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令和のトレモロ &ヴィブラート活用術!最新の現場で求められている音作りを徹底解説

今、 音楽制作の最前線ではトレモロ/ヴィブラートがブーム!

ここ数年、音楽制作の現場でトレモロやヴィブラートを使ったアレンジを提案される機会が急増しています。
実際、トレモロ・ブームが来ているように感じます。
私自身、他のギタリストよりもトレモロを多用するタイプですが、最近では私が提案する前にトレモロが話題に上がることが多くなり、喜ばしい限りです。
2010年代中頃までは、トレモロといえば「The Bends」に代表されるようなトリッキーでエフェクト重視のアプローチが主流でした。

Radiohead『the bends』(1995年)
「Planet Telex」や「Bones」等で聴ける浮遊感のあるギターサウンドは
トレモロのエフェクターにより作り出される揺らぎが印象的なギター名盤のひとつ

しかし、徐々に音楽業界の好みが変わり、エフェクティヴでトリッキーなUKギター・ロック的アプローチから、シェリル・クロウやエイミー・マンなど米カントリーやフォークがベースにあるシンガー・ソングライターの作品で取り入れられているような、歌に寄り添うアプローチの求められる割合が少しずつ増えていきました。
そしてトレモロ・ブームのきっかけとなったのが、日本の人気ロックバンドback numberの大ブレイクだと私は考えています。

彼らの成功とともに、サポート・ギタリストの藤田顕さんのトレモロを使ったサウンドが注目され、トレモロが再評価されるようになりました。そんな藤田さんを代表するエフェクターと言えば、ディメーター “Tremulator” ではないでしょうか。

DEMETER ( デメーター ) / TRM-1 Tremulator


歌の裏側を繊細なアルペジオなどで支える時に掛けられている“Tremulator” の心地よいサウンドは、ギタリストたちの間で大きな影響を与えました。

トレモロを買うべきか、 ヴィブラートを買うべきか?

例えばフェンダー製ギター・アンプ “Twin Reverb" は、 トレモロ効果が得られるチャンネルが「ヴィブラート」と名付けられています。
また、 ストラトキャスターに搭載されたピッチを上下させるアームは「トレモロアーム」と命名されたことで、多くのギタリストたちがトレモロとヴィブラートを「何となく違うけど、何となく似ている効果」 という認識してしまってる方も多いかと思います(しかも、これらの機材と同じ効果サウンドが得られるエフェクターとして、原理的にはトレモロでも敢えてそのサウンドを「ヴィブラート」 と称している場合もある)。
トレモロとヴィブラートの混同には、このような背景があると考えられますが、「自分が作りたい音を鳴らすためには、トレモロを買うべきか、 ヴィブラートを買うべきか?」 という選択が必要が生じた際、両者の違いをきちんと知っておくことは重要になります。
そこで、まずはエフェクターにおけるトレモロとヴィブラートのそれぞれの効果を深掘りしてみましょう。

トレモロ・エフェクト

トレモロの定義は実に簡潔で、音量を周期的に上げ下げすることで得られる音楽表現のことを指します。
ギターの演奏でトレモロを表現するには、先述した通り、ひとつの音を細かいピッキングで繰り返し鳴らすことになります。
これを電気的に再現するために作られたエフェクターがトレモロ・マシンであり、その仕組みを簡単に説明すると、入力信号の振幅 (音圧レベル)
を電気的に増大/減少させ、その信号を出力しています。 つまり、内部にヴォリュームを搭載し、それを単純に上げ下げしているようなものになります。
その時、ヴォリュームを動かす周期(速さ) が “RATE” であり、上げ下げする幅を “DEPTH” というパラメーターで設定します。

ここまでは比較的わかりやすいのですが、 ではトレモロ・マシンに用意されている “MODE" (あるいは“WAVE” など) というパラメーターは何を示すのか少々わかりずらいかと思います。
簡単に言うとこれはヴォリュームの「動かし方」を意味しています。
例えば、 ヴォリュームを最小から最大まで均一のスピードで回して元に戻すと、一定の速さで音が大きくなったり小さくなったりします。

