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プロの現場から学ぶコンプペダルの使い方ガイド
こんにちは!
GT SOUND LABのTAKUYAです!!
一般的にはピッキングの粒をそろえるための機器と捉えられているコンプ・ペダル。多くの方が「コンプレッサーを使うと演奏が下手になる」と聞いたことがあると思います。
確かにピッキングの粗さを隠すためにコンプを使っていると、自身のピッキングの出来不出来が判断できなくなり、それが演奏技術の向上を妨げ、悪循環に下手くそになると言っているのだと思いますが、そもそもコンプは粗さを隠すことが目的のエフェクターではないのです。
プロの方のペダルボードを見るとコンプ・ペダルが組み込まれているのをよく見かける機会が多いかと思います。
例えば国内のギタリストですと、今剛・増崎孝司・菰口雄矢・佐橋佳幸など錚々たるトッププレイヤーのボードにはほぼ必ずコンプが入っています。
実はプロの現場でコンプは、歪み系ペダル以上に重要頻度が高いのです。
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右上にはORIGIN EFFECTS Cali76-CDが配置されている
しかしながら上記に書いたようにコンプレッサー=ピッキングの粗さを隠すためのペダルという間違った認識が広まっているせいか、プロの方よりもむしろアマチュアの方のほうが使用率が低いように思われます。
また、音色が劇的に変化するわけではないので、今ひとつ使い所がわからないという方も多いことも要因のひとつと考えられます。
ここではプロギタリストのローディーをさせていただく中で、実際に現場で使用されているセッティングや組み合わせ方をお伝えし、一歩踏み込んだコンプ・ペダルの使い方を紹介していこうと思います。
コンプレッサーの基礎知識
コンプレッサーの効果
そこでまず、コンプを正しく使うためにその効果をおさらいしておきましょう。
コンプは「圧縮機」という意味であり、大きな音を抑え、小さな音を持ち上げ、音圧感を一定に揃えてくれます。
レンジ感も圧縮されるので、余分な高音・低音が抑えられ、抜けの良い音色を作るのが特徴です。
「レンジ感が圧縮される」と表現すると、音が細くなるように感じるかも知れませんが、そうではありません。
音と音の隙間が圧縮により埋まることで、綿密な密度のある太い音に感じようになります。
各コントロールの役割
現在では多くのメーカーからデジタル方式を含む多種多様なストンプボックス・コンプレッサーがリリースされており、アナログ方式の心臓部にも先人が研究開発を手がけたあらゆるデバイスが用いられています。
サウンド・キャラクターや機能もまた多彩で、スタジオ・レコーディング機器のように"THRESHOLD"、"ATTACK TIME"、"RELEASE TIME"といったコントローラーをフルに備えることで幅広い音作りを可能にしたモデルから、アタック・タイムやリリース・タイムを固定してコントローラーの数を減らし、わかりやすい音色変化と簡易な操作性を実現したモデルまでが存在します。まずは基本となる各コントロールの役割をおさらいしておきましょう。
・THRESHOLD(スレッショルド)
コンプレッションがかかり始めるレベル(音量)を決定するパラメーターで単位は「dB」。スレッショルドが低く設定されていればそれだけ低い入力レベル(音量=小)からコンプレッションがかかり、反対に高く設定されていれば入力レベルがある程度、高い(音量=大)状態にならなければコンプレッションがかかりません。
・COMPRESSION RATIO(コンプレッション・レシオ)
入力信号が上述の"THRESHOLD"にて設定したレベルに達した時、どのくらいの量のコンプレッションをかけるか決定するパラメーターで、原音とエフェクト音のレベル比(dB)にて表記されています(もしレシオが"4:1"に設定されていれば入力信号レベル=4dBの場合、アウトプットの際にこれが1dBまで低下する)。"x:1"の"x"(1〜∞)が大きければ大きいほどエフェクト音のダイナミック・レンジが狭まり、一般的な撥弦楽器ではサスティン〜リリースに相当するレベルの低い音と、アタック〜ディケイに相当するレベルの高い音と音量差が小さくなりますが、その分、原音を備える自然なエンヴェロープ・カーヴからは遠ざかっていきます。なお、ストンプボックス・コンプレッサーでは"COMPRESSION"、"SUSTAIN"、"SUSTAIN"などと名づけられたひとつのコントローラーでスレッショルドとコンプレッション・レシオをプリセットに従って同時に変化させることがあります。この場合、スペック・シートには単に"マキシマム・コンプレッション=20dB"などと記され、数字が大きいほどディープな効果が期待できます。
・ATTACK TIME(アタック・タイム)
入力信号が上述の"THRESHOLD"にて設定したレベルに達した瞬間から一定のコンプレッション・レベル(ほとんどのメーカーが10dBを基準とする)に移行するまでの時間を決定するパラメーターで、単位には「msec(1/1000秒)」が用いられることが多いです。アタック・タイムが短ければ短いほどダイナミック・レンジの圧縮が急激に起こるように感じられ、逆に長ければ長いほど緩やかに起こるように感じられる。ストンプボックス・コンプレッサーを代表するMXR“DynaComp”では5msecに固定されています。
・RELEASE TIME(リリース・タイム)
入力信号が"THRESHOLD"にて設定したレベルを下回った時からコンプレッション効果が終わるまでの時間を決定するパラメーターで、単位にはsec(秒)が用いられることが多いです。リリース・タイムが短ければ短いほどサスティンは急激に消音(0dB)に向かい、逆に長ければ長いほど緩やかに消音に向かうように聴こえます。MXR“DynaComp”では1secに固定されています。
・SOFT KNEE/HARD KNEE(ソフト・ニー/ハード・ニー)
入力信号が上述の"THRESHOLD"にて設定したレベルに達した時、エンヴェロープ・カーヴがリニアな状態に対して鋭角的な折れ線を描いてカットされるものをハード・ニーな特性、滑らかな曲線を描いてカットされるものをソフト・ニーな特性と言います。ストンプボックス・コンプレッサーでソフト・ニー/ハード・ニーを切り替える機能を実装するものは稀ですが、聴感上の効果のマイルドさ、あるいは鋭さを決定する大きな要因であるため、各メーカーが設計段階で特性を吟味しているものと思われます。
・MAKEUP GAIN、OUTPUT LEVEL(メイクアップ・ゲイン、アウトプット・レベル)
多くの場合、コンプレッサー回路の後段に置かれるバッファ・アンプのゲインをコントロールするパラメーターで、特にエレクトリック弦楽器用コンプレッサーでは一旦、ダイナミック・レンジを圧縮されたエフェクト音のレベルをブーストすることによりサスティンを強調する重要な役割を持ちます。ストンプボックス・コンプレッサーの中にはバッファ・アンプの代わりにオーヴァードライヴやディストーション回路を搭載することで総合的なサスティンを一層、延長するものもあります。
現在の市場で目にするアナログ・ストンプボックス・コンプレッサーは、これらのパラメーターや特性を操作可能にしたり、あるいはプリセットとして固定することでそのモデル固有のサウンド・キャラクターを作り上げています。
中でもMXRやROSS、DOD、BOSSといった1970年代の伝統を受け継いだ製品はコントロールの数を2〜3個に抑えて本体を小型化するとともに簡易な操作を謳う傾向にあり、"ATTACK TIME"や"RELEASE TIME"もプリセットされることが多いです。
プロ現場での実際の使用方法
聴覚上、一番大きく感じる点が音量の均等感なので、ピッキングを粒をごまかすために使いたくなる気持ちもわかりますが、現場ではレンジ感や音の隙間の圧縮感の方が重要になってきます。
続きの記事では、プロの現場で使われている効果的な使用方法について解説していきます。もうワンランク上の上質なギターサウンドを目指されている方はよろしければチェックしてみてください。
なお、こちらの記事は10 部販売したら値上げさせていただきます。
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