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探す喫煙者

 最近、紙たばこの吸えるカフェや喫茶店が相当少なくなってしまった。
 ぼくの生活圏内で把握してるところは四つ。

 探せばまだあるのかもしれないが、探すためのシステムが完成していない。
 喫煙可能な店を探すマップはJTが提供している。だが居酒屋等もまとめて表示されるため、使いにくい。それに、おそらく店の方が自主的に登録しないと反映されないのだろう、ぼくの知っている店はそこに載っていない。今でも紙たばこの喫煙可(電子たばこの喫煙スペースを置いた店は割とある)を貫いているカフェや喫茶店は昔ながらの雰囲気のところが多く、そういう店主はネットに疎そうである。おそらく、そんなマップの存在すら知らないのだ。
 よってJTのシステムも、あまり役に立たない。
 
 「たばこなんて今どきもう古いしダサいよ。健康的なライフスタイルこそ、何よりのインスタ映えなのさ」なんてアドバイスはとりあえず脇にどけておいてほしい。意見の違いを尊重しあう、それがこの国の民主主義ってやつだ。

 検索で見つけられないものを、どうやって見つけるのか。
 結局自分の足で探すしかないのだろう。

 大通りは駄目だ、外資のチェーン店が幅を利かせすぎている。ちょっと脇に入って、いなたい佇まいの店を探してみる。営業しているのかしていないのか、ぱっと見でよくわからないくらい濃い色のガラス。顔を近づけてようやく透けて見えた入り口付近にはマンガの並んだ棚、そしてその上に無造作に置かれた新聞。奥にはエプロンをつけた中年男性が座っている。カフェ店員という言葉から想像するおしゃれな雰囲気とかけ離れたその冴えない出で立ちでぼくは確信する。ここだ。店主の座るカウンター席の端には、もちろん水差し、そしてアルミのありふれた灰皿が山のように積まれている。おもむろにドアを開き、「やってます?」とぼくは訊く。声すら出さずこくんと頷く店主の視線は、高校野球の地方予選を放映するテレビから離れない。

 すべてがネット検索で済んでしまう、そんな時代になりつつある。しかし、もしかすると時間の無駄にしかならない行為が、少し自分の生活を彩ってくれる可能性もある。
 
 この文章を書き上げるために、コーヒーが飲みたくなった。この辺に、喫煙可能な店はあるだろうか?
 スマホはポケットに入れておこう。

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吉沢ハル
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