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日本代表マッチレビュー/vsSpain(W杯Qatar2022/GS第3節)

JPN 2-1 ESP
JPN:堂安 48'(伊東) 田中 51'(三笘)
ESP:モラタ 11'(アスピリクエタ)

https://www.sofascore.com/japan-spain/YTbsvVb

スターティングメンバー

 日本代表のスターティングメンバーは以下の通り。

GK 権田
DF 長友,谷口,吉田,板倉
MF/FW 田中,守田,久保,鎌田,伊東,前田

 コスタリカに敗れた前節からメンバーを5人変更。負傷により出場が危ぶまれた冨安、遠藤らはベンチに。またスタートから3バックで臨むことが予想される。

 対するスペイン代表のスターティングメンバーは以下の通り。

GK シモン
DF バルデ,トーレス,ロドリ,アスピリクエタ
MF/FW ペドリ,ブスケツ,ガビ,オルモ,モラタ,ウィリアムス

 決勝トーナメント進出がまだ確定していないスペインはガビ、ブスケツら主力を順当に選出。あくまで本気で勝ちに来ている面子。

試合展開(前半)

 グループステージ最終戦。日本が属するグループEは第2節終了時点で決勝トーナメント進出が確定した国は無く、熾烈な1、2位争いが行われる運びとなった。

 そんな中日本は最終戦にてスペインとぶつかることに。勝ち点状況的には他会場の勝敗関係なく勝利で決勝トーナメント進出、敗北でグループステージ敗退がそれぞれ決まるといったもの。ドローの場合はまあ色々と択があるわけだが…とにかく勝ちゃいいのである。

 さてそんなスペイン戦だが、日本は前節、前々節とは打って変わり頭から3バックで臨むことに。対してスペインは通常通り4-3-3の布陣で相まみえた。

7' 楔を差され折り返したところからブスケツのシュート
8' 高い位置でパスミスをかっさらったところから伊東のシュート
9' ショートコーナーからモラタのヘディング

 試合開始直後は久保がペドリを、鎌田がガビをそれぞれ背中で消しつつミドルサードで構えるナローな5-4-1ブロックを形成。前田も前プレをほとんど行わずGK、CBがボールを持つことを許容する戦い方をとった。ただペドリとガビの監視役は時間と共に田中守田のCHコンビ、谷口板倉のHVコンビと移りかわっていったように思う。

 そしてスペインは基本フォーメーション4-3-3の形を徹底して崩すことなく保持で得点を狙う強者の戦い方をするチーム。SBが高い位置を取るわけでもなくIHが降り日本のライン間を揺さぶり穴をあけることに終始していた印象。そしてそれが見事にはまったのがスペインの先制点であった。

12' アスピリクエタのピンポイントクロスにモラタが頭で合わせスペイン先制

 まさに思惑通り。鎌田ら日本の左サイドが揺さぶられプレッシャーをかけるのが遅れたことで穴が開いたボールサイドにてフリーでボールを持つことを許されたアスピリクエタがエリア内へクロスを供給、待ち構えていたモラタがヘディングで早々に先制点を記録した。不確定要素が多いカウンター時など所謂オープンな展開ならばまだしも、定位置で構えた状態から綺麗に崩されるという、守備時5バックで後ろに人数をかけた日本にとっては避けたい失点の形であった。

 その後もある程度割り切った撤退守備を行っているにもかかわらずオルモ、モラタの落とし等でロストすることなく繋がれてしまいどうにもハマらない日本。攻撃をシャットアウトできないのに後ろ重心という負の連鎖で、スペイン前線の降りる動きに中盤が振られライン間を締めきっていない状態が続いていたことはスペインの狙い通りの展開だっただろう。

23' またも楔を差されたところからモラタのシュート
36' 珍しく保持から波状攻撃を行い最終的に鎌田のシュート

 そんな日本劣勢の状況は少なくとも前半のうちには改善されなかったというのが正直な感想。スペインはIHの巧みな位置取り含め強かなポゼッションで日本を敵陣に押し込み続け反撃の糸口を作らせなかった。また日本の同サイド圧縮気味のプレスもサイドチェンジで簡単に無効化され時間経過と共に前衛守備が憚られるように日本に意識づけさせた。そういった点も含め流石は強豪国といった試合作りであった。

 また日本が5-4-1ブロックを組む意図として自陣ゴールに近い位置にて迎撃態勢を取りボールを奪い、その後は即興性が高い連携を交えつつ縦に早いロングカウンターを仕掛けワンチャンスをものにするといったものがあるとして、その第一段階となるボールの狩り所である最終ラインを組む吉田板倉谷口3人全員に前半のうちにイエローが提示されてしまったことはプランを根本から覆されるまさに痛恨の警告であっただろう。まさに八方塞がり、言わずもがな日本にとっては非常に厳しい前半の締めくくりとなった。

試合展開(後半)

長友out三笘in、久保out堂安in、アスピリクエタoutカルバハルin

 1点リードされ後がない日本。森安監督は今大会恒例のハーフタイム複数交代カード切りを今節も発動させる。

 この交代、というか今大会全体の風潮として、前半のうちは攻守ともにあまりリスキーなプレー選択をせず相手の様子を伺い、情報を集めたうえで後半各国チームの色を出しつつ勝負に出るといったようなものを観戦していて感じており、日本もその例に漏れない動きを見せたことの表れとなった交代策であったように思う。

