見えない弾丸
いきなりだが、ロックが好きだ。
2020年を締め括るようなnoteを書きたいと思っていたが、どんな内容ならば相応しいのか、わからないまま大晦日イブである。
ロックが好きだ、その気持ちだけで書き始めてみようと思う。どんな内容になるかは勢いに任せるが、年内最後なのは間違いない。
年末にやるべきこともだいたい済ませて(あるいは済ませたつもりになって)、だらだらと過ごしていた。つい先程まで観ていたのは、野性爆弾くっきー!のYouTubeである。
内容はルイスレザー(名だたるミュージシャンたちが愛用する、イギリスの革ジャンブランド)のショップに行って買い物をするというシンプルなものなのだが、「うわあ、クロマニヨンズのサインや」とか、「ジョニー・サンダースがこれ着とったんですよ」とか、破天荒な芸人がいちロック少年に戻って目を輝かせていて、なんだかたまらない気分にさせられた。
仮面ライダーのベルトと一緒なのだ。
幼き日、テレビを通して憧れたそれなのだ。
そして、その魔力は、大人になっても一向に解けることはなく、むしらどんどん強くなっていくのだ。
飽きることのないおもちゃを見つけた、こんな幸せなことってあるだろうか?
食べるものはファストフード、着るものはユニクロ、聴くものは歌番組、それで済んでしまう人生もきっとある。それを否定する気はさらさらないが、ぼくはもっと自分の興味について贅沢をするべきだと思っているし、当たり障りのない波風のない人生を送りたくはない。哲学のない人間はつまらない。人生を選べ。
ロックは、ファストフードなライフスタイルにいきなり風穴を開けてくるミサイルだ。
ふと目をやると、ぼくのお腹には大きな風穴が開いていた。「やれやれ」と思い、前かがみになって、その穴から背後を覗き見る。逆さになった視界で、ビートルズが、ストーンズが、ザ・フーが、キンクスが、みんなこっちを向いてにやにやしていた。
ぼくもにやりと笑って体を起こす。それにしてもいつからこんなに大きな穴が空いていたのだろう? どうでもいい。
前を歩いている冴えないオヤジも、ベンチで暇そうにしている兄ちゃんも、同じような穴が空いていた。
ぼくは手をピストルの形にして、彼等の穴めがけて見えない弾丸を放つ。穴をすり抜けていった弾丸が、どこか見えなくなるくらい遥か遠くまで飛んでいって、誰かに風穴を開ける、かもしれない。
それが偽善なのか、恋なのか、破壊なのか。
名前のつけられない何かをロックと呼んでいる。
良いお年を。