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【This is "PremierLeague"!!】Arsenalマッチレビュー@PL第18節vsLiverpool(A)/23.12.24



試合前トピックス

・CLベスト16抽選会、アーセナルはポルトとの対戦


マッチレポート

試合結果

LIV 1-1 ARS
4' ガブリエル(ウーデゴール)
29' サラー(アーノルド)

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

アンフィールドへ成長したアーセナルのお目見え

 先に述べておこう。私はアーセナルファンだが、アーセナルとリバプール両者のファン以外の方の視点であっても、今節は間違いなく今季のプレミアリーグ史上一番面白い試合だったと断言出来る。アルテタとクロップがチームに落とし込んできた哲学と戦い方、プレミアらしい白熱したフィジカルバトルとトランジション合戦、双方互いに譲らぬ均衡したシーソーゲーム。見所満載のこの試合を見ていない人が居たら是非ともフルで観て欲しい。

 グーナー目線に戻ってこの試合への臨み方から触れていく。2012年以来アンフィールドでの勝利がないという程、アウェイのリバプール戦はアーセナルにとって最も鬼門と言える試合の内の一つ。そして例に漏れずキーマンのトーマス、プレシーズンとシーズン初戦で大活躍のティンバーが不在と怪我人も重なっている現状。唯一救いであったのがリバプールにもアーセナルキラーことジョタと今季加入のマクアリスターという主力の不在があった事。それでも共に多少牙を抜かれている中概ねベストメンバーのスタメンとなった。

 早速だが、立ち上がりのアーセナルは感動すら覚える程に自信と連動した動きに満ち溢れていた。アンフィールドの圧に屈する事なくウーデゴールの大きな身振り手振りによる主導の元高い位置からのプレスを敢行し、組織だった守備に当てられたリバプールはあたふた。遠藤の列落ち等でビルドアップの安定化を図るも自陣内でパスカットされショートカウンターを何度か食らい、その度に後ろの踏ん張りでなんとか持ち堪えるといった展開でまずは出鼻を挫く事が出来たといって良いだろう。

 序盤の守備隊形で一定の手応えを感じたアーセナルは、攻撃局面でも自分達のサッカーを展開する。遅攻を悠長にやらせてくれるような相手では勿論ない分、特に奪ってからのカウンター展開に尽力。数年前までは半ば投げやりで受け手の準備が出来ていないまま雑な前進パスを入れ却ってカウンターを食らっていたようなチームが、冷静に繋ぎつつ生まれた時間の中で個々が立ち位置と動き出すタイミングを図り手薄なサイドから侵入し突破、決定機までの流れを安定して作り出すことが出来ていた。極力手放さずに伺いキーパスを通す様はかつてのアーセナルから大きく成長した事を感じさせる出来であった。

 そんな上出来すぎる出だしを決定づけたのが開始早々の先制点。4分、高い位置で獲得したウーデゴールのFKにラインをしっかり見極めギリギリ抜け出したガブリエルがどフリーでヘディング弾を叩き込む。流れの中ではないが、偶発的なチャンスによって何とか食らいつくのではなく自分達で手繰り寄せたチャンスをきっちりものにしたスタートダッシュとなった。

 迫力ある攻撃の核を担っていたのはマルティネッリとウーデゴール。マルティネッリに関しては純粋な個の力を大外で発揮というシンプルなものでいいとして、特筆すべきはウーデゴールである。彼はいつも以上に低い位置に顔を出してはリバプールのファーストプレス突破に尽力し、高い位置では積極的に両サイドと絡みバイタルエリアでボールを持つ事もしばしば。ここで何人かが同時に裏抜けするような形が見られると更にゴールに近づいたような気もするが、ともかく彼自身の存在感は目を見張るものであった。

 だがリバプールも同様にこの強度高い試合において間違いなく主役である。アーセナルペースだった序盤を乗り切り試合が落ち着くと、ホームサポーターの重厚な声援を背に受け遅攻で前進、特に継続してアーセナル陣内へクロスを送り込んでは対角のディアスやサラーが深い位置まで侵入する形を主軸にゴールを狙う。しかし先に言っておくが正直ディアスやガクポはグーナー目線で見るとホワイト-サリバ-ガブリエルの防波堤を超えることが出来ずあまり脅威ではなかった。

 そう、右WGのスーパースター、サラーを除いて。29分、ボールを持ったアーノルドの高精度フィードに抜け出したサラーがライスやガブリエルのケアが及ぶ前に再三不安視されていたジンチェンコとの1vs1からカットインシュート、ボールはラヤのセーブも届かず強烈にゴールネットに突き刺さった。ゴールに絡む活躍は勿論危険なプレーもほとんどなくクリーンにただひたすらに技術力の高いサラー、そして大砲「アーノルドの右足」が放たれる前に咎めきれなかったアーセナルの僅かな歪みを痛感するイコライザーである。

 こうして双方に得点が生まれ試合がどちらにでも傾くきっかけとなり得たのにも関わらず、依然均衡は崩れずハイレベルなインテンシティとテクニックのぶつかり合いは続く。試合も中盤に差し掛かると両者のミドルサードにおけるポゼッションが安定し、そこからは縦に素早くダイナミックなリバプールとショートパスと一瞬の煌めきで打開を狙うアーセナルという両者の持ち味を存分に生かしたシーソーゲームが前半を通して展開された。

 繰り返しにはなるが、例年何もさせてもらえずひたすらに苦しめられ続けてきたアンフィールドで成長したアーセナルが互角以上に戦えているという事実。これまでの歩みを一緒に見てきた1グーナーとして、勝敗の行く末以上に感慨深いものがあった。

