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「”辛勝”が指し示す現状」vs.Shakhtar(H)[1-0]【24/25ChampionsLeague 第3節】


試合前展望・キーポイント

 失意の敗北を喫したボーンマス戦から中3日、選手たちの傷や疲労も癒えない内にCLも第3節、相手はかつてムドリクの件で一悶着のあったシャフタール戦だ。

 リーグでの悔しさはリーグでしか晴らせないというのが正直なところ。しかしだからと言ってこの試合を落としていい理由にはならないのもまた事実。内容を伴った勝利を持ち帰り、ホームでのリバプール戦を見据えたゲーム運びをして欲しい。

キーポイント:複数得点×無失点でチームの士気を高められるか。

試合情報

スターティングイレブン

サカ、ティンバーは間に合わず ギリギリのラインナップ

ハイライト

試合内容・所感

”アンカー脇の利用”で好調な滑り出し

 ウーデゴールは勿論のこと、サカ、ティンバーがまだ間に合わず引き続き飛車角落ちの状態で臨むことになったアーセナル。しかし立ち上がりのアーセナルは先日の敗北が嘘のようにシャフタールを強襲する。

 特に主力が欠けてからあまり見る事の無かった、コンビネーションによる滑らかな前進と、高い位置でのプレスを頻繁に成功。CB→SBと同サイド圧縮する追い込み漁に加えCH2人にはライス、トーマスがぴったりマークで完璧に嵌めこむ。そこからショートカウンターを発動、コーナーも立て続けに数本獲得し、決定機をいくつも演出していく。

 ビルドアップのポイントとなったのが「アンカー脇の利用」。SofaScoreやUEFA公式ではシャフタールのフォーメーションは4-2-3-1と表記されていたためスターティングイレブンの図示もそれに準じたが、アーセナルの攻撃時には右CHボンダレンコがOMFスダコフと殆ど横並び、つまり左CHクリスキヴが疑似アンカーになる4-3-3のような形。

 この逆トライアングルに対し、低い位置からのビルドアップで、同サイドのIHを釣り出してから中央へ折り返し、アンカー脇スペースを利用した持ち運びという形を狙い、右はハヴァーツ、左はカラフィオーリとライスが分業する形でチームの前進に大きく貢献していた。いつもよりハヴァーツが右ハーフスペースに落ち気味だったのも、IHが空けたスペース=アンカー脇が肝になると感じ取ったからだろう。

 またこのスペースを生み利用する上でトーマスの存在は欠かせない。いまやアーセナルに来て以来最高水準のパフォーマンスとまで評価する人がいる程に仕上がっているトーマス。相手の重心をよく見たキレキレのボール捌きで、小気味良いパスワークの中心になっていた。

 そして29分には流れの中から先制点をようやく決める。未だに決定機を易々と逃す事はあるものの、折り返しからマルティネッリが放ったシュートは運よくGKリズコフにディフレクトし、前半の内にリードを確立する。

強度と連動を維持出来ないハイプレス

 序盤30分程は前述のようなペースを保ち終始優勢に振舞うことが出来ていたが、シャフタールも徐々にボールを握る時間を増やしていく。その大きな要因となったのが、長い球を織り交ぜられ前プレを嵌めきれずスダコフらオンザボールに長けたアタッカーが仕掛けるシーンが増えていった事。

  これはやはりウーデゴールの不在によるものが大きいかなと思う。時間が進み相手がプレスに慣れてきても臨機応変に強度と圧縮方向を指示できるキャプテンが居ない為、スタミナでカバーしきれる前半はまだしも、後半になると連動しきれずちょっとしたズレから運ばれてしまう。

 そして、もう退場者は出したくないというアルテタの強い思いの元イエローの出ていたホワイトが下がったハーフタイム明け。後半に入ってからは前プレのズレを発端としたちぐはぐさがより顕著になっていく。

 一番綺麗に突破されたのは、ジェズスに代わったスターリングのプレスに対し、張っていたスダコフへ右SBトーマスが前ズレ、後方をライスがカバーした為に空いた中央へ通され、ライスが瞬間1vs2になり奪いに行くか迷った隙に裏へスルーパスを通されたシーン。各々が最善と思っての行動が裏目に出たこの空回り感、今のアーセナルを表していると言っても過言ではない。

色んな、「いつものアーセナル」

 こうして相手にも反撃の糸口を作られ、逆にこちらはマルティネッリ、トロサールら前線の決定力不足に喘いでる間に、試合はいつしか五分五分の展開へと持ち込まれる。

 まずはあまりに痛すぎるカラフィオーリの負傷交代。アンカーポジに入りプレスをいなそうとしたところで奪われピンチを招いたシーンで右膝を負傷。これも停滞するアーセナルの空気を変えようと思っての行動だと考えると、つくづく付いていないなと感じる。アーセナル名物、「同ポジションにおける怪我人一極集中」は不本意ながら今季も健在だ。

 また交代で入ったメリーノのクロスが相手の手に当たり、ようやく追加点のチャンスを獲得した77分のPKは、キッカーを務めたトロサールのシュートがリズコフのきっちり残しておいた足に弾かれ痛恨のPK失敗となってしまう。

 逆に終了間際にはペドリーニョが強烈無回転ミドルを放ってくるも、これはラヤの横っ飛び神セーブで難を逃れる。けっかてきに追い付かれることはなかったものの、最早どちらがホームチームなのか、どちらがリードしているチームなのか分からない程に押されていた印象だった。

 個人的にまだ救いだったのは途中交代メリーノとスケリーの適応っぷり。特にスケリーは投入直後から積極的なCH化でボールを貰いに行く意欲を見せ、戦局を一手で変えるような劇的なプレーこそは無かったものの、チームでも特に難しいタスクを任されるアーセナルのサイドバックを難なくこなせていた。こうしてチームのピンチに優秀な若手が台頭してくるのもまた、アーセナルらしいなと思う。

個人的MOTM:Thomas Party

 先日の試合でも個人的MOTMに挙げたような気もするが、今節のトーマスは本当に素晴らしかった。終盤は疲労の溜まる右SBで交代も挟まった相手左WGへの対応に苦しむシーンもあったが、オンザボールの精度とプレス耐性は本当にお見事。ウーデゴールの居ない今のアーセナルは間違いなくこの男が心臓であると思わされるパフォーマンスだった。

試合総括・今後の展望

 前半はかなり押せ押せにも関わらず、後半は未だCL未勝利のシャフタールをホームに迎えながら互角の戦いを演じることに。カラフィオーリも負傷退場し、ゴールも正直運良く決まったようなものと、派手な勝利で景気づけたかった事を考えるとかなり消化不良感を感じてしまう試合となった。

 こんなチーム状況で次節はシーズンでも屈指の山場リバプール戦。4節ノッティンガムフォレスト戦では衝撃の敗北を喫しながらも、それ以外ではPL全勝中とかなりホットなスロットが率いるリバプールを相手に、引き続きキャプテン不在、左SB全滅と主力に怪我人が多発、それに伴い攻守共に停滞している今のアーセナルがどこまでやれるのか。最早怖いもの見たさのような部分もあるが、どんなに泥臭くても必死に食らいつき勝ち点3ptを獲得したい。

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