次に、 止まっている車をゆっくりと走らせ始め、そして次の赤信号で止めるかのように、 まずはゆっくりと最小からヴォリュームを動かし始め、途中は加速し、最大に到達する手前でブレーキをかけるように動かすと、人間の耳には音量の上がり下がりが自然に聴こえます。
一方で、 ヴォリュームが最小 or 最大となるように極端な動かし方とすると、 まるでスイッチでオン/オフしているかのように、 音が鳴ったり消えたりするように聴こえます。
これらを設定するつまみが “MODE” となります。
これら「“MODE”(=ヴォリュームの動かし方)」の差異は、通常のトレモロ効果としてはそれほど面白い演出とはなりませんが、例えばパンニング機能と組み合わせれば、音の左右への飛び方の違いとしてユニークな演出が可能となます。

ヴィブラート・エフェクト

ヴィブラートは、先に説明したように定義自体が少々曖昧ではありますが、楽器の奏法、あるいはエフェクターとしてヴィブラート・マシンを語る際は、ピッチを周期的に変化させる奏法(あるいはその効果を生み出すマシン)と考えて良いと思います。

ただし、電気的にヴィブラート奏法を再現しようとした時、原音そのもののピッチを細かく揺らせば純粋なヴィブラート効果が得られますが、 ドライ音とヴィブラート音をミックスするとコーラスに近い独特の効果を得られたり、あるいはピッチだけでなく、同時にヴォリュームやフィルターにもゆらぎを加えれば、さらに個性的なモジュレーション・サウンドを作り出すことが可能です。

そのため、ヴィブラートという単機能をエフェクター化したモデルはそれほど多くなく、多くのモデルでは他の機能も組み合わせて搭載することで、「ヴィブラート機能+α」、もしくは「モジュレーション系エフェクターの一部としてヴィブラートを搭載」 といった場合が多いようです(ちなみにトレモロもモジュレーション系エフェクトのひとつ)。

このような背景があるため、 トレモロ・マシンと違ってヴィブラート・マシンの仕組みは多種多様ですが、その効果に的を絞った専用マシンの中身は基本的にはシンプルです。
入力信号のピッチ(周波数)を電気的に上昇/下降させ、その信号を出力しているだけで、上昇/下降の周期(速さ)が“RATE"上下幅が“DEPTH” となる。 なお、 特殊な使い方を除けば、 ヴィブラートは音全体にかけるのではなく、ロング・トーンの終わり際にかけるなど一部分のみにかけることが多いです。
そのため、ペダルを踏んでからヴィブラートが効き始めるまでの時間をコントロールするパラメーター (BOSS“VB-2W” であれば “RISETIME") などが搭載されているモデルもあります。
このような、 トレモロ/ヴィブラート・マシンの効果と特徴を理解して、 使うエフェクターをチョイスしてみましょう。

令和のトレモロ &ヴィブラート活用術

トレモロやヴィブラートと聞けば、 ギタリストの多くは昔ながらのシンプルな響きを思い浮かべると思います。
この2つの効果は、 音量やピッチを揺らして音色の質感に変化を与えることで多くの名演に彩を与えてきました。
しかし、近年は一風変わった視点やモジュラー・シンセサイザーの手法を取り込むことで、より複雑でクリエイティヴなサウンドを作れるモデルが増えています。

続きの記事では「令和のトレモロ &ヴィブラート活用術」と称して、 海外でのトレンドやシンセ的なテクニックを取り入れた最新のモジュレーション・サウンドについて紹介したいと思います!

手持ちのペダルでも簡単に再現可能なテクニックから、 強烈な個性を備えたモデルの紹介まで、 次世代のモジュレーション事情について掘り下げていきたいと思います。
なお、10部販売したら値上げさせていただきます。

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