【アーセナル】PremierLeague/第35節/vsNewcastle United(A)【ごとこの備忘録】
試合前展望
久々の勝利によるペースの持ち直しという"改善"と、甘い守備対応をはじめとする緩い時間帯の"課題"の両面が見えた前節チェルシー戦。このレベルのコンディションで望むのであれば勝ち点3ptは厳しいというのが今節のニューカッスル戦だ。
というのも、プレミアリーグを少しでも追っている人ならば周知の通り、ニューカッスルは今季アーセナルと同じくらいの快進撃を見せているチーム。オーナーが代わり大量の資金が投下されたという背景がありつつ、エディ・ハウの下かつての弱者のサッカーではなく、強者としてのサッカーを展開している。
そんな難しい試合になることが予想される今節は、ガブリエルが前節もも裏の負傷交代をした影響でダウト。キヴィオルの台頭がありつつも、サリバに続きガブリエルまでも出られないとなるとアーセナルにとっては大きな向かい風となってしまうことは明白である。
優勝争いのライバルシティは先日も、ハーランドがプレミア単一シーズン最多得点という快挙を成し遂げ、着実に勝ち点を積み上げている。自力優勝の可能性は最早無くモチベーション的にも難しい状況であることは百も承知だが、それでも目の前の試合を1つずつ勝つ大切さは選手達が一番よく分かっているはず。難敵ニューカッスル相手に前回対戦時よりも納得のいくプレーを見せ勝ちきって欲しい。
試合結果
スターティングメンバー
試合展開
アーセナルはジャカに匹敵する程の鉄人ガブリエルが何事も無かったようにスターティングイレブンに名を連ね、ジョルジーニョとキヴィオルも前節に続いての続投となった。個人的にニューカッスルのような引いて守ってくる相手に対し、持ち上がることが可能かつ高精度の中長距離パスによるブロックの一撃必殺崩壊を狙えるジョルジーニョの選出は納得のいくものである。
さて試合はニューカッスルが主導権を握る展開からスタート。セントジェームズパークの後押しもあってインテンシティの高い入りとなり、試合開始直後から幾度もアーセナルゴールに迫る。8分にVARによって取り消され難を逃れたキヴィオルのハンドがそのよい例だろう。アーセナル側としては直近の自信なさげなパフォーマンスが再度現れ劣勢を嫌でも感じる立ち上がりとなった。
しかし、前途多難な雰囲気をキャプテンがかき消す値千金の先制点を獲得する。
この得点から徐々にペースを取り戻していくアーセナル。ニューカッスルの2列目をスキップする楔をバックラインから供給出来るようになることでボックス付近でのプレー時間が増え、またニューカッスルの前傾プレスをいなす頻度が増えることで相手の攻勢を削ぐ効果も表れ始めてきた。
それでも攻守が入り乱れる激しい展開。前半は結局これ以上スコアは動かなかったが、これは両GKのシュートストップ祭りも大きな要因となった。
非常に面白いゲーム展開となったが、惜しむらくは主審がコントロールを失い始めいざこざがピッチの至る所で発生した事。一歩間違えれば大怪我ものの接触を受け続け、僅か1点リードの状況も含めグーナーとしては不安な前半の締めくくりとなった。
そんなお互いに攻め立て決定機が訪れる展開は後半も同様。またしても両GKの奮闘により試合内容とは対照的にスコアは静かで、いつどちらに得点がもたらされてもおかしくないまさにシーソーゲームであった。
アーセナルは前半に比べギマランイスの脇にジャカやジェズスが位置取りフリーで受けるシーンが増えたように思う。4-1-2-3フォーメーションの鉄則「アンカー脇の利用」をアルテタはHTで前半以上に徹底させるよう修正を施したように見えた。
またもう一つアルテタが施した策として、いつもより早い60分時点でティアニーの投入判断に至った事が挙げられる。結論から言うとこれは大成功。自陣/敵陣内での豊富な運動量をベースとし、そこから生み出されるプレッシングがかなりはまって即座に縦方向への攻撃を仕掛けられる非常に効果的な交代カードとなった。そして、そんなティアニーの献身的なパスカットから、依然ハイインテンシティな試合をアーセナル側に傾ける追加点を挙げることに成功する。
だが勢いに乗りたいアーセナルに水を差すように、ニューカッスルは前半に引き続き危険なプレーを連発。主審がカードを一切出さないのも相まってその傾向が時間と共に顕著になっていった。選手生命が脅かされるようなタックルに何とか耐えつつ、アウェイの空気に飲み込まれないように得点後は時計の針を進めることに専念するアーセナル。
80分にマルティネッリ、ウーデゴールに代わりトランジションが増えフィルター役になれるトーマスと、ベテランジョルジーニョを残しつつ大外ティアニーとのシナジーを加味してトロサールの交代。また86分にジェズス、サカに代わりエディとネルソンをそれぞれピッチへと送り出した。明確に活躍出来たシーンが少なかったサカが少々心配ではあるが…。
こうして、何とか逃げ切る事に成功したアーセナルが見事2-0勝利。今季僅か1敗しか喫していないセントジェームズパークで、第三者目線ではプレミアらしい白熱した試合を制してみせた。
ピックアップ選手
マーティン・ウーデゴール
試合開始当初の不穏な空気を払拭する先制点に始まり、ビルドアップ時の動き直し、ラストパスの発想力など彼の強みをここぞとばかりに発揮した。シーズンG15を挙げ、誇張抜きに完全無欠のAMFへと昇華したことを実感する一戦となった。
ジョルジーニョ
ジョルジーニョの経験豊富なプレーと振る舞いが大きな影響を与えた試合であった。インテンシティの高く難しい試合をピッチ上で冷静に統治する様には選手サポーター共に心身両面で助けられただろう。また守備面の各スタッツでも軒並み高得点を獲得。トーマスを最終盤まで温存するおまけまで付いてくる素晴らしい活躍であった。
アーロン・ラムズデール
個人的にアーセナル移籍後3本の指に入るのではないかというくらいの活躍。前後半を通して鬼のシュートストップを見せ、スコア的には大量失点も有り得た中アウェイで無失点を達成出来たのは間違いなくラムズデールのおかげである。
全体雑感・次戦に向けて
前節までの流れから今節もあまり芳しくない結果が各所から予想されていた中、複数得点とCSという結果を得られたこと、荒いプレーはともかくとしてニューカッスル自体かなり手強かったことを加味すると、少々上出来すぎる形で勝利を収めることが出来たのではないだろうか。
この勝利は我らがキャプテン、ウーデゴールの獅子奮迅の得点力や、冬の移籍市場で加入した3人が予想以上の安定感と実力を見せチームの追い風となってくれた事など、様々な要因が重なり合って生まれたものである。怪我人が増えつつある中、現存勢力の爆発というポジティブな要素が加わったことはチームにとって非常に大きい。
現在も優勝自体は厳しい状況ではあるが、今節の勝利を受け2位以上でのフィニッシュが確定。また実に15年振りとなる勝ち点80ptの獲得、マルティネッリとウーデゴールの2人がシーズンG15を達成など様々な記録が新たに打ち立てられたこともまた事実。あくまで自分達のパフォーマンスに照準を合わせて戦い続けた結果、チームとして今季大きく前進したことを改めて確認出来る後味の良い試合となっただろう。