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「可変ビルドの停滞で連敗」vs.Inter(A)[1-0]【24/25ChampionsLeague 第4節】

試合前展望・キーポイント

 今季早くも2敗目を喫した前節。主力の複数離脱に理不尽な退場を筆頭としたレフェリングの数々、そして極めつけは攻守両面における全体的なパフォーマンスの低下がチームを苦しめており、そんな中でのアウェイ強敵3連戦。本当に辛く厳しい日程だ...。

そんな中でも嬉しいのがウーデゴールの全体練習復帰という吉報。サカの離脱時に攻撃はサカ、ウーデゴールの主力頼みだったのだと思わされてきた中でこれは大きい。一昨年にはシティとCL決勝の舞台を演じたインテル戦、少しでもポジティブな気持ちを持って臨みたい。

キーポイント:堅守インテルを不調マルティネッリが切り開き復調なるか。

試合情報

スターティングイレブン

ウーデゴールがベンチ復帰 バックスも主力中心に

ハイライト

試合内容・所感

アタランタに続き独特なイタリアスタイル

 打撲によりライスはスカッドを離れたものの、なんといってもキャプテンウーデゴールがベンチ入り。ホワイトもスタメン復帰と、相次ぐ主力の離脱は一旦落ち着いたかなというところ。

 一昨年CL準優勝、現在のセリエAでは最強格と言って差し支えないインテルは、左右のCBがWBと近い位置までボールをキャリーしながらサイドめいっぱいの縦に速い攻撃を行うチーム。後ろでの短いパス交換でためを作り、アーセナル最終ラインに吸収された前線がすっと降りるタイミングをスイッチとし一気に縦に抜ける早い展開に持ち込んでくる。アーセナルはこの独特なあまりリーグでは相対しないスタイルに苦戦し、プレスを嵌めきれず押される状況から始まる。

 個人的にはこのやりずらさはCL初戦のアタランタ戦と似ていると感じた。イタリア勢の独特な立ち位置によるビルドアップと、フィジカルもりもりの力強い守備。派手にボコボコ殴られるわけではないが、じわじわとボールを持たれる展開が続く。

 ようやく作れた30分頃のチャンスシーンでは、サカが中へ切り込みながら選手を中継し逆サイドへと展開、マルティネッリの良いクロスにメリーノが合わせたが、競り合ったゾマーのPKを貰ってもおかしくないようなパンチングで惜しくも防がれてしまう。

 このあたりからアーセナルはフィニッシュワークをクロス主体に切り替えたように思う。インテルのゴール前の守備は固く、またウーデゴール不在でアイディア力に欠ける今の前線的にターゲットマンへのシンプルな放り込みの方が効果的と考えるのは当然のことと言えば当然だ。

塩試合に添えられるぬるっとPK

 インテルの圧に若干飲まれつつも、一応徐々にボールを握り返しコーナーから定期的にチャンスも作ってみたりする。ニューカッスル戦から可変ビルドがあまり良くない為、ホワイトがかなり中央に位置取り時に左サイドまで遠征するなどチームから何か変化を加えなければという姿勢は見えてきた。しかし残念ながら姿勢だけ。後方から上手く運べず、ハヴァーツ、サカがルーズボールを収めての2次攻撃が決定機のメインになっていく。

 かといってインテルの攻撃が脅威だったかと言われるとそうでもなかったというのが正直な感想。前半2分のダンフリースのポスト直撃弾がこの試合で一番のピンチで、バロンドール7位、初対戦のラウタロもプレーより少々横暴な接触と気性の荒さの方に目が行った。慣れない戦い方に最後まで適応出来ていたかと言われると決してそうではないが、相手方も綺麗なフィニッシュは殆ど出来ていなかった。

 だからこそ、前半終了間際の不運なハンドPKは非常に悔やまれるところ。セットプレーからメリーノの手に当たってしまった訳だが、まあメリーノを責める気もさらさらなければ誤審だという気もない。ただでさえ塩試合感が漂う中、特に盛り上がりにも欠ける、ぬるーっと取られたPKでぬるーっとビハインドを負ってハーフタイムを迎える。

