「主将復帰も惜しくもドロー」vs.Chelsea(A)[1-1]【24/25PremierLeague 第11節】
試合前展望・キーポイント
プレミア、チャンピオンズリーグ共に直近負け、攻守共にパフォーマンスが指摘されている現在のアーセナル。ウーデゴールの復帰等明るいニュースもありはするが、短期間での劇的な変化が望めない今厳しい状況に変わりはないだろう。
近年不調だったアーセナルにとって、チェルシー戦というのは何かきっかけをつかみチーム状況が上向きになる大事なゲームであった。今回も例に漏れず彼らをありがたく踏み台にさせていただき、良い雰囲気で代表ウィークに突入したい。
キーポイント:流れの中からの得点で好調時の感覚を取り戻せるか。
試合情報
スターティングイレブン
ハイライト
試合内容・所感
ギュスト右IH戦法、流石のキャプテン
シーズン初期の好調ぶりは既に遠い昔の記憶、1、2ヵ月もの不調に陥っている間に、気付けば勝ち点でチェルシーに並び6位後退。首位リバプールに勝ち点を10pt弱もの差を付けられている現状である。しかし、遂に復帰したウーデゴール、足の指を骨折してたライスがスタメン復帰し、自信を持って送り出せる11人でこの試合に臨む。あくまでチーム全体のコンディションがよければ、の話だが…。
久しぶりの前線メンバー、ウーデゴールが戻ったとはいえ少々ちぐはぐな立ち上がりを迎え、序盤戦はハイプレスに上手く嵌めれずショートパスで繋がれサイドを突破されるシーンが多めに。こちらと比べ、新監督マレスカのもとチーム状況が上向きな影響か、多少詰まりそうになったところからのアドリブの効いたポジショニングズレで上手くパスコースを作り出すチェルシー。ビルドアップに自信が見られた。
そんな保持時チェルシーの一番の特徴はなんといっても右SBギュストのIH化。それも押し込んでからというより後方がボールを持つ割と早い段階からIH化し、縦パスのレイオフ役にインナーラップでポケット取りと重要な役割を担っていたように思う。
アンカートーマスの脇に位置取り、ガブリエルが潰し切れない絶妙な高さで散らしてもよし、圧が弱ければそのまま前進しても良し。今節は右WGマドゥエケがサイドを駆け上がりえぐりこむドリブルが脅威だったため、特に前半は彼らが目の上のたんこぶといった状況。逆に思ったよりパーマーの攻撃に迫力が無かったのが意外。
チェルシーは比較的良い入りをしてきたものの、時間が経つにつれ徐々にアーセナルはポゼッション率を増やしていく。特に保持力を高める上でウーデゴールは流石の一言。受けてはたいてのテンポ感が丁度よく、相手のプレスを誘発させつつ無力化し、チーム全体でボールを回しながら前進するうえでリズムを作っていた。2か月ぶりの復帰で90分間走り抜き両チーム最多チャンスメイク数はちょっと意味が分からない…。
こうして異なる形でゴールに迫る両者だが、互いに明確な決定機は作らせない固い守備で試合は推移。一度意表を突いたリスタートからスルーパスに上手く反転したハヴァーツが古巣相手に貴重な先制点を挙げるが、これは惜しくもオフサイドで取り消し。決めきれていれば…と感じさせるシーンを両チームともに作る前半となった。
先制もまたしても追い付かれる弱さ
特段良くも悪くもなかった前半が明け後半。前回対戦時程ククレジャをぶち抜けないサカ、前節の傷が開きまた頭から流血してしまったハヴァーツ。対してチェルシーは、ここまで静かだったネトがパーマーとアーセナル右サイドでの攻撃が徐々に活性化していく。
立ち上がりと同様相手にボールを持たれ押され気味だった中、高い位置での奪取に成功したウーデゴールの綺麗なフライパスに、マルティネッリが冷静にコントロール、きわっきわのニアを撃ち抜くシュートで今度こそ先制に成功する。キャプテンはアシストという形でも結果を残す。
しかしその数分後、今度はここまでフィニッシュワークが見劣りしていたネトにいつもより空いていたバイタルに侵入され、ミドルでリードを消されてしまう。シティ、リバプール戦と同様、強敵相手に値千金の先制弾を決めながら追い付かれてしまうというところに微妙なチーム状況が嫌という程反映されていると感じる。
追いつきたいアーセナルはメリーノとトロサールを投入。メリーノは投入直後から二度クロスが放り込まれるも絶妙に合わず。だが徐々にアジャスト出来ているようで、サカ、ウーデゴールのアシストでゴールする日も近いと感じさせた。意外と技巧派な一面もあり、トーマス以上の冷静さでプレスをひっくり返すターンが本当に上手く、ウーデゴールとの三角形で交代前より狭い中央を抜けるようになったのは見ていてわくわくした。
前線の活性化に段々と照準があっていくクロスで決定機を作り始めるも、ククレジャの不必要なまでのタックルに晒され続けたサカが無念の負傷交代。交代で入ったジェズスはチャンスを悉く棒に振りあまりに微妙過ぎるのも相まって、あからさまに攻撃のテンポがガクっと落ちたのが本当に痛かった。
ついでに述べると、この試合カイセドがノーカードで終わったのが本当に謎。先日のニューカッスルにも言える事だが、”闘う”ことと”荒い”ことを履き違えている選手が多すぎる。プレーが良いだけに、しょうもないアフタータックルが多くてうんざりだ。
フィード一発で抜け出されそうなシーンを二度ラヤがクリアでチームを救いつつ、久々のキャプテンの鼓舞もあり最後まで攻撃の手を緩めないアーセナル。しかしサリバがポケットから折り返したラストプレーは、ニアのトロサールが空振り試合終了。前半に続き共に決定機を逃す、なんとも絶妙な雰囲気の中1-1ドローという結果に。
個人的MOTM:Martin Ødegaard
試合内容でも散々触れたがやはりこの男がいるといないとではアーセナルの攻撃は大きく変わるというのを感じさせた復帰戦に。久々の先発ながらフルで見劣りしないプレスにテンポアップを図るパス、試合全体を俯瞰しその時々に必要なプレーを正しく取捨選択する頭の良さは流石である。彼がいない間にウーデゴール不在の最適解を探しておきたいところだったが…。
試合総括・今後の展望
ここ最近の試合は、最悪!という程の結果でもないのが絶妙に歯がゆいところである。良い時間帯は少しずつだが増えてきているし、怪我人もかなり戻ってきている。前節結構な懐疑の芽を向けられたポジショニングも今節は特に悪目立ちもしなかったし、チーム状況が下向きというわけではないことだけは断言できる。
しかしそう甘い事を言っていると優勝争いから早くも脱落してしまうという現状もまた事実。ペップがキャリア史上初の4連敗を喫しシティも絶賛不調中だが、今季はリバプールが快進撃を見せている。代表期間中思う存分リフレッシュと戦術の再浸透・進化を図り、改めて強いアーセナルが早く見たい。