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「10人を劣勢と捉えない強さ」vs.Wolves(A)[0-1]【24/25PremierLeague 第23節】
試合前展望・キーポイント
直近のCLリーグフェーズ第7節では好調を維持し、1試合を残してのストレートインが決まっているが、プレミアでは優勝争いへの復帰と脱落を交互に繰り返している非常に歯がゆい時期を過ごしている現在のアーセナル。アストンヴィラ戦での痛恨ドローの傷もまだ癒えてはいない。
この試合に期待することがあるとすればやはりCLの勢いをそのまま持ってこれるかどうかに尽きると思う。マルティネッリやハヴァーツらが結果を残したディナモザグレブ戦、ホワイトやカラフィオーリ、ヌワネリら主要な怪我人達も徐々にだがスカッドに戻りつつある。首位リヴァプールが無類の強さを誇っている今、もう本当に取りこぼしている余裕は無い。残り10試合強、全勝くらいのモチベーションで臨むためにまずはこの目の前の1戦をきっちり取り切りたい。
キーポイント:ウーデゴールのコンディション上昇のきっかけ作り
試合情報
スターティングイレブン
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ハイライト
(アップ待ち)
試合内容・所感
不安定なビルドも狙いを持った仕留め方
サリバ、ヌワネリが戻ってきたかと思えばウーデゴールが病欠、メリーノが打撲で離脱と今季は本当に全員が揃うことがないアーセナルの台所事情。キャプテン不在の右IHにはヌワネリ、右WGにマルティネッリを配置しそこまでクオリティを落とすことなく何とかスターティングラインナップを揃えたという感じ。ただベンチには前線メンバーが不在と、もしビハインドになった場合の交代策にかなりの不安が残る。ウルブズは勿論、今冬・来夏の移籍ターゲットとしてプレミア諸クラブから大注目中のクーニャが先発。
アーセナルは立ち上がりからハイプレスでチャンスを何度か創出しつつも、パスミスが目立つ展開が続く。後ろから繋ぐ意思と、時に不必要なまでのタックルも見られる程インテンシティの高いウルブズ。スケリーが早速序盤から持ち前のいなし力でぐんぐん前進するシーンもあったが、相手のインターセプトからカウンターを招き、右WBセメドらから高い精度のクロスが放り込まれピンチの場面も少なくなかった。
今節のアーセナルの攻撃の狙いは至ってシンプル、「トロサールにスペースとボールを届け、ハヴァーツで仕留める」だ。左は前述の通りスケリーが、右はトーマス、ティンバー、ヌワネリでコンパクトに繋いで自陣でのプレスを脱出。相手の間延びをそのままスピーディに前線へ繋ぎ、最終的にトロサールが両足のクロス→走りこむハヴァーツという形で、シンプルながらも、そこまで高さとクロス対応に秀でた訳ではないウルブズのバックスには効果的で、前半に2度もビッグチャンスを作る。が、依然チャンス量に対してネットを揺らせないハヴァーツが決めきれず、狙いこそ良いもののゴールを奪えない時間帯が続く。
序盤はアーセナルのパスミスが目立っていたが、時間と共にウルブズ側のビルドアップミスも次第に目に付いていく。そもそもどちらもプレスが上手くハマっており、高い位置で奪って後はゴール前の精度次第、という展開に。
シンプルに”下手”なレフェリングも、見劣りしない後半戦
両者ミスの目立つ展開でも攻守で見せ場を作っていた中、風向きが大きく変わったのがスケリーの退場処分。コーナーのこぼれの処理ミスからスケリーがタクティカルファールを敢行、ここまでは良かったがオリヴァーのご乱心によりまさかのレッドカード判定を受ける事に。
正直絶対にレッドではないかと言われると別にそうではないと思う。が、だとしたらそれ以前にもウルブズ側にスパイクの見えるタックルは数回あったし、故意に痛めつけるような踏みつけでは全くもってない。ゴール阻止の観点で見ても後ろに何人も控えていたし、何か侮辱的な行動もとっておらずイエロー上等だっただろう。様々な観点で見ても一発レッドという判定は余りにも厳しすぎる。
「アーセナル逆贔屓だ!」と言いたい訳ではない(いや実際今までいくつも不公平な判定で試合をぶっ壊されてきたから元々大っ嫌いだが)。というよりも局面によって判定基準がブレブレなのがシンプルに下手で極めて不愉快である。アフター気味なタックルを連発しているウルブズ側に殆どお咎め無しという事も含め、プレミアの強度に合っていない審判である事は他試合を見ても明白である。言葉を選ばず言うと、情緒不安定なレフェリーによって世界最高峰のリーグの優勝争いが大きく歪めている元凶のPGMOLという腐敗した組織は一刻も早く解体されて欲しい。
