になってくる。喉をなでてくれるともちゃんを探している。
10.君だけを
スピッツを聴くとよく身体が「この感じ知ってる」となるが、「Crispy!」はそれがとりわけ生々しい。じゃーんとギターが鳴ったとき、ひさびさにその感覚がよみがえって鳥肌が立った。この夜を知ってる。過ごしたことがある。
なんでこんなに生々しいんだろうなと思ってたけど、「君だけを 必ず 君だけを 描いてる ずっと」って、よく考えたら執着の質感がすごいな。
赤川次郎の「ふたり」という小説がドラマ化されたときに「夢じゃない」が主題歌になって、それがめちゃくちゃセンスいいな!!と一人で喜んでいたんだけども、「君だけを」は挿入歌だったなー。ドラマは演劇部のくだりが原作とちがってそれがどうだかなこれはと思ったけど、そういうのもいい思い出だ。
11.僕のギター
これを聴いてたときもたしかまだ就きたい職業に就けてなくてもがいていたときで、いろいろ力をもらっていた。個人的にはこれと「ビギナー」がセットで、なんとか就業できた今でも聴いては力をもらっている。
蒼いステージの中央でスポットライトを浴びている一本のギターが見える。
12.猫ちぐら
もうタイトルだけで高カロリーだわなあと思った。こういう世相じゃなくても心に響いたと思う。「驚いたけどさよならじゃない」って、わりと別れがちなスピッツの音楽のなかでけっこうエポックメイキングな感じ。がする。
13.フェイクファー
アルバム「フェイクファー」は歌詞カードがマサムネさんの手書きで、めちゃめちゃ可愛い字だなオイ!と思って真似までした思い出がある。私はよく人の字を真似するんだけども、このときはかつて漫画家の谷川史子先生の字を真似したときとツートップの勢いで真似した。フェイクファーの歌詞はたしか最後が「そんな/気が/した」か「そんな気が/した」だかで、とにかく「した」が改行されて独立していて、それが歌い方ともリンクしているようにきこえて、「はー、歌詞っていうのはそういうもんなのかなあ」とかなんとか一人で納得していた記憶がある。前奏とおわりのギターがやさしくて好きだ。
14.楓
高架の駅で、上り下りのホームが向かい合わせになっていて、そのホームは透明なドームに雨よけとして覆われていて、でもその日はよく晴れていて、
ホームを降りて改札を出て、もう一度エスカレーターで地上に上がったら眩しくて、とか、そんなイメージがある。(高架の駅で地上にあがるってよくわかんない構造だけど)
だから別れの曲だけど私はあまり哀しいイメージがなかったんだが、むかし現実でとても悲しい出来事を彩ってしまった曲で、長いことしばらく聴けなかった。
でもこのライブでひさしぶりに、自分だけのイメージがまた戻ってきた。優しい想像は脆いもんだが、わりとしぶとい。
15.みなと
何度も書いているが、私はスピッツの歌詞を解釈するってことを全然してこなくて、というか解釈という概念すら思いつくことがなく、だからそういう解釈を初めて目にしたときはメカラウロコでした(イエモンだけど)。これはあまり聴き込まないうちに「死」を歌った曲だ、とネットのどこかで目にしてしまって、だからもうそのイメージが払拭できません。でもただひとつ、「いつしか優しくなるユニバース」という部分にあたたかい光を感じます。
16.魔法のことば
ああ、ハチクロの映画みにいったなあ、と懐かしく思い出す歌。はぐちゃんのコスプレめいたカッコしちゃって、怖いもの知らず恥知らずだった大学生とはいえよくやったなあ。でもそんな思い出が不思議とイヤじゃないのです。
このあたりの曲から、なんかちょっと曲の雰囲気に変化を感じるようになったというか、うまくいえないけどちょっと緑化したというか、内にこもったサウンドというか、湿度が高くなったみたいな、そんな感じがします。
17.正夢
ほんとうにイントロからキラキラして目をあけられないぐらい眩しい。ストリングスが風のように吹きぬけている。そうかそうだよな、「君と会えたら何から話そう笑ってほしい」って、本当に今だよな、と思った。当時はもう二度と会えない友だちのことを想っていた。今もそのことを思い出す。「キラキラのほうへのぼってく」って、「キラキラのほう」って、本当にそうとしか言えないよな、と当時も思っていたし、今も思う。
