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グラム単位で悩ましい

 僕は機材を選ぶときに、その品物の重量をめちゃくちゃ重要視します。場合によってはスペックの中で最も選定の優先度が高くなることもあります。楽器・機材が持つ機能的長所は物によってさまざまありますが、重量も立派なアピールポイントになると思っています(商品概要に寸法といっしょに重量を記載してくれてるメーカーは無条件で好きになってしまいます)。というのも、現代の楽器演奏者のうち、少なくない割合のかた(僕を含む)は、愛機を運搬するときには徒歩や公共交通機関を利用するのではないでしょうか(ときどき街中でギターケースを天に聳えるように背負って自転車やバイクをかっ飛ばしてる人を見かけますが、あれは強風に煽られた時とかに想像以上にバランスが崩れてとても危ないのでやめた方がいいのでは…と思っています)。そういう演奏者にとって、機材の重量というのは日々のプレーに影響してくる(かなり物理的に)要素だと思うのです。
 ギターやベースの場合、練習やセッションやライブの日、朝起きて(夕方かもしれません)身支度を整え、その日使う機材一式をまとめ、背負ったり抱えたりカートに固定したりして家を出発するとします。道中では階段を昇ったり降りたり、荷物をよいしょと持ち上げたりすることもあるでしょう。そうやってスタジオやライブハウスに到着し、その日の演奏を張り切ってこなします。納得いく日もあるし、反省する日もあると思います。そのあと外食をしたりすることもあるでしょう。こうして暮れた一日の最後には、必ずだいたい往路と同じだけの復路が待っているわけです。この行程に絶えず付いて回る機材が20kgも30kgもあったんじゃとてもじゃないけど身体がもちません。家の前の坂道で、駅の階段で、バスのステップで、自分の機材の重量が自分の体力を奪い、移動の障害になってるようじゃ元も子もないです。現場での出音さえ良ければどんな重い荷物も無限に持ち上げられるミュージックゴリラみたいな人か、車が使えるかた以外はやってられないと思います。1回や2回なら我慢して運搬することもできるでしょうが、通年続くとなるとどこかで必ず「またあのクソ重い荷物を運ばなきゃいけないのか…」と億劫になる日がきます。楽しく演奏するために選んだはずの機材なのに、そんなつまらない原因で自分の障害になるぐらいなら、機材を選ぶときは音より軽さを優先事項とする方がいいとまで僕は考えています。
 ベースにまつわる機材の重量は楽器本体がだいたい3kg~5kg、ケースはハードケースなら3kg~5kgぐらい、ギグバッグなら1.5kg~2.5kgぐらいでしょうか。合計すると4.5kgから10kgの間でかなり選択の余地があります。エフェクターボードを持ち歩くならこれにプラスして2kgから10kgぐらいの荷物が追加されることになるでしょう。あまりたくさんはいないと思いますが、自前のアンプヘッドを持ち歩く人は、さらに3kg~30kgぐらいの箱が追加になります。キャビネットも運ぶなら軽量を謳うモデルでもプラス10kgぐらいは見積もった方がいいでしょうか(50kg越えのキャビを徒歩で持ち歩く人は率直に言ってどうかしてる人か戸愚呂弟なのでノーカウントとさせてもらいたい)。こんなフルセットを身体ひとつで日頃持ち運ぶ人はそんなにいないとは思いますが(皆無とは言い切れないし、恐ろしい事に実際に知人にいます)、まあどんなに軽くても合計だいたい20kgぐらいの荷物を演奏のたびに家から引きずり回すのはおよそ現実的ではないでしょう。
 これをチマチマ削って荷物を軽くしていくのが僕は大好きです。みみっちいと笑われようが、日々の演奏と自身の健康のためには必要だと思うので、結構本気でしょっちゅう考えてます。楽器本体の重量はそうそう変えられない(かなりクリティカルに音に影響するし、これを軽くしようと躍起になると相当な泥沼が待っています)ので、まずケースを軽くするところから始めましょう。よっぽどデリケートな楽器でない限り徒歩移動でハードケースは必須ではない(まずデリケートな楽器の場合、移動中に楽器に気を配れない人はそもそも持ち歩かない方がいいでしょう)ので、ギグバッグの中で保護力と重量のバランスが取れたものを選びます。所詮ケースと侮ってはいけません。演奏時以外の全ての場面で大切な楽器の保護を任せる機材なので、多少高くても質の高いものを選んだ方が絶対に後々自分のためになります。ここをケチって5000円の2年ぐらいで壊れる物を買うなら、20000円ぐらい出して10年使えるものを入手したほうが遥かに健康的です。
 エフェクターボードは軽量化の腕の見せ所でしょう。昨今はエフェクターメーカー各社に小型高性能化ブームが巻き起こっているので、音も含めて注意深く選んでいけば驚くほど軽量化できます。ボードもハードケース型ではなくバッグ型にすれば、2kg台なのにチューナーと5個のエフェクターがセットされた夢のようなボードを組むこともできます。前の記事でも書きましたが、ベースにとってエフェクターは最悪なくてもいい機材なので、どうせ持つなら音と機能性と可搬性を両立させた気持ちいいセットにしたいところ。
 アンプヘッドも小型化の波がきていますが、まだまだ過渡期だと感じます。それなりの出力と音質を保ったものは、まだ3kg台がボトムラインといったところでしょうか。ただKORGとノリタケ伊勢電子が開発したnutubeの技術が歩留まりしてくれれば、VOXのMV50みたいなアンプヘッドがベースでも使える日が来るかもしれません。VX50BAは低出力・小口径のコンボアンプですが、あのサイズであの音が実現できたなら、ゆくゆくはトレースエリオットのELFぐらいの大きさで100wのフルチューブなんて冗談みたいなアンプヘッドが出現するかもしれません。キャビネットはよっぽど気に入ったものがない限りは個人で所有する必要はないでしょう。なににせよ、ここぞという場面以外ではアンプはスタジオやライブ会場の備品を借りるのがいいんじゃないでