「名手から学ぶ!ブースターでギターサウンドを劇的に改善する方法」
こんにちは!
GT SOUND LABのTAKUYAです!!
皆さんはブースター・ペダルの役割といえば、どういった用途を思い浮かべますか?
ブースト=増大という名の通り、例えば曲中のソロを弾く際に一時的に音量をもち上げるというのが一般的な使い方かと思います。
もちろんそれも間違いではないのですが、実は多くの名手と言われるギタリスト達は音量を上げるという目的ではなく、常時ONの掛けっぱなしの状態で使ってるケースが多いことをご存知でしたでしょうか?
今回の記事では彼らがブースターを音量をもち上げる目的ではなく、自身のトーンを生み出すための「隠し味」としてどのように使用していたのかについて解説したいと思います。
ブースターの役割
最初にブースターの基本的な役割を再確認しておきましょう。
1.音量を増幅して出力レベルを上げる
「Boost」の「増やす・押し上げる」という意味の通り、ギターの信号を大きく増幅するのがブースターの主な機能です。
構造的には増幅器としてのプリ・アンプが内蔵されていると考えればよいです。「プリ・アンプ」と言うと、アンプをイメージする人がいるかもしれないですが、歪み系エフェクターにも同種の増幅回路が使われていることが多いです。とはいえ、ブースターの目的は本体で歪みを作ることではない(中には歪みを作るモデルもある)が、あくまで「ギター出力を上げてアンプの歪みを補う」ことです。
例えば、ギター側のヴォリュームを絞っている時よりも10まで上げた時の方が、弱いピッキングより強いピッキングの方が深く歪むことは、誰もが経験的に理解しているはずです。ブースターもそれと理屈は同じです。
「ギターのヴォリュームを仮に倍の20まで上げられればもっと歪むのでは?」という考え方を具現化したエフェクターなのです。
よって「歪みを増やす」という意味では、同じ目的で使用されるオーヴァードライヴと比べると、アプローチの仕方が全く異なるし、もちろん回路設計も違います。そしてブースターの最大の特徴は、他のエフェクターよりも増幅量が極めて大きいことです。
2.音色やレスポンスを変える
「ギター・ヴォリュームを(例えば)20まで上げる」ためのブースターは、出力だけを上げることが目的です。
とはいえ、ブースターを必要とする人の中には、「もっと音が良くなるならトーンが多少変わってもいい」という考え方を持つ人がいるかもしれません。そうした需要に応えるためブースターには、「突き抜けるようなサウンド」にするため高域を中心にブーストする“トレブル・ブースター”、“太いミドル”を実現するために中域中心にブーストする“ミッド・ブースター”というモデルが存在します。それに対して、“クリーン・ブースター”は、単に「それ自体で歪みを発生しない」だけではなく、音色もあまり変えずに、できるだけ原音のニュアンスを保ったまま増幅するのが目的です。
それゆえ、「原音の音色もレスポンスも変えずにレベルだけ上げる」と謳っている機種が多いです。逆に「僅かに色付けして良い音にしよう」という機種、「真空管風のテイスト」などへと音質を加工することを狙った機種も少なくないです。またトーン・コントローラー類を搭載して音色調整や音作りの幅を広げることを狙ったモデルも存在します。
3.インピーダンスを下げる
ギターの出力信号は「ハイ・インピーダンス」と言われます。
これは電圧が低く、ケーブルや電気回路の中で電気抵抗を受けやすい状態を示しています。中でもパッシヴPU搭載のギター出力は、特にインピーダンスが高いです。それに対して、ブースターは入力された信号をアンプで増幅するため、出力がロー・インピーダンス信号に変化するという特性を持ちます。「ロー・インピーダンス」とは、交流回路での抵抗値が低い電気信号のことです。具体的には、長いシールドを通しても音質が劣化しにくく、ノイズにも強い性質を持ちます。音質も音量もほとんど変えずに信号をロー・インピーダンスに変換する“バッファ・アンプ”という機器が存在しますが、クリーン・ブースターも音量が大きくなることを除けば、バッファ・アンプと同様の効果が期待できるわけです。
ここでは「インピーダンスが高い=電気信号的に弱い」ということを覚えておきましょう。「弱い」というのは電気的にノイズが乗りやすい、劣化しやすいということになります。
バッファーとブースターの違い
ブースターにはバッファーとして使えるモデルがありますが、そもそもブースターとバッファの違いはどこにあるのかを考えていきたいと思います。
まずバッファというのは、電力だけ増幅して音量は変えない、ということを目的とするの機器のことを指します。
一般的に電源を必要としないパッシヴ・ピックアップの出力は非常に電力が弱いのです。電力が弱いということは、信号を運ぶ力が弱いということです(その状態を「インピーダンスが高い」と呼びます)。
よって電波等の外部ノイズの影響を受けやすくなったり、高域減衰などの信号劣化の原因になります。またノイズは、ケーブルが長くなれば長くなるほど乗りやすくなります。シールドはなるべくノイズを防ぐ構造にはなっていますが、完璧ではありません。さらに、バッファ機能を持たないエフェクターがいくつも繋いである状態では、あちこちでノイズが加算されて信号が劣化していきます。
そして、途中で混入したノイズごとアンプに入力され、アンプでさらに増幅された結果、ノイズまみれの音が出力されてしまうことにもなりかねないのです。バッファはこれを防ぐために使われます。
ではバッファが実際にどういう風に働くかというと、バッファにはギターから入力された電気信号を強くし(ロー・インピーダンスに変換する)、シールド・ケーブルを通る間に紛れ込むノイズの影響や、信号の劣化を少なくする効果があります。但し、ここで勘違いしてはいけないのがノイズを取り除けるわけではないのです。
あくまで目立たなくするだけで、例えばバッファ搭載のエフェクターを繋ぐと、その後の信号というのは電力的に強くなったものなので、電気が川のように流れているような状態になります。つまり音はそのままノイズが入るかもしれませんが、混入したノイズさえも電気の方が強いので、結果ノイズが目立たなくなるのです。
つまりバッファを通しても信号が劣化しなくなるわけではありません。
バッファの後ろが長ければ長いほど、エフェクターをいくつも経由してアンプにプラグインされるときなどは、シールドケーブルや外部からの抵抗なども起こりえます。これらを考慮して、バッファ回路でそこそこの高域を持ち上げるなど、聴感上の補整を行なっている機種もあります。
バッファによって音質が変化する理由
一般的にパッシヴ・ピックアップのインピーダンスは高く、周波数帯によってインピーダンスが異なります。
もちろんシングルコイルやハムバッカーなどピックアップの種類によっても違いますが、概ね高音域にあたる部分が特に高くなります。だいたい1kHz辺りから徐々にインピーダンスが高くなり、5~8kHzをピークにインピーダンスが最も高くなります。
バッファを通った信号はインピーダンスが低くなり、つまり電力が強くなり、さらに周波数帯によってのインピーダンスの差もほとんどなくなります。しかし、実はこのことはアンプから見れば大きな問題となります。
アンプ側からしてみれば、本来想定していなかった形で信号が入ってくることになります。低音域と高音域のバランスが全く変わってしまうのです。その結果、バッファを通したことによって音が変わってしまったように聴こえてしまうのです。これがバッファによって音質が変化する理由です。
昨今はトゥルー・バイパス人気を背景に、バッファが音質変化の犯人のように扱われている面もありますが、実は通すと音質が変化するというのは、バッファというよりも、むしろギターのピックアップの特性に要因があるのです。
最近では、バッファも高性能なのが開発され、音質変化が極めて目立たないものも数多く存在します。トゥルー・バイパスにこだわるのも、もちろん間違いではありませんが、大量のエフェクターを繋ぐのであれば、バッファを導入した方が遥かに良い結果が得られる場合も多いのです。
「シグネチュア・トーン」を生み出す隠し味
前項でブースターの役割として「音色やレスポンスを変える」と書きましたが、いよいよここが今回のメインテーマとなります。
元々、オーヴァードライヴ・サウンドとは、アンプをドライヴさせて作り出していたものです。フェンダー・アンプのヴォリュームを上げ、アンプがオーヴァーロードすることで生まれる歪みや、マーシャルのヴォリュームが上がってくると起こるドライヴがそれですね。基本的にはプリアンプやパワー・アンプ部分で生まれる歪みを指しています。
15Wや30Wのアンプであれば、ちょっとパワフルなドラマーとプレイする場合に必要とされるレベルまで音量を上げると、大体「クランチ」と呼ばれる軽い歪みを得ることができます。その状態では、ギター側のヴォリュームを絞ることで、クリーンな音色を得ることも可能です。
ところが、往々にしてアンプが歪み始める音量レベルまでヴォリュームを上げるのが不可能な場合があります。というのも、アンプが歪むぐらい音量を上げようとすると、その音量は並大抵の大きさでないからです。
そこで70年代以降、多くのギタリストが補助装置としてオーヴァードライヴ・ペダルを繋いでドライヴ・サウンドを作り出してきました。
また多くのアンプ・ブランド側も、それまでのプリ・アンプにももう一段、増幅回路を設けてゲインを稼ぎ、音量を上げなくてもアンプ単体で十分な歪みが得られるようにデザインを変更していきます。
オーディオ・アンプでは嫌われる「歪み」を上手く利用したギター・アンプならではの解釈です。にもかかわらず、なぜ歪まないクリーン・ブースターが登場し、そのペダルをミュージシャンたちがこぞって使用し始めたのでしょうか?
エディ・ヴァン・ヘイレン、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモア、エッジ、ブライアン・メイ、そしてジミ・ヘンドリックスなど、彼らのような名手に共通して言えることが、歪み以外のアイテムで人とは違う歪みサウンドをクリエイトしていたということです。
続きの記事では、アンプでのオーヴァードライヴ・サウンドにもうひと味加えて「シグネチュア・トーン」と呼ばれる素晴らしい音色を、どのようにして彼らが作りだしていたのか。その秘密について解説したいと思います。
なお、こちらの記事は10 部販売したら値上げさせていただきます。
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