18.初恋クレイジー
「インディゴ地平線」はたしか中学のときに唯一買ったか借りたかしたアルバムで、それはそれはよく聴いた。「花泥棒」〜「初恋クレイジー」〜「インディゴ地平線」の流れがすごく好きで、全然毛色の違う3曲をワンセットのように思っていた。
初恋クレイジーを聴くとなんだか白くて明るくて天井の高い、吹き抜けの美術館の回廊のようなものが思い浮かぶ。花泥棒をした男の子が逃げ込んだその建物に、花の似合いそうなあの娘とはまたちがうすごくきれいな女の子がいて、その子に見とれて恋をしてしまうという想像をこの曲を聴くたびにしていた。花を渡すはずの子のこともすっかり忘れて君と行くのさ迷わずにって、お前それはどうなのよと思いつつも、中学の頃に抱いたこのイメージは払拭されることなく今も聴くたび蘇る。
余談だがライブを観ているときにこの曲のタイトルをど忘れしてしまってなかなか思い出せず、でも意地でも思い出してやる!と思って意地で思い出した。
19.ウサギのバイク
イントロで「ここでウサギのバイクて!」と思わず笑ってしまった。でも大好きだ、名前をつけてやる。自分はもしかしたらパラレルワールドを行き来してるんじゃないかと思うぐらいになんだか「この感じ知ってる」感が現実味をおびて強い。なんだろうこの感じ。ノスタルジーとかデジャブとか言うとちょっとピンとこない。経験してないけど知ってる時空間がある感じとしか言いようがない。ほかのスピッツ好きの人もこういう風になったりしてるんだろうか。
20.ハネモノ
イントロの、キラキラしたものが跳ねてるような音が大好きでワクワクする。コピーバンドを組んで歌ったこともあって、それがしがらみのない面白い人たちばっかりで組んだもんだからただただ楽しい思い出がある。本当に思い通りの生き物に変わったような気になる。思い通りの生き物って具体的に何なのかはわからないけど。自分は自分のままだけど、一瞬余計なものがすべて身体からなくなって身軽になったような気がする。
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そういうわけで、思っていたよりもずっと思い出がブワッとかつ詳細によみがえったライブでした。
アルバムツアーじゃあまりこういうセトリはないだろうから、すごく贅沢で濃い時間でした。いつでも観られるようにDVDオアBlu-rayが欲しいなあ。まだやってるからチケット買えばいいんですけど、時間が決まってるのでね…タイミングが合わない…。
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中3の受験まっただ中に、「インディゴ地平線」をすごくよく聴いた。
高校にあがって、ほかのアルバムが買えるようになって、さらによく聴いていた。
高校のときは通学の電車の中でよく聴いたが、電車の速度はスピッツの速度だなあとか思ったりした。
「恋は夕暮れ」を実際に車窓から夕暮れを眺めて聴いたときは、自分自身が恋をするよりももっとくっきりと、もっと濃密に、恋というものを味わっていたように思う。
もっと言うと、草野マサムネの歌詞に出てくる女の子に私も恋をしていた。寒そうなバニーガールにも、ナナにも、ヌードを見るまでは死ねない君にも。
きっとアルバムのジャケットの女の子にも恋をしていたと思う。フェイクファーのジャケットの子が一番好きです。
女子だけどそういうところにヘンにシンクロしていた。
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アイドルを好きになって初めて気づいたけど、こんなにも長い間、同じアーティストの曲を聴き続けられるって本当に幸せなことだと思う。私はスピッツとYUKIとCoccoが主に好きで、お三方ともずっと元気に歌ってくれているから、それを当たり前だと思っていた節があって。でも違うんだ、希有なことなんだと思った。
ひとつのバンドにこんなにも思い出がたくさん詰まってるってすごい。
ありがとうスピッツ。本当にありがとう。
これからも身体に気をつけて、どうかお元気でいてください。
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