【アーセナル】PremierLeague/第14節/vsWolverhampton Wanderers(A)【ごとこの備忘録】
試合前展望
前節はカラバオ杯にてブライトンと対戦。互いに大幅ターンオーバーした中で相対することとなり、チャンスを多数作ることは出来たものの控え組の練度の差を見せ付けられ1-3敗戦でノックアウトされるという結果に。
しかし裏を返せば例年以上の過密日程の中早々に敗退したことで試合数を減らし疲労を軽減させることが出来たとも捉えられる。ましてや現在のアーセナルはヴェンゲル期以来最もタイトルに近い位置で戦っている。PLにて好成績を残す為にも試合数がかさまないに越したことはない。
さてそんな中、W杯前最後に当たるのがウルブズ。ネトやヒメネス等ウルブズの顔とも言える面々が何人か離脱中、また先日監督解任もあり現在降格圏に沈んでいるなど色々とチームが不安定な中での対戦である。
前回対戦時には今は居ないペペやラカゼットの活躍により劇的な逆転勝利を成し遂げたのはまだ記憶に新しい。そんなハラハラするドラマチック性は要らないが、今節も是非とも勝利を収め、クリスマスを首位で迎えたいものだ。
各選手の評価
GK アーロン・ラムズデール
2人でコンパクトに完結させたウルブズ1のロングカウンターも完璧なタイミングでの前衛守備でキャッチングするなど調子の良さを見せつけた。FPばかり目が行きがちだがこのところラムズデールの安定感は素晴らしいものであると再認識させられた。
LSB アレクサンドル・ジンチェンコ
中盤組み込みはもとより、高い位置へ出かけていく際はそのリスクに見合った攻撃貢献とカウンタープレスを発動させまたしてもそのサッカーIQの高さを見せつけた。またベジェリンから受け継いだファールスローを2戦連続披露。空中戦の処理ミスから何度も背後に抜けられるシーンがあったものの、それ以外は良かった。
LCB ガブリエル・マガリャンイス
サリバが招いたピンチを超人的な体投げ出しで対処したシーンはかなり驚いた。今日の試合に関してはサリバよりも活躍したと言える内容で、いくつもの決定機を阻止し鉄壁と化していた。
RCB ウィリアム・サリバ
前へ出ての良い潰し、またしてもオフサイドポジションにいる相手選手に追いつき刈り取るなどその類まれなる身体能力を今日も遺憾なく発揮した。ただ頭脳面では一度背後の確認ミスからバックパス失敗でゲデスの決定機を作ってしまう場面があった。それでもサリバお得意の切り替えの早さ、すぐに通常運転に戻り似たような場面でも簡単なボールに逃げず繋ぎ続ける胆力を見せた。
RSB ベン・ホワイト
低い位置に留まることが多かったものの、サカの苦戦具合を考慮しピンポイントにオーバーラップなどでサポートに入る好判断を見せた。また今節はピッチの3分の2を縦断する神フィードからジェズスの決定機を、またサカにも同様のパスを供給したりとかなり高いキック精度を披露した。
DMF トーマス・パーティ
ボールを触る時間はあまりなかったものの、カウンタープレスから瞬時の攻守切り替えがとても良かった。最近見せるロングスローもそこそこ効果的でウルブズ側は厄介に感じていただろう。
LIH グラニト・ジャカ
試合開始3分で気分がすぐれないため試合を止めるシーンがあり、一度はプレー続行するも16分にヴィエイラと交代、ピッチを去ることとなってしまった。
LIH ファビオ・ヴィエイラ(16'~)
良いフリーランを一本見せるものの、特に前半はオンザボール、オフザボール共にほとんど存在感を発揮できず不満の残るパフォーマンスに。それでも先制点をお膳立てするなど一定の結果を残した。
RIH マーティン・ウーデゴール/PremierLeague公式,Arsenal公式,個人的MOTM
前半は大外に降りてきても明確な働きがあまり出来ずサカと共に苦戦していたが、後半には先制点を、更に追加点を記録。攻撃にリズムが生まれノッた時のウーデゴールはチームで一番輝いていた。また今節の結果を受けPLにおけるG6でチーム内得点王に。ピッチ内外問わずチームを引っ張るキャプテンは本当に頼もしい。
LWG ガブリエル・マルティネッリ
ドリブル突破とインナーラップした味方の使い分けを上手く行い、逆サイドのサカよりは活躍出来ていた。いつものように相手ブロック前を横断する持ち運びを筆頭に攻撃面では存在感を発揮していた。
RWG ブカヨ・サカ
サカにとっては少し難しい試合に。WBブエノに1vs1で優位に立てず突破に苦しんでいた印象。それでも後半には周囲のサポートもあり立て直していた。
CF ガブリエル・ジェズス
今節もまた得点を記録できず。ガビの良いアーリー、前半1のロングカウンター共にオフサイドとクロスバー直撃で決定機を逃してしまった。それでも気合いのポストにディレイかけるプレスに奮闘、先制点に繋がるドリブルを見せまたしても得点以外は満点に近い活躍を見せた。
試合展開
試合はフォーメーション通りの532で撤退守備を執り行うウルブズと、ボールを持って攻め立てようとするアーセナルという構図から入った。
ウルブズはほとんどCBへのプレスを行わず2トップはトーマスを消す形に終始。徹底したリトリートでハーフウェーライン付近まで下がるのが基本と無理に前に出ることがなかった。