とんちんかんなレフェリングで残り50分程を10人で戦う事を強いられたアーセナル。長いAT7分を付与された前半は交代なしで乗り切り、後半はヌワネリに代わって復帰したカラフィオーリが出場。
一人少ないながらも、防戦一方にはならず機を見たプレスできっちり嵌めきり、高い位置でのプレータイムを確保出来る展開に。両利きトロサールが右コーナーのキッカーも兼任、しかしこれはそこまで精度が伴わずニアに引っ掛かるも、奪ってからは時間をかけ過ぎない意識が非常に良かった。むしろ人数不利になってからの方がU字パスをだらだらと続けることが減り、ここぞという場面でロストを恐れない持ち運びとワンツーが見られるように。
個人的にもう一つ良かったのが、相手の悪質なファールをしっかり痛がるようになった事。ガンガン後ろからでも足をかけに来るスタイルは見てて危なっかしいのと、絶対に勝ち点3ptを取りたい相手の勢いをファールで止めこちらの矢印を前に向ける時間を用意できるという点でアーセナル主導の時間の進め方を出来ていた。
そして極めつけはゴメスの退場。ごめん流石に笑った。前半イエローを貰っていたゴメスがティンバーへの不用意過ぎるがっつり足裏スタンプで退場処分になりました。本当にありがとうございますだしアホ過ぎます。スケリーの数倍アウトなファールを行ったウルブズも10人となり、残り20分を10vs10で戦うというカオスすぎる展開に。
ここぞという場面で決めるカラフィオーリ
元々人数不利になってからも果敢に攻め続け勝ちの線を手繰り寄せ続けていたアーセナル。その働きかけが結実したのはお相手も10人になってくれてから。右のマルティネッリの逆足クロスが惜しくも合わなかったものの、こぼれをエリア内に走りこんできたカラフィオーリがダイレクトで合わせゴール右隅に流し込み、粘って粘って粘って、諦めず懸命にチームで戦ったが故の先制点を挙げる。これでカラフィオーリはアーセナル2得点目。1得点目は同じくオリヴァー主審(笑)がまた疑惑の判定で10人にしてきたシティ戦での逆転弾。絶体絶命、是が非でも得点が欲しいという展開で決める男・カラフィオーリだ。
後半はラヤのシュートストップも要所要所でチームを救った。特にジョゼサーのフィードに一発でアイヌーリが抜け出したシーンはここまで攻守に大活躍なティンバーの脚が止まってしまっており殆ど1vs1の局面だったが、良い塩梅の距離感と読みであわや同点の危機を防いでくれた。またその数分後にはトロサールの処理ミスをギリギリの飛び出しスライディングで対処。最近は取り上げる事がないラヤだが、本当にどの試合でも全局面で安定したパフォーマンスを見せてくれるGKがいるありがたみを再確認した。
今節も試合終盤にティアニー左WG交代をアルテタは実行。疲れてくる終盤に守備固め要員として高い位置でのプレス強度を再強化するのは勿論のこと、左足での高精度かつ意表を突いたクロスという武器をWGの位置で発揮できると考えると、ハヴァーツや今日はいなかったがメリーノらターゲットマンに最後まで得点のチャンスを一定量供給できる訳で、今後も効果的な交代策と言えるだろう。
個人的MOTM:Jurriën Timber
決勝点を挙げたカラフィオーリを筆頭に、マルティネッリやトーマスなんかも候補ではあるが、私はティンバーを推したい。決定的な仕事をしたという訳ではないが、試合を通してパワフルな持ち運びから独力でミドルサードを切り開いて人数不利後もチームの士気を上げるのに一役買っていた。守備もアイヌーリに一度抜け出されるシーンはあったが、それ以外はマルティネッリと上手に受け渡しながら交代で入ったファンヒチャンらに全くと言っていいほど仕事をさせずウルブズ左サイドからのチャンスメイクを徹底的に防いでいた。本当にティンバーが居なければ攻守両面でまずかったと思う。
試合総括・今後の展望
明確な狙いを持ちつつも中々得点を奪えず、シンプルに判断力が悪すぎるオリヴァーのご乱心により理不尽退場処分で絶望も、人数不利ながら戦況を互角に維持し、不用意of不用意過ぎるゴメスの退場から出力アップ、カラフィオーリのゴラッソで奇跡の勝利とあまりにジェットコースター過ぎる試合に。
特に嬉しいのが、10人になってからもプレスやビルドアップ、押し込んでからの打開姿勢に自信を失っていなかった事。今までは明らかに劣勢というのが顔に出たプレーをしていた。リヴァプールは10人になっても何かしらやってくるというイメージが個人的にあるが、それに近いような、チーム全体で絶対に得点を取るんだというあくまで前向きな姿勢が見えたことが本当に嬉しい。選手たちは優勝を諦めていないのがよくわかる試合だった。
一発退場となったスケリーはおそらく3試合の出場停止、ウーデゴール、メリーノ、それとホワイトや冨安らはまだ戻ってくるかはわからない。それでも少しずつ面子が揃ってきてはいる。試合前展望でも述べたが、引き続き全試合必勝のスタンスで絶対に落とさないよう頑張って欲しい。