 具体的には前半放置気味であったCBへの前プレをいよいよ敢行。そうして結果としてこれがぶっ刺さっさり、日本国民に希望をもたらす同点弾へとつながった。

48' 高い位置にハメにいった日本の守備から堂安の左足によるイコライザー

 前半はたまに高い位置へプレッシングを行っても逃げられていたところを交代で入った2人含め成功させた形。三笘→鎌田→前田と連続してプレスをかけ、スペインは右から左サイドへいなしつつ繋いでいたところを最後は伊東がヘディングの競り合いで奪取、受け取った堂安が左足一閃、物凄い弾速で放たれたシュートはウナイシモンの手を弾き飛ばしてゴールネットへと吸い込まれていった。

 そして少々面食らった印象のスペインに立て続けに攻勢をかけたのは再度日本であった。

51' 堂安の折り返しに三笘がギリギリ追いつき再度折り返し、ゴール前に飛び込んできた田中による逆転弾

 後方からのロングフィードを受け取った堂安がパウトーレスと正対、抜き切らずエリア内に送ったグラウンダーのボールに三笘が間に合いまたも折り返したところに田中が合わせてあっという間に逆転弾を記録した。

 ただ三笘が触る前にラインを割っているんじゃないかという事でVAR発動。検証動画では割っているようにも見えたが、結果わずかに残っていたという事で無事得点が認められることに。

57' モラタoutアセンシオin、ウィリアムスoutトーレスin
61' 前田out浅野in
63' 抜け出した浅野に連動した堂安が折り返すもシモンのセーブ
68' バルデoutアルバin、ガビoutファティin、鎌田out冨安inで伊東左WBへ

 後半開始早々に逆転を成し遂げた日本。そしてそれまで行っていた前プレは控えるようになりまたも前半の大局を占めた展開と似たような内容に。スペインが保持し日本はひたすら耐える戦い方に再度シフトチェンジすることとなった。

 この展開の中で日本にとって大きかった点は主に2つ。1つ目は交代で入った冨安、三笘がそれぞれファティとトーレスを完封していたことだろう。特に冨安はアルバとファティのフレッシュな2人が入ったスペイン左サイドを完全に殺す好守備を披露。この2人がサイドで質的優位を作らせない守備を出来ていたことで日本のブロックを少なくとも外側から破壊される心配がなかったことはバックライン中心に精神安定剤となり、サイドへカバーに行く頻度が少なく身体的にも消耗が抑えられた。

 2つ目はビハインドとなったスペインの攻撃が思ったより苛烈なものにならなかったことである。AbemaTV解説担当の本田選手も言っていたが耐える展開でもどこか楽観視できるようなものであり、保持で引き出すのを狙いとするスペインは良くも悪くも選手個々人のスキルで打開するシーンが少なかった為飛び道具的なものでブロック崩壊を起こされる心配が少なかった。これはスペインの選手陣に派手な武器を持った選手がいなかったと捉えるべきか、はたまた格下と見ていた日本に逆転され焦りから空回りしていたのか。どちらにせよ基本のブロックを崩しさえしなければそう易々とシュートを打たせなかった日本の対応は良かった。

70' 三笘のボール奪取から縦突破、浅野がダイレクトで合わせるも枠外
83' 三笘が獲得したセットプレーから板倉が頭で合わせる
86' 田中out遠藤in
89' アセンシオの左足から権田、続けてワンツーで抜け出したオルモの至近距離シュートも再度権田で難を逃れる
90+5' オルモのシュートも枠外

 大小さまざまな戦術が発達した現代サッカーにおいて根性論はあまり好きではないが、残り30分はとにかく気合で耐え忍ぶこととなった日本。前述のサイドで突破されず踏ん張る冨安や三笘ら、体を張ったプレーで間一髪のシーンから難を逃れる3CBなど各エリアで各々のタスクをこなそうと奮闘する面々。東京オリンピックで辛酸を舐めさせられたアセンシオの右斜め45度シュートなど脅威がありつつも、AT7分も何とか耐え、そして遂に試合終了のホイッスルが日本の勝利を告げることとなった。

さいごに

 同時刻開催のドイツvsコスタリカの試合推移と合わせて、一時は日本とコスタリカが決勝トーナメント進出国となっていた時間もあるほど混沌として盛り上がった最終節。

 だが最終的には日本が勝ち点6で単独首位、次いで勝ち点4で並んだドイツとスペインのうち総得点数で上回ったスペインがグループEからは決勝トーナメント出場国として選ばれることになった。希望的観測を除き、果たしてW杯開催前にどれだけの人がグループEを日本は首位通過すると予想できただろうか。それほどまでに予想だにしない、そして1ファンとして嬉しすぎるグループステージの幕引きとなった。

 また良かった選手としては、まずは堂安。ドイツ戦に続き同点弾を記録しチームにポジティブな風を吹き込んだ功績はとてつもなく大きかった。次に谷口だろうか。海外挑戦未経験という谷口だが試合を通して3CBの一角として大崩れすることなく対面のガビを捕まえに行くことが出来ていた。他にも三笘、冨安、田中等も活躍していた。

 悲願のベスト8まであと1勝。ベスト16のクロアチアに勝ちその夢を現実にして欲しいと願うばかりである。


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