【アーセナル】PremierLeague/第33節/vsManchester City(A)【ごとこの備忘録】
試合前展望
直近3試合連続ドローと優勝に向けて大きなブレーキがかかってしまっている現在のアーセナル。ここで立ちはだかるのが、シーズン38試合の中でも最難関と言って差し支えないエティハドでのマンチェスターシティ戦。優勝を争う相手として、欧州サッカー界でも最強格である彼らと雌雄を決する戦いが行われる。
試合前の怪我人情報としては、アーセナルはシーズンアウトの冨安とサリバに加えジャカが完全にフィットを取り戻せておらずダウト、対するシティはここまで好調だったアケのみ欠場といった現状で、選手層という面でも相対的にアーセナルに逆風が吹いてしまっている訳である。
ペップ政権下では特にシティに対する戦績が奮わずいつも辛酸を嘗めさせられてきた。だがその度に少しづつでもチームとして目指す方向を定め前進し、着実に強くなってきたこともまた間違いない。リーグ制覇の命運を分ける今節こそ、「負けたけど良い経験だった」などとは言わず貪欲に勝ちを目指して欲しい。少なくともそれに足る実力はもうあるのだから。
試合結果
スターティングメンバー
試合展開
アーセナルは鉄人ジャカが予想より早い復帰を遂げサリバ以外は通常運転の選出。対するシティは今季ペップが取る4CB戦法、アカンジとウォーカーを両SBに据えストーンズをアンカーでなくCBへ配置するなど、アーセナル対策が垣間見えるラインナップとなった。
さて試合の立ち上がり。シティは今季ハーランドの加入に伴いデブライネと2人で完結出来る強烈なロングカウンターが武器の一つとなっており、4CBが守る堅牢なバックラインから素早く攻撃へ転化するシーンが増えてきている。その為従来のポゼッションサッカーと織り交ぜて多彩な攻め手を持っており、これらを駆使して開始直後からアーセナル陣内へ侵入した。
これに負けじとアーセナルもビルドアップの時間を捻出する。先の例でいうとアーセナルは保持して相手の穴を見つける遅攻タイプで、実際に試合開始10分程度だと保持率が6割を超えており試合のコントロールという点ではシティにも引けを取らなかった。
こうして両者チャンスを伺う固い入りになるかと思われた序盤。だが無情にもシティの武器がアーセナルのそれを上回り早々に先制点を挙げられてしまう。
最早シティ戦の恒例行事と化してしまっている先制点でアーセナルとしては非常に苦しい入りに。そこから失点を引きずるかのように圧倒的ハイプレスの圧力に屈し中々前進が出来なくなっていった。ミドルサードへショートパスで進入することをシティの運動量豊富な両WGが旗手となって阻止し、長い球に逃げてしまうこともしばしば。
となると当然チームの核となる選手へボールが渡る頻度も限られてしまう。両WGの質的優位(対峙するSBは共に本職CBなので明確な優位があるかと言われれば怪しいが…)、ウーデゴールやトーマスの配給力といったアーセナルの武器を使用するフェーズへそもそも辿り着けず、選手たちも今季はあまり感じることのなかった窮屈さを味わいながら試合を進めていっただろう。
対するシティは対照的にペースを掴みポゼッションを行う時間も徐々に増えていく。こうしてシティのピッチ支配から逃れる見慣れたいつもの光景へと変貌し、アーセナルは自信を無くした様子でボールを奪うこともできず保持もできずプレスに走り回る時間が殆ど、といったように悪循環へと陥っていった。
それでもラムズデールの神セーブ連発を筆頭に何とか守り切りスコアは依然0-1推移。追いかけなければならないアーセナルは撃ち合い上等の展開も厭わず、デブライネ×ハーランドのロングカウンターのリスクを背負っても1点をもぎ取らなければならなかった。
