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【詩】birth




俄かに言葉は或る内に溢れ、いつかの空模様を表現しようとしていた。
ある時、悲しみの雨の先に晴れ渡る喜びなんて無いと感じた。そこに残るものは燻って出せなかった翳り曇る心中と、積もりゆく真っ新で冷たい雪の様な悲哀だけだと思った。





飛ぼうとしていたあの鳥の嘴や羽根を染め上げたこの街明かり。それが段々と消えて行くのをどこかに居る君は、今日も寄り添う様に最期まで見詰めていたのだろうか。
沈む陽の光を君と眺めたあの日はどこか幻想的で、僕だけがそこに置いて行かれたみたいな気持ちにいつもなった。





残光の木漏れ日は揺れ、細やかな陰影の中を咲く花にいつの間にか魅了され名を付けていた。そこへ知らぬ内に見え無くなった耀きを、照らし合わせて居たのかも知れない。
雨が降るといつも寂しそうに揺れていたその花に、濁りの無い透明な露が伝い滴り落ちる姿は、まるで誰かの代わりに涙を落としている様にも見えた。





強い向かい風が吹く度に、追い風にならないだろうかと行く宛の無い旅路でいつも願った。底知れ無い厳しさはもうこの時代には適さないのだと思っていたから。今は優しさが特に大切だと感じて、どこからとも無く吹く風にすら、包み込んで欲しかったのかも知れない。





何も知らない明日を広げて、今日の事を深く刻み込んでから少しだけ愉しい事を考えた。
虚な憂いはもう必要ないと思ったからそうしたけど、出来る事なら君もここにいれば良いのにと思いながら、幾つかの気持ちを込めた言葉達を胸の内へと仕舞って行った。
それぞれの想いが一つの始まりを生む事になるのを、まだその時は誰も知る由もなかった。



































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