莫大な電力消費で停電する台湾
TSMCの電力消費は原発3基分以上に
半導体製造は、想像を遥かに超える量の電力を使用する。台湾のTSMC工場の電力使用量は、2022年時点で台湾の総電力需要の6%を占め、2028年には13%にまで増加し、450億kWh もの電力消費量になると予測されている。これは台中の原子力発電所3基、火力発電所10基に相当する。
ハーバード大学の研究者であるUdit Gupta氏と共著者は2020年の論文で、「テクノロジー産業において半導体の製造が二酸化炭素排出の主な原因である」と述べている。つまり、それだけ大量の電力を半導体工場は消費し、発電所から大量の二酸化炭素が放出されるということだ。
現在建設中のJASMだけでもかなりの電力を消費するが、ここに第二工場、さらに台湾でストップがかかり始めた開発計画規模の工場が追加された場合の電力消費は想像を絶するものだ。
『新新聞』によると、高雄の工場新設と中部科学園区、新竹科学園区、南部科学園区の工場拡張の4カ所合わせると336万kW の電力消費となるという。特に、高雄の新工場は規模が大きいため、126万kW も消費する。これは、台湾の原子力発電所1.7基分である。
単純計算できるものではないが、JASMを発端にして、熊本で開発計画が進められていくと仮定した場合、原子力発電所3基分、もしくはそれ以上の電力が必要になってくる可能性は十分にある。
TSMC電力消費量の推移と予測。年々増加し続け2028年には原発3基分を超えるほどまで増加すると予想されている。
TSMCが求める再生可能エネルギーは環境を汚染する
『日経XTECHスペシャル』によると、熊本新工場は、再生可能エネルギー100%の「RE100」を前提に建設・体制整備を進めているという。
『西日本新聞』で報道されていたメガソーラーの設置によって破壊された阿蘇山の姿が痛ましい。仮に、TSMCの莫大なエネルギー消費を賄うためにメガソーラーなどを増やすことになれば、熊本の観光資源であり、象徴でもある阿蘇山は、一層メガソーラーに覆われる事態になりかねない。
そもそもメガソーラーは九州には不向きである。日本列島は地震が多いことに加えて、九州は台風も多く、メガソーラーの設備が破損する可能性は十分にあり得る。災害によって破損したパネルから有害物質が漏れ出る可能性は高い。
太陽光パネルに含有される可能性の高い有害物質は、鉛、カドミウム、ヒ素、セレンであり、非常に有害だ。実際、環境省の太陽光パネルの破砕片の溶出試験では、鉛、セレン、カドミウムの溶出が基準値を上回る値で検出されている。
さらに、環境省のガイドラインでも「ガラスが破損した使用済み太陽電池モジュールは雨水等の水漏れによって含有物質が流出する恐れがある」とされている。
また、太陽光パネルの廃棄はリサイクル・埋め立ての二通りであるが、埋め立ての場合の土壌汚染や地下水汚染のリスクが残されている。つまり、TSMCはこの点においても土壌・地下水の重大汚染の原因になり得るということである。
環境破壊だけじゃない!メガソーラーは家計も圧迫する
再生可能エネルギーの拡大のよるFIT賦課金の増加は国民の家計を圧迫しているが、問題はこれだけに止まらない。太陽光発電や風力発電のような自然変動性の高い電源は、電力需要に応じた供給をすることができない。
太陽光の場合、晴天時は発電量が需要を超えてしまい、超過発電によって既設の火力発電所の稼働が低下し、固定費回収が遅れて火力発電のkWh あたりのコストが上昇する。
逆に雨天時には、電力需要を満たすために火力発電を必要とするため、再生エネルギーをいくら増やしてもバックアップの火力発電をストップすることは不可能である。火力発電は稼働率が低いとコストが異常に高くなるので、それを日本社会で負担することになるのである。
太陽光パネル製造における人権侵害
日本の太陽光パネルの8割以上は輸入品で占められている。世界シェアの7割強が中国製、それに韓国、マレーシアが続き、3カ国で約85%を占めている状態である。つまり、メガソーラーは国内メーカーに利益が上がるような事業でもないのである。
だが、それだけではない。中国製太陽光パネルの活用についてはESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から国際的な問題が首をもたげてきている。
太陽光パネルは、高純度の多結晶シリコンウェハに光電効果を持たせる半導体処理を行って製造されるものだが、その多結晶シリコンの生産シェアの45%を中国の新疆ウイグル地区が握っているとされる。つまり、太陽光パネルは新疆ウイグル地区の強制労働を助長するような事業なのである。