だがシティはセットプレーから追加点を獲得。試合内容的に0-3でも不思議じゃない展開の中辛うじて1失点で済んでいた中で、前半終了ぎりぎりに大きな痛手を負う羽目となった。
劣勢に加え0-2という勝ち点3ptにあまりに遠すぎるスコアで迎えた後半。ただHTの交代は無し。現状の11人が一番点数を獲れる陣容だとアルテタは判断したのだろう。
0-2という点差はサッカーにおいてよく「危険なスコア」だと形容される構図。1点を返せば1-2となって勝ち越しているチームがドローの恐怖に怯えてプレーにこわばりが生まれ、とんとん拍子で逆転も大いにあり得るというのが通説で、今まで嫌という程それを味わってきたアーセナルが一番良く理解している。
だが絶対王者シティにはそういった隙も存在しなかった。早々に先制点を挙げた2人のコンビが、後半も攻勢をかけ続けることを暗示したかのような追加点を奪っていった。
もう後がないアーセナルは60分にマルティネッリとジャカを下げトロサールとジョルジーニョを投入、ダブルピボットへ変更し中盤の安定感を担保。次いで70分にスミスロウ、80分にエンケティアとネルソンを投入しヘイルエンド産の若手達に命運を託す。トロサールとネルソンは前節の途中出場に引き続き高パフォーマンスを発揮した。それと同時にやはりもう少し早い時間から見たかったと感じざるを得なかった。
そのおかげか、はたまた試合をクローズさせる為シティがペースを落としたのか、前半の終わり頃よりかはチャンスを生み出すことに成功するアーセナル。だが攻撃の終着点まで辿り着く前にパスミスから自滅を招く展開をたくさん生み出してしまう。カウンターのチャンスはあるのに窮屈なプレーからなあなあの攻撃を行いそのしっぺ返しを食らうというのを繰り返す、不満だらけの残り時間を過ごした。
それでもATを含め残り10分弱の時間を残した状態でセットプレーから起死回生の一手となる得点をホールディングが挙げる。
だが無情にもその反撃の狼煙を即座にかき消してくるシティ。
終わってみれば4失点大敗。アーセナルは今季勝ち進んできた地力を見せることなく、現状に満足せず新たな戦い方を模索し続けるペップシティに惨敗を喫することとなった。
ピックアップ選手
当然無し。
全体雑感・次戦に向けて
今節の裏で好調ブライトンがフォレストに負けたことを受け、クラブとして近年最大の目標であったCL復帰が確定したものの、タイトルレースからは十中八九脱落。結局はいつも通り蹂躙されてしまうことに。
また試合を見てる時の苦行っぷりは久々で、試合内容的にもあまり不服の無いスコアだからこそフラストレーションもいっそう溜まった。アルテタの采配含め、サリバくらいしか欠けていない中情けないプレーをした選手達にはもう一度気合を入れ直してほしい。
だが、今回の敗戦を受けてまた歩き始める必要があるのは選手達が一番よくわかっているはず。今季の好調な勝ち点推移は喜ばしいこととして受け入れつつも、改めて未だ不完全なチームだという事を実感させられただろう。決して立ち止まることなくシーズン終盤まで走り抜けて欲しい。
また今節でもやはり議題の対象に上がったのがホールディング。個人的には、失点に直結するような致命的なミスを犯しておらずファン界隈で批判されるようなほどではないと思う。が、彼なりのスタンダードがPLやCL優勝を争うレベルを満たしていないのもまた事実。シーズンも終盤で夏のマーケットの話題が盛り上がり、ライスやカイセド、クドゥスやマウントといった多くの選手が獲得候補に挙げられている。彼らのようなクオリティを持つ選手を獲得する必要も当然あるだろう。
スパーズよりも上の順位フィニッシュ&CL圏内が敗戦の裏で確定するなど、グーナーとしては非常に複雑な心情となった今節。シティがこけるとは考えにくいが、とにかく残り全試合当然勝利を目指し最後まで集中力を保ってほしい。