見出し画像

「似つかわしくない"安定感"」vs.Sporting CP(A)[5-1]【24/25ChampionsLeague 第5節】

試合前展望・キーポイント

早くも優勝争いを諦めてしまう程の、ウーデゴールを中心とした主力の複数離脱や可変ビルドの停滞により絶不調だったアーセナル。しかし代表ウィーク明けの前節はそれまでの雰囲気を一変、魅力的な試合を展開し快勝を収めた。

今節当たるのは、2年前シーズン開幕前の予想を大きく上回る出来で優勝争いも佳境の中、まさかのEL敗退とサリバ、冨安の負傷離脱を食らった因縁の相手スポルティング。この試合を機にみるみる失速し、シティに競り負けトロフィーを逃した苦々しい記憶は未だ鮮明に残っている。

中2日と非常にタイトな日程ではあるが、今のアーセナルなら国外でのアウェイCL戦もきっと乗り切れる筈だ。

キーポイント:ライス、マルティネッリらコンディションが奮わないメンバーの活躍を見れるか。

試合情報

スターティングイレブン

足の指を骨折していた(?!)ライスが爆速スタメン復帰 守田もスタート

ハイライト

試合内容・所感

会場の熱と絶好調チームを跳ね除ける速攻

 先日アモリムをユナイテッドに引き抜かれたばかりのスポルティングは主将ヒュルマンドと共に守田が先発、またシティ相手にハットトリックしたばかりの注目株ギョケレシュも勿論スタート。こちらはライスが鉄人の如く復帰し、前線にカイとマルティネッリが並んでの現ベストメンバーが揃う格好。

 国内リーグでも絶好調なスポルティングは基本陣形が3-4-2-1で、一番の特徴はWBがかなり高い位置を取っての攻撃時3-2-5になる形。中盤が前後左右にずれCBからのパスコースを生むのは勿論、シャドーの2人も積極的にレイオフしに降りてくる。後方からのビルドアップは割とCHの2人次第な部分が強く、守田への信頼感が高いことが伺える。

 また試合を通して強度が高めであり、開始3分にスローイン時のポジション争いの中でハヴァーツへ不必要な接触を行ったCBディオマンデにイエローが出たのを皮切りに、4点目を与えるきっかけとなったボックス内でのスライディング、当然警戒されるサカへのプレスetc…。会場全体にホームチームへの声援とアウェイチームへのブーイングが常に充満しており、こちらの一挙手一投足すべてにヤジと抗議の声が飛び交う状況というのはアーセナル側からするとかなりやりづらいものであった。

 だがそんな中でも先制出来るのが復調した今のアーセナル。7分とかなり早い時間帯に右サイドのオーバーロードからティンバーが抜け出し送り込んだグラウンダーパスをマルティネッリが冷静に沈めてみせる。

順調に得点を重ねるも後半に一瞬の陰り

 失点を機にスポルティング側もより前傾姿勢でアーセナル攻略に挑む。WBがとにかく前線に留まり続ける事で特にマルティネッリを低い位置にピン止め、その隙に右シャドートリンコンが引き取って反転する形が何度も見られた。押し込んでからはとにかく果敢な楔を徹底、中央が密集してようが多少強引にでも縦パスを捻じ込みワンタッチでの崩しが多かった。たまーにアーリー気味のクロスやミドルを売ってくる場面が特に後半は多かったものの、これは精度を欠き余裕を持って対処出来ていた。

 スポルティングの守備面に関して言うと、ある程度敵陣へ侵入出来ていた攻撃面に比べ圧倒的に付け入る隙は多かった。基本的には非保持5-3-2のリトリートで後ろの厚みは一定以上担保する構造。しかしサカの周りを漂う衛星ウーデゴール、ティンバーらをCHだけではケアしきれず、またギョケレシュはプレスバックを免除されているのか知らないが、サイドで手詰まったとしてもトーマスへ戻しやり直す事も容易だった。

 こちらの押し込んでからのアイディア力の高さも長くポゼッションしながら常にゴールの匂いを感じさせた大きな要因だろう。とにかく右サイドの3人+トーマスが常に四角形を形成しながらブロックを手玉に取っていた印象が試合を通して強い。1か月程前のどこだかのマッチレビューで、引かれた相手に対し裏へのアクションが少ない、という内容を書いた記憶があるが、この試合はその課題を見事クリア。中央に折り返してのワンツーでCB裏へハヴァーツやサカが抜け出す場面が多く、縦横のスペースをまんべんなく使ってのポケット攻略を上手く出来ていた。

