【アーセナル】PremierLeague/第34節/vsChelsea(H)【ごとこの備忘録】
試合前展望
前節シティ戦での惨敗を受けてタイトルへ王手がかかっていた状況から一変、首位陥落+事実上の優勝争い脱落をしてしまったという現在のアーセナル。シティの取りこぼしによってはまだ優勝の可能性があるがかなり薄い線で、CLも確定した今どういったモチベーションで戦ってよいかという観点では非常に苦しい状況に置かれている。
だが苦しい状況なのはむしろチェルシーの方。今季は夏冬共に巨額の資金をかけ選手を獲得したのにもかかわらず、2回の監督交代に現れているようにチームとして低迷している。現在12位、降格圏までわずか9ptとアーセナルの暗黒期かそれ以下の結果を残すのではないかといった現状だ。
ただそういったチームが敗色濃厚と見られた大一番で劇的な勝利を収め、それを契機に復活劇が始まるというのはサッカーではよくある話。決して油断することなく、またこれ以上シティに勝ち点差を付けられず追随できるよう、選手達は今節もカップファイナルのような気持ちで戦って欲しい。
試合結果
スターティングメンバー
試合展開
直近4試合勝ち無し、どうにかシーズンをポジティブに締めたいアーセナルはマルティネッリに代わり好調トロサール、トーマスに代わりジョルジーニョを起用。また来季を見据えての選出か、ホールディングに代わりキヴィオルが右CBとして出場を果たす。
対するチェルシーは暫定監督ランパード下での初勝利を狙う。CFにはオーバメヤン、両WGにはそれぞれマドゥエケとスターリングを選択した。
ビッグ6同士の対戦では強度の高い試合になることが大方の予想ではあるが、立ち上がりとしてはボールが行き交うオープンなもの。互いに決定機を欠くが特にチェルシーはアーセナル陣内への侵入頻度が少なく、大味な入りとなった。
試合を落ち着かせ自分達の時間を確保した方が前半の主導権を握るといった状況の中、先にコントロールを出来たのはアーセナル。そこから保持→遅攻のフェーズが徐々に増加し、時間と共にシュートチャンスも創出。そして先制点を挙げることに成功する。
最近の悪い空気を吹き飛ばすようなキャプテンの先制打が炸裂してからは更にアーセナルペースが加速。
特に攻撃が顕著だったのが左サイド。収められるジェズスとマルティネッリに比べ縦の破壊力が劣る分テクニカルな動きが可能なトロサール、また今季左WGのサポート役として花開いたジャカがジンチェンコも含め密集する事でオーバーロードが発生。マドゥエケやカンテも対応するが1枚上手の剥がしを見せ、マークを代わる代わる受け渡してはフリーになった選手を生かす見事なユニット攻略を見せた。
逆に右サイドはサカとホワイトのシンプルな縦突破+サカのハーフスペースカットインを見せるも回数は少なめ。これはホールディングからキヴィオルに代わったものの左利きである為、仕方ないことではあるがビルドアップ貢献という点においては特段向上した部分がなかったからだろう。
概ね攻撃が上手くいっていたが、かといってアーセナルに隙がなかったかと言われるとそういう訳でもないのが心情的に難しいところ。低い位置でのパスミスを連発するのは前節から大幅に改善されておらず、チェルシーの不調も手伝って試合をコントロールしていた、という表現の方がどちらかと言えば正しいだろう。
それでも、先制点と同じ形のジャカ→ウーデゴールのホットライン、また得点からしばらく遠ざかっていたジェズスからそれぞれ追加点を生み出す。スコア推移的には完璧な前半の締めくくりであった。
あまり覇気の感じられないチェルシーから更なる追加点を狙いたい後半。全く存在感を発揮出来なかったオーバがグーナーとしては複雑な心境の途中交代、代わってハヴァーツがCFとしてベンチから出場の幕開けとなった。
期待通り前半同様の攻勢をかけ続けるアーセナルだがエネルギーが切れてきたか徐々にペースダウン。そこに合わせるように60分にはトロサールを下げフレッシュなマルティネッリを投入。疲れが見え始める時間帯に奥深くアタック出来るマルティネッリはかなり脅威となっていて、攻守ともに陰りが見えてきたアーセナルに献身性を補強する交代となった。
だがその交代から時間を空けず、チェルシーが反撃の狼煙となる1点目を挙げてしまう。
これは本当に要らない失点。最近はビルドアップでシーズン序盤ほどの活躍が出来ていなかったジンチェンコが、彼のアキレス腱となる守備対応を突かれた形で甘いプレーから失点を喫してしまった。また絶不調中のチェルシーに奪われた得点でもあり、チームとして試合を殺しきれなかったという反省点である。
ただその後チェルシーが息を吹き返し猛攻をかけてきたかと言われるとそういう訳ではなかった。何と言うかもっさりした展開で、両者このまま終わっても良いかのような緩い雰囲気が何処か漂っており、試合の立ち上がりとはまた違った意味でビッグ6同士の対決とは思えないものであった。
70分にはネルソンとティアニーを送り込み、負荷がかかり何度か痛がっていたガブリエルに代わり85分にホールディングを投入。前半から垣間見えていたアーセナルのロストから少しづつではあるがチェルシーも押し込む時間が増えイーブンな終盤戦に。
ただ結局試合はそのままクローズ。クリーンシートこそ達成出来なかったものの複数得点で快勝、シーズン終了までまだ望みを繋げる勝利を収めた。
ピックアップ選手
ヤコブ・キヴィオル
ビッグロンドンダービーという大舞台でPL初スタメン出場を果たしたキヴィオル。左利きながら右CBでのスタートとなったがそつなく高水準のプレーをこなした印象。積極的に潰しに行く守備対応が特に上出来で、フィジカル面ではまだPLレベルにないと思われるシーンこそ少しあったものの対空/地でミスなく乗り切った。
マーティン・ウーデゴール
中々勝てず優勝から大きく遠ざかり、芳しくないチーム状況をG2という結果で盛り返す旗手となってくれた我らがキャプテン。チーム全体にプレー/メンタル両面で活気を注入している姿がピッチ上からひしひしと伝わり、ラストパスの精度などは流石の一言であった。
全体雑感・次戦に向けて
現在のアーセナルなら不調チェルシーにももしかしたらがあると思われていた中でここはきっちりと勝ちきれた。まずここはしっかりと選手達を労いたい所である。ずるずるとコケ続ける事無くなんとか踏ん張り起死回生となる勝利を挙げる事が出来た。
また今節はキヴィオル、ジョルジーニョ、トロサールをスタメンとして出場させ、核となる選手達を下げある程度ターンオーバーしての快勝という過程も評価するべき対象である。
更に今節のジェズスの得点を受け、アーセナルは今季唯一の4選手(マルティネッリ,ウーデゴール,サカ,ジェズス)が各G10をマークという名誉ある記録を達成。シティ等と比べチーム全体で何処からでも得点を狙えるという強みが実際に数字となって現れた事、ここもアルテタの目指すチーム像とマッチしており非常に嬉しいポイントだ。
さて次節は難敵ニューカッスル戦。前回対戦時は堅牢な守備に苦戦しドローと課題が残る試合であった。エディ・ハウの下現在3位に付けCL出場を現実的な目標としているニューカッスルと今度はアウェイで戦うことになりこれまた非常に難しいゲームになる事が予想される。チェルシー戦の勝利を無駄にしない為にも、苦しい展開の中から少ないチャンスを掴み勝ち点3ptを積み上げて欲しい。