最高峰のトランジション合戦を締める両CBコンビ

 エンドが変わって後半。前半負傷退場のツィミカス以外そのままのメンバーでハーフタイムを明ける。

 後半戦の一番の注目ポイントとなったのは両CBコンビの圧倒的堅守である。リバプールはコナテとファンダイク、アーセナルはサリバとガブリエルが前半以上に攻撃の芽を摘み続けては即座に攻撃に移行出来るようなクリーンな守備に励む。アーセナル目線で見ると特にコナテにはマルティネッリのドリブルやジェズスのポストが潰され続けこちらの勢いを削がれたのがかなり痛かった。ただその分サリバとガブリエルの冷静さとアグレッシブさを兼ね備えた守備も彼ら2人に引けを取らない完成度で、最後の砦として踏ん張り続けた。

 それよりもっと致命的だったのが後半立ち上がりの連続自滅。ボールを持つもゴールが奪えない前半の展開に対し更なる違いを生み出そうとした結果からか自陣でマルティネッリ、ウーデゴール、ジンチェンコらが立て続けにロストしショートカウンターを食らう羽目に。

 このミスからまるで水を得た魚のようにオープンプレーを展開したリバプールに引っ張られるように、約30分以上の間プレミアらしさの最高峰とも呼べる息つく暇もないトランジション合戦が繰り広げられる。先程触れたCBコンビが最終的にはシャットダウンし続けるも、選手達はスペースへ走りこんだかと思えば次の瞬間にはこちらのスペースを使われないように走りこむの繰り返し。

 一番決定的だったのがハイライトにもある70分頃のライスvsリバプールの選手4人という地獄みたいなロングカウンター。CK時ウーデゴールとジンチェンコのもつれからロストし後ろにライスしかいない中リバプールの選手が猛烈なスピードで襲い掛かる。ボールホルダーのサラーに対しライスから見て右に走るヌニェスへのパスコースを切るように並走してきたサリバのプレスバック、ギリギリまでクロスステップでディレイをかけアーノルドのシュートコースにも何とか入り急がせたライス、飛び出しを我慢し限界までコースを絞ったラヤ。彼らの瞬間の技術と気合がゴールを確信したリバプールの逆転ピンチを防いだ。

 ライスについて更に触れておくと、もう彼のピッチに与える影響度は最早尋常ではない。彼が中央の低い位置に君臨している絶大な安心感は、ストロークの長い手足を駆使したタイミングを決して見誤らない守備とそこから攻撃へ反転する際のパスと持ち運びから生まれるものであろう。

 時系列は前後するが、あまりにインテンシティの高い展開なせいか、はたまた前半から水を撒き過ぎな印象が強かったアンフィールドの芝のせいか、67分ディアスが負傷しヌニェスの投入によりリバプールのフロント3が左からヌニェス-サラー-エリオットの並びとフレッシュさをある程度取り戻す。ただこちらとしてはジンチェンコとのマッチアップが怖かった分サラーが中央に移ってくれたのはありがたかったかもしれない。

 そしてこちらもフィニッシュ精度の低下と疲労が見られたマルティネッリに代わりトロサール、次いで77分にはジェズスをエディに代える。最近のエンケティアには怠惰プレスで悪い印象しか持っていなかったが、この試合はCBからGKまで精力的に追い回し良い守備貢献が見られた。思い返すと以前のエンケティアはこういった献身的プレスの中から生まれた相手のミスを拾ってのゴールも定期的に生まれていたような記憶があるので、これからも継続して行えるのならばサブストライカーとしても文句はない。

 なんとか猛攻を凌いでいると、80分頃には流石のリバプールも疲労で攻撃の手を緩めざるを得ず、アーセナルの遅攻の時間が復活する。ここまでどちらかというと防戦一方であったが、幅を取ってはカットバックとやり直しを織り交ぜリバプールのボックス内へ入っていくことが出来るように。だがサカの決定機やハヴァーツのPK疑惑のシーン等チャンスは作っているが、いかんせん最後の精度が合わず決まらない。

 こうして両者チャンスが多数訪れるも互いの守備陣の奮闘によりゴールマウスは固く、オープンな展開でも要所要所が締まった後半で前半からスコアが伸びることはなく試合終了。大の苦手アンフィールドの地で、優勝へ向け着実に積み上げる勝ち点1ptを持ち帰ることに成功した。


ゲーム総評

 この試合が終わってみての感想としては、勝てなかったor負けててもおかしくなかったという勝敗面への悔しさ以上に、ハイレベルなフットボールゲームを見れた事への満足度があまりにも高すぎる、これぞプレミアリーグという試合を見れた充実感のようなものをひしひしと感じている。しつこいようだがこれもひとえに両CB陣が率いる堅牢な守備組織が締まった試合展開の基盤を形作ってくれていたからだろう。

 それと同時に、現在1位のアーセナルと2位リバプールの戦いというまさに天王山と呼べる対戦カードで、その肩書に見合ったハイレベルな内容を出せた事もとても誇らしい。なんたって一昔前のアーセナルはアンフィールドでなす術もなくちんちんにされていたのだから。それと比べると選手や落とし込まれた戦術の質が格段に向上し、チーム内に確固たる信頼関係が結ばれている。そういった要素諸々が複雑に絡み合ってのこの試合だと私は確信しているし、これからもこういった試合を見れそうな事への期待感も大きい。

 私はアーセナルが勝てなかった試合は例外なく気分が上がる事はこれまでなかったが、この試合はその中でも初めての例外となった。勿論勝ち点3ptを得るに越したことはないが、結果以上に良いものを見れたという満足感で満たされている。アーセナル、そしてリバプールにも、素晴らしいゲームを見せてくれてありがとうという気持ちで胸がいっぱいだ。

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