【ドバイ明けの覚醒継続】Arsenalマッチレビュー@PL第25節vsBurnley(A)/24.02.18
マッチレポート
試合結果
ハイライト映像
スターティングイレブン
トロサール、ホワイト、ハヴァーツら前節のキーマンとなった3選手を中心に、11人全員が組織立って戦い大勝を収めた前節ウェストハム戦からメンバーの交代は無し。勢いそのままにアウェイ3連戦の2戦目、ターフムーアでのバーンリー戦に挑む。
試合トピックス
ハイライン×フィジカルバトルを早々に挫く
昔ながらのイングランドフットボールスタイルというと私は真っ先にバーンリーを思い浮かべる。そしてそう考える人も恐らく多いだろう。今節でもそれは顕著で、地道に繋ぐよりも縦へ素早くボールを送り込み、また守備時もゴリゴリのフィジカルバトルとハイラインの圧縮プレスの掛け算により相手に息つかせないまさに体現者と呼べる戦い方を披露してきた。
昔から比較的小柄な選手が多く、パワーに少々難ありのアーセナルはこのタイプのチームが苦手である。しかしここ最近上がり調子のアーセナルはこういったオープンな展開を乗りこなし早々の先制点でゲームの方向性を決める。
4分、攻守が激しく入れ替わる中ライスのパスから左大外をマルティネッリが駆け上がり、ゴール前に選手達が集まった所がら空きのバイタルへマイナスの折り返し、コントロールのワンタッチを挟み強烈なシュートでゴール。最近ウーデゴールのミドルがブロックされることも多かった中久々に得意の形から得点を獲得する。
徹底したポケット狙いと右可変で真価を発揮するキヴィオル
先制し試合のテンポを掴んだアーセナル。引き続きハイラインでサイド圧縮プレスをかけてくるバーンリーを相手に、一番のポイントとなったのが「徹底したポケット狙い」という戦い方だ。
この戦術の中心となるのはウーデゴールと前節に続いてハヴァーツとトロサールの3人。具体的には、ホワイトの偽SBロールによりサカやウーデゴールが高い位置での攻撃参加に集中し、右サイドの選手達が立ち位置を入れ替えながら組み立て、機を見て降りてくるトロサールと連動しハーフスペースを抜けていくハヴァーツ、そしてそこへウーデゴールが絶妙なスルーパスを送るという流れだ。この形は試合を通して多く見られ、特にサカにボールが渡った際同サイドに人数をかけるバーンリーに対し、空きがちなCB-SB間を利用するという再現性の高くデザインされた良い攻撃である。
またハヴァーツについてもう少し触れると、彼はルーズボールやクロスにほとんどの局面で競り負けることがなく、起点を作って他選手の追い越しをパスでサポートする動きも素晴らしかった。最前列でシャドーと9番の2つの役割をかなりのハイレベルでこなした彼は個人的にこの試合のMOTMではないかと思う。
そしてそんな右サイドの連携から生まれたのが2点目。41分、大外サカの戻しを受けたウーデゴールが、センターラインを抜けるハヴァーツへスルーパス、その落としを拾ったトロサールがファールを受けPK、コースを読まれるもタイミングを上手く外したサカのPKで前半の内に追加点をゲットする。
この局面ではホワイトがハーフスペース、サカが大外に立って彼らで守備者をピン止めし、先に述べた戦術がウーデゴールへのバックパスをスイッチに起動し完全にハマったシーンだろう。ウーデゴールにボールが入ると、トロサールが数歩降りるのとハヴァーツの裏抜けがセットで行われ、ハヴァーツへボールが渡る時にはもうトロサールは追い越す動きを見せる。選手達が大きく定義された規律の中で自由に動き回り、意図してカオスが生み出された一連の動きだった。
他にも、プレスで人が集まってくるも的確に後方へボールを逃がしライスが前線へのフィードで一発でひっくり返すシーンも見られ、アーセナルはバーンリーの守備戦術に対し100点に近い回答を叩き出していた。
また、右可変を土台として上手く機能したのは攻撃面だけではない。こちらも前節に続いて、キヴィオルが低い位置での仕事に専念出来るようになった事もメリットとして挙げられる。