 2点目は前述の通りやり直しを受けたトーマスがジョルジーニョ顔負けのふんわりスルーパスを送り込み、連動したサカが飛び出してきたGKの股を抜くアシスト、ハヴァーツが冷静にちょこっと触れるだけの流し込みでゲット。また前半終了間際にはセットプレーから、ガブリエル以外の全員がブロックに回るお膳立てのもとそのガブリエルが強烈な叩きつけヘッドで3点目を獲得し、ここぞとばかりにギョケレシュのゴールセレブレーションを披露。2年前の対戦時にジャカのセレブレーションをやられた意趣返しをして前半戦を折り返す。

 ここまではかなり理想的な試合の流れだったものの、立ち上がりはスポルティングのペース。やはりアーセナルはこういった会場の熱が高く敵意が強く向けられる相手は苦手なのか、開始早々の勢いそのままにあれよあれよという間にセットプレーを取られ、CKから失点してのスタートとなってしまう。

 不運な失点に加え、相変わらずゴールキックの時間の使い方が下手なラヤにイエローが出て、スポルティングムードは加速していく。プレスがハマらずサイドチェンジで反対側のWBに預けられる場面が増え、高い位置に入ってからは前半よりワンテンポ早いタイミングでのミドルで決めにかかってきていた。

チームを救った主将、似つかわしくない”安定感”

 しかし相手がノッてきて後方で繋いでくる時はショートカウンターの刺し所である。高い位置でのボール奪取に成功、ハヴァーツのワンタッチに細かく抜け出したウーデゴールへディオマンデが背後から荒いスライディングでPKを獲得。個人的には退場してもおかしくないと思ったが…。これをサカが高い弾速のシュートでサイドネットを揺らしリードを再度3点差に広げ直す。PKを貰うまでは3-1とはいえ最近まで不調だったアーセナルでは差を詰められてもおかしくないとじんわりと感じていた中で、テンポを整えるドリブルと変幻自在のパスのみならずチームを救うPKを授けてくれた主将。戻ってきてくれて本当に感謝しかない。

 4-1ともなると流石に試合は決まったようなもの。前評判では最警戒対象だったギョケレシュは試合を通してサリバ、ガブリエルに完封され大したことは無かったなというのが正直な感想。対してこちらは78分にヌワネリ出場、17歳には良い意味で似つかわしくない”安定感”で当然の如く試合に上手く入り込めていた。

82分にはこちらも途中出場メリーノがバイタルで受けたところから強烈ミドル、これは弾かれるも詰めていたトロサールが頭で押し込んでダメ押しの5点目を決めてみせる。5発大勝という結果が表すように、ラスト20分くらいは一切の不安を感じず呑気に観戦していた。最後までどう転んでもおかしくない、ジェットコースターみたいな試合をするのがアーセナルというイメージが昔からあるので、これまた似つかわしくない”安定感”を携えたアーセナルが試合終了まで堅実に時計の針を進め、2年前の雪辱を晴らし暫定7位へ浮上という結果となった。

個人的MOTM:Bukayo Saka

 2点目得点者でギョケレシュを抑え込んだガブリエル、パスでリズムを整えたウーデゴール、今季完全体となったトーマスなど今節はMOTM候補が多くて困るのだが、ここはサカ。アーセナル押せ押せムードを作り出した先制点、1点返された直後のPK弾は共に試合の流れを手繰り寄せるものだったし、右サイドからの攻撃が多かったアーセナルの中で間違いなく中心人物となっていた。神童としてウーデゴールと共にその背中をヌワネリに見せ成長を手助けして欲しいとすら思ってる。

試合総括・今後の展望

 前節ノッティンガムフォレスト戦に続き、代表ウィーク中断後はかなり波に乗っているアーセナル。怪我人も無く殆どの選手はコンディションが上向きと非常に良い雰囲気。裏ではシティがホームで3-0快勝と思いきやフェイエノールト相手に3点差を詰められ痛恨ドローとこれまた清々しい気分である。

 次節はウェストハム戦。今季のウェストハムはそこまで強くないというのがここまでの個人的な印象。今のアーセナルならばそう難しい相手ではないでしょう。奇を衒わず現ベストメンバーのまま敵地へ乗り込み、順当に勝ち点を持ち帰りたい。

いいなと思ったら応援しよう!