執拗な足元狙いと”流動的”の罠

 メリーノをジェズスに変えての後半戦。恐らく左IHとして有効な働きがあまり出来なかった事を鑑みての戦術的交代だろうが、そうだとしたらそもそもアーセナルの選手達の大多数が有効な働きを出来ていなかった気がするが…。

 後半に入ってからのインテルは、前半から何度かトライしてきた前線のレイオフから素早い攻撃を更に多用してくる。サリバ、ガブリエルに勝るとも劣らない地上戦で反転できないまでも走り込む2列目へ浮き球で抜け出しをサポート。精度こそあまり伴わず回収できるシーンの方が多かったが、やる事が明確な分インテルの選手達はやりやすそうにしていた。

 対するアーセナルはというと、後半は攻撃の停滞に拍車がかかっていた。週末に控える大一番ナポリ戦に向け続々と選手交代を行ってくるインテルに対し、80分には前節と同様ジンチェンコ、ヌワネリの投入を図るもコンパクトな5-4-1ブロックを攻略できず典型的なU字パスに終始していく。

 これまた前節と同じなのだが、原因としてはやはり皆足元で受けたがるからだろう。得点意欲に前のめりになると足元で受けてからどうこうしたくなる気持ちも分かるが、タイトな守備陣形こそ裏へのランニングで間延びさせラインを決壊させることが大切。それをせず結果的に狭いスペースを無理くり通そうとしたところからロスト、押し込むにあたり前へ人数をかけているから少ない人数でロングカウンターを食らうシーンが増えてしまった。

 それと殆どの選手達の立ち位置も気になるところ。”流動的な攻撃”というのは調子がいい時は対策が難しく魅力的なものだが、一度迷いが出てしまうと選手それぞれが不安を抱いたまま適切なポジショニングが分からずふらふらとピッチを彷徨ってしまう諸刃の剣であるともいえる。

 前述のホワイトに加えティンバーも何かやろうとする意識が少し強く出過ぎたあまり強引に高い位置でのボール関与に出向き却って中央での混雑に陥ったり、CFとIHの両タスクをこなせるハヴァーツとトロサールは入れ替わり立ち代わりする中でどっちつかずなプレーに終始していたように見えた。1ヵ月ほど前には復調の兆しが見えたマルティネッリは結局今も決定機を生み出すようなドリブルは出来ておらず、サカ頼みのチームだという事を痛感させられるゲームになってしまった。

 アルテタのハンドにイエロー(???)、競り合いからハヴァーツの流血、あまりに軽すぎる笛。試合終盤になるにつれ訪れる悪い雰囲気に対し、今はこれらを跳ね返せる程の力もない。不調アーセナルあるあるのクロス爆撃はパヴァール、デフライらに最後の最後まで弾き返され、ATには遂にウーデゴールが復帰を果たすも流石に数分では何も起こせず、試合は終了。

個人的MOTM:無し

 今までは引き分け、負け試合であってもMOTMを選んできたが、今節に関しては流石に誰も値しない。文字通り全員不調、目立った活躍をした選手はいなかった。

試合総括・今後の展望

 後方からのビルドアップは前方にスペースと時間を与えるようなものではなく、ファイナルサードでのアイディア力も無ければスピーディに仕留める連動性も無い。かといって守備も2季連続の優勝争いを支えたリーグ屈指の堅守っぷりは影を潜め、比較的容易に自陣まで侵入されることが多くなった。

 はっきり言って今のアーセナルは情けない。もうこの一言に尽きる。絶望するほどに何かが突出して悪いわけではないのだが、ポジティブな要素が見つからないのだ。ヌワネリに希望を見出すのも他にすがるものがないからな訳で、ウーデゴールの帰還という今節唯一のプラス要素が連敗中のファンの心を癒してくれる。

 もうこの際戦い方は何でもいい。とにかく次節のチェルシー戦は勝てば何でもいい。近年のチェルシー戦というのはアーセナルにとって復調のきっかけを掴ませてくれる良い相手。ぜひそのジンクスを存分に有効活用していきたい。

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