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「圧巻の前半でシーズンダブル達成」vs.Tottenham【24/25PremierLeague 第21節】

試合前展望・キーポイント

 カラバオではニューカッスル相手に1stlegを0-2で落とし、FAカップ3回戦vsユナイテッド戦では相手に退場者が出たのにも関わらず、コーナーからガブリエルの1得点のみ、PK戦までもつれ敗退。しかもジェズスは前十字靭帯の断裂でシーズンアウト。今のアーセナルにとってあまりに痛すぎる敗戦となった。

節は重いノースロンドンダービー。スパーズもディフェンスラインを中心に主力が複数離脱中、ポステコサッカーに懐疑的な声も多く、互いに満身創痍。しかし、ダービーというのはチームの調子はあまり関係ないないもの。とにかく何が何でも勝て。

キーポイント:FA杯で光るものを見せたスターリング、再び活躍できるか。

試合情報

スターティングイレブン

サカ以外は辛うじてスタメン  同じく満身創痍のスパーズ

ハイライト

試合内容・所感

手数の削減とショートカウンター

 どちらがより高いレベルのパフォーマンスを見せるか、というよりどちらがより不調な部分が顔を出さずに戦えるか、というようなモチベーションで始まったように思う今節。アーセナル的には直近のカップ戦からは想像できない程にスムーズにシュートシーンまで繋げられる攻撃をコンスタントに実行出来ていた。

 開始20分弱までのスパーズの敵陣タッチ数0というスタッツが一番端的にその状況を表しているだろう。比較的前に食いついてくる傾向のあるスパーズ前線を一人一人のタッチ数を削ってテンポよくいなし、最近加入したばかりのGKキンスキーや期待の若手ベリヴァルへのプレスもぶっ刺さり、高い位置から小気味良いショートカウンターを連発。セットプレーの試行回数も順調に稼げていた。

 若干気になったのが右CKがショートコーナーにこだわり過ぎだということと、ハヴァーツがクロスに対し入り込み過ぎていること。ごく稀にショートコーナーを織り交ぜることで奇襲になるので頻度を減らして欲しいというのと、ハヴァーツは前に入り過ぎてヘディングに上手く体重が乗っかっていない。ワンテンポ置いて、かつたまにニアでクロスに飛び込めばより相手と対等に競り合えるのかなと感じた。

 ともかくアーセナル優勢で進んだ序盤戦。それだけにスパーズ初のビッグチャンスのコーナーからソンがディフレクト込みで決めてきたのは非常に不運だった。しかしそこまで失点を引きずるような素振りもなく果敢に攻め続け、アーセナルの新ストライカーガブリエル・マガリャンイスがタイトなマークを搔い潜りこちらもコーナーからの得点で追い付いて見せる。

 そして前半終了間際にはトーマスの好守備からショートカウンター、中へのクロスをちらつかせつつトロサールが逆足で強烈なドライブシュートを叩き込み逆転。契約延長を断り去就が騒がれている彼だが、久々に職人気質な得点パターンを見せてくれた。

 前半は特に高い位置での競り合いを五分以上に出来たのが一番のポイント。トーマスやティンバーらがフィルター役として輝き、あまり手数をかけずスターリングやトロサールに預けることでスパーズの守備が整い切る前に攻めきれていた様子。失点しても前半の内に取り返す落ち着いた様子も見せた。

明らかなコンディション不良も凌ぎ切る

 攻守共に奮わないスパーズは中盤のビスマとサールを一挙両代え。マディソンとブレナンジョンソンという攻撃的なカードを思い切って投入してきた。

 後半の立ち上がりはアーセナルのプレスのズレが目立ち、スパーズにとって望ましいオープンな展開が続く。トーマス、ライスの連動まではいいのだが、浮いた逆サイドのSBに逃げられて素早く縦へ、そうなるとプレスバックしながらのマーク受け渡しになる為スピードに秀でたスパーズのアタッカー陣に少々手を焼いていた。

 60分にはスターリングとライスはお役御免。スターリングに関しては、やはりサカという紛うことなきワールドクラスの代役として見ると物足りない印象。FA杯に続きオンザボールてたまに怖さを見せるも、コンビネーションやクロスと言った点ではまだまだなのかなと。が、このままプレータイムを増やしていけば、少なくとも以前のように何も可能性を感じないということは無いだろう。

 両チーム目立ったシステム変更が無かった中、選手個々人に言及するとスケリーの安定感は凄まじかった。交代で入ったブレナンを筆頭に、読みの良さと背負いながら反転かファールかを巧みに使い分けポジトラに大きく貢献。彼がボールに触る度にホームサポーターが歓声を送っていたのがどれだけ愛されているかがわかる良いシーンだったし、後半の交代場面では会場を熱く盛り上げNLDとはなんたるかをピッチで1番表現していた。

 そして超個人的にはティアニーの出場に取り上げたい。こちらもFA杯でスクランブル的に出場を果たしたティアニーだが、今節はトロサールに代わり守備固め要員として登場。アルテタサッカーにハマらず苦しい時期を長く過ごしながらも、腐らずチームに留まり続けてくれた彼が出場という形で報われるのは本当に本当に嬉しい。目頭が熱くなった。

 感傷に浸るのもそこそこに、終盤は誰が見ても分かるレベルでの疲労感がチーム全体から漂っていた。踏ん張りがきかないという表現が正しいのか、収めても一旦ルーズになるとまず競り勝てないし、ゴール前に漕ぎ着けても最後のパス精度が合わずシュート企図に至れないシーンが本当に多かった。前半からインテンシティを高めた結果圧倒し逆転に成功できた訳だが、その影響をモロに食らった後半はガス欠っぷりが顕著であった。

 前半トピックでも触れたハヴァーツは、今は苦しい時期だという他ないだろう。ファーストプレッサーとロングボールの収め所として酷使した結果、決定機で活躍することが出来ないというアーセナルのCFあるあるに完全に陥っていた。彼の状況を考えると心苦しいが、出来れば1点でも決めてくれたら後半はもっと楽になった。

 こうして明らかな疲労と依然決めきれない問題が尾を引き、終了間際にスパーズの猛攻を受ける。しかし最終ラインを中心に自陣ゴール前では完全に集中、全てのクロスと楔をシャットアウトし、ロンドンのライバルを相手に史上5回目のシーズンダブルを決めることに成功した。

個人的MOTM:Gabriel Magalhães

 PL公式は大舞台で一切臆することなく存在感を放ち続けたスケリーをMOTM選出したため、私はガブリエルをチョイス。

 値千金の同点弾は勿論のこと、ソランケの存在感をほぼ完全に消すことに成功。またスパーズのビッグチャンスも、ゴール前でのギリギリの競り合いをものにし防いだ場面が何回もあった。エースストライカーとディフェンスリーダーの両タスクをこなしてみせたガブリエル、賞賛せずにはいられない。

試合総括・今後の展望

 特に前半はアーセナルがかなり優勢のまま進み、終盤は若干押され気味だったものの試合を通して地力の高さを見せた印象。

 そもそも今季のアーセナルは格下相手にポイントを落としまくり、主力の長期離脱、理不尽な退場という強烈なトリプルパンチのせいで不調というイメージが強いが、昨季の折り返し地点と同じ勝ち点、得失点差では上回っており、数値上はむしろ進化しているまである。

 カップ戦の流れを完全に断ち切り、今度こそシーズン後半に向け士気を上げるという意味ではこれ以上ない試合だったのではないだろうか。

 ただ、やはり後半のヘロヘロ感は気になるポイント。充分な休息はもちろんのこと、それこそ一昨季の反省を生かし省エネスタイルに切りかえた昨季の戦い方を今一度思い出し、高効率で勝利をもぎとっていきたい。

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