これに対しアーセナルは左右に振って揺さぶりをかけ、頻繁なスライドによって生まれた選手間の動きのラグによるズレを狙った。ただブロックを崩し切る前に早めに前に付けようと焦る出し手達。ウルブズを完全には押し込められていない状態で引っ掛けてしまうことが何度もあったため、ショート寄りのカウンターを発動させてしまうこともあった。
それでも結局カウンター主体のウルブズ。ボール奪取さえされなければネガトラ自体を発生させずに済むため、意図的にボールを持つ時間を増やしじっくり攻める展開に。試合を落ちつかせた。
ただ依然ブロック攻略に有効なパスを差し込むことが出来ないアーセナル。特に両WGが対面で明確に優位を確立させられなかったこと、ユニット形成からの旋回では数えられるほどのチャンスしか作れなかったことが苦労した点。結果ブロック守備攻略の鉄板、ポジションチェンジの強要をウルブズに行うことが出来なかった、そんな苦戦した前半であった。
ここでアルテタの手腕が光る。ハーフタイムを挟んで後半、何人かの選手の立ち位置が調整されたように見えた。
ジェズスは前節のようなWGとのポジションチェンジによりサイドに張って守備基準の混乱を招き、ウーデゴールは敢えて中央に残りIHの初期位置に立つことで縦パスの選択肢を増やし、ホワイトはオーバーラップによってサカのサポートに入る頻度を増やした。
選手個々人の主戦場を前半よりズラすことで、例えばサカとブエノがシンプルに1vs1を行いその勝敗がダイレクトに戦局に影響していたところをホワイトが入ることで2vs1にしたり、ウーデゴールがウルブズのブロック外へ出ていた為ウルブズ側はある程度好きにやらせていたところをブロック内へ侵入され気にしなくてはならない変数を増やさせたりと、ウルブズが上手く対処出来ていた局面の複雑化を図ることに。
個人的にはこれは効果てきめんだったように思う。苦戦していた両WGが束縛から解き放たれ前半よりも自由に動き回ることが出来ていたように思う。
そうした良い流れを逃さなかったアーセナル。54分、前述したように左に張っていたジェズスが相手をひきつけるスローなドリブルをし、それに合わせたヴィエイラがジャカ顔負けのポケット侵入から引き取って折り返し、そのボールにウーデゴールが合わせ先制。
リードされるとカウンター主体のチームは撤退守備をやめ前に出ざるを得ないのはこの世の摂理。70分ごろにウルブズはポデンセらの投入も行い序盤とは打って変わって明確に高い位置でプレスをかけてくるように。
ただそうなるとショートパスでの打開が得意なアーセナルからすればしめたものである。ミスを全く引きずらなかったサリバ含め低い位置から上手くいなしつつ前進。また、この後衛の優秀さがアーセナルの攻勢にも拍車をかけ、人が次々とエリア内に侵入していく波状攻撃から生まれる攻撃の厚みは首位たらしめる迫力であった。
そうして75分、今度はガビ→ジンチェンコの連携でエリア内に折り返したボールをもう一度受けたガビがシュート、これは惜しくも弾かれるもこぼれにきちんと反応したウーデゴールが無事追加点を上げる。
91分にはネルソン、エルネニー、セドリックを投入し危なげなく逃げ切りに成功。W杯前最後の試合を勝利で締めくくることに。
全体の雑感
ウルブズは試合前展望でも述べたように不調の真っただ中、また順位も暫定最下位とアウェーとはいえイージーなものになると予想していた。
しかしハーフタイム時点にはその考えは消え去っていた。思うように攻撃が出来ない歯がゆさとロングカウンターを発動される場面の繰り返しで、概ねウルブズの狙い通りなんだろうなという不穏な空気があった。
しかしアルテタが見事な修正を披露し立ち位置の調整を行ったことで後半からは攻撃が円滑化、結果キャプテンの2ゴールで勝利を収めることができ満足のいく結果となった。
選手個々人について言うならばサリバとガブリエルの二人だろう。今節はサリバがミスしたところをガブリエルが120点の対応でピンチからチームを、そしてサリバを救うプレーを見せた。これは今までも、また逆パターンも当然あり、普段高水準な働きを見せながらたまのミスをお互いが補い合う素晴らしいCBコンビをまざまざと見せつけられた。これはファンとして推さざるを得ないだろう…。
というわけでW杯前最終試合に勝利、またシティがホームでブレントフォードに劇的な敗戦という事で2位のシティと5pt差でクリスマスを迎えることに。つまり日本時間における年内首位確定というわけである。こんなめでたいことはないね。本当にここまでよくやってくれた選手たちには最大限のねぎらいの言葉を送りたい。
次戦に向けて
次戦はW杯明け12月27日のウェストハム戦。ドバイでの休暇兼遠征があるとはいえ一か月以上試合間隔があいてしまう。今節得た好調な流れをどうか選手たちが忘れてしまうことなく、気持ちを切らさずPL再開直後からまたフルスロットルで臨んで欲しい。
そしてこれは個人的なものだが、私は現スカッドの中でもスミスロウが一番といっていいほど好きである。そんなスミスロウがいよいよ年末復帰してくるという事で、怪我明けかつ今の盤石なスタメンに割って入ることは困難だろうが途中出場などでプレーが見られることを本当に楽しみに待っている。現在デプスが薄い左WGを、ガビとロウの二人で回していた昨季の再現で解消していくのを早く見たいものだ。