試合序盤と終盤、右サイドにフォファナが流れたシーンがその良い例だろう。前者はサリバが潰しに出かけて行ったものの千切られ、後者は大外から高い馬力で駆け上がり共にピンチの場面。しかしここに現れたキヴィオルは安易に飛び込まず、粘り強いタイトなマークからドリブルを遅らせ、最終的にエンドラインにボールを逃がすことに成功していた。
このようにホワイトが代わりに上がってくれるので被カウンター時の防波堤として機能出来る事に加え、普段低い位置に留まっているからこそたまに高い位置へ出かけた際はマークが甘く攻撃参加にも効果的と良い事尽くし。66分のトロサールの4点目は、ミドルサードでのルーズボールをウーデゴールがマイボールにした時に、キヴィオルが外から飛び出しポケットを取って折り返した所から生まれたゴールである。彼の持ち味を生かしつつ相手の意表を突く伏兵としての働きも行えるこのシステムは、キヴィオルにとってやりやすく無駄のない形だろう。
スタメンとサブの決定的な差
時系列が前後するが、前半に良い形を量産し複数得点を挙げたアーセナルは後半開始早々にも得点を挙げる。47分、ウーデゴールのCB-SB間を縫う絶妙なスルーパスに抜け出したサカが、カットインを匂わせながらワンタッチでもう一つ持ち運び、逆足でGKのニア上を打ち抜き3点目を獲得。サカの逆足制度は本当に素晴らしく、またかつてのラカゼットを彷彿とさせるようなパワーのあるニアへの叩き込みも良かった。
また4点目を挟み78分、キヴィオルが素早いスローインのリスタートをした所から一本で抜け出したハヴァーツが、詰めてきたデルクロワの股を抜きながら技ありの切り返し、GKとの1vs1で冷静に脇下を打ち抜き5点目をゲット。レヴァークーゼンやチェルシー時代の技巧派なシュートで、シーズン前半には自信の欠落か見られなかったテクニカルな動きを成功して見せた。
と、前節ウェストハム戦に続き大量得点で完全にお祭りムードで試合は進んでいったが、一つだけ心配な点が見られた。それが途中交代組のインテンシティについてだ。
特筆すべきはネルソンやスミスロウ。2人は攻撃局面ではまたもそこそこの活躍を見せていたが、守備局面で若干寄せが甘いというか、絶対奪い切ってやるというような気迫ある守備が出来ていなかったように思う。特に試合終了間際、クロスをガブリエルが跳ね返すものの、2人がボールウォッチャーになってしまい、フリーになったブラウンヒルにそのまま打たれてしまうというシーンがあった。
フル出場したマルティネッリが彼らとの良い対比で、アーセナルから見て右→左のサイドチェンジで深い位置を取られそうになると、スライドし離れていた分を取り返すように常に全力でプレスバックしていた。あとはウーデゴールも同様に。どれだけ体と頭が疲れていようと、勝ちが決まっていようと、最後の最後まで危険な目を摘む全力守備が出来るような選手が今のアーセナルのスタメンになれる。良いものを持った2人だからこそ、そういう気持ちに依る所が大きい要素でメンバーに選ばれないのは勿体ない。こういった改善すべき所をスタメンレベルに修正出来れば、優勝に向けて更に大きく一歩近づくだろう。
あとがき
試合後半は雨でプレーしにくそうに見える時間帯があったものの、試合を通して概ねゲームを支配し、前節に続いて盤石の勝利を収められた。
これにてアーセナルは3位シティが一試合未消化なものの2位に順位をアップ。更にここ2節の大量得点も大きな追い風となり、1位リバプールを追い抜いて得失点数26とリーグ1位の数字となった。
シーズンも残り約1/3、優勝争いはリバプールvsアーセナルvsシティの三すくみの形が固まりつつある。現在のアーセナルは特に左SBに怪我人が多発し、トーマスやジェズス、ヴィエイラや冨安といった主力がかなりの人数欠けている。しかし前、今節でキヴィオルの新しい使い方を模索したように今いるメンバーで結果の最大化を行っていけるようならば、優勝は決して夢物語ではない。離脱者が早く戻ってくることを祈りつつ、次節いよいよ行われるCL決勝トーナメントも引き続き上手く乗り切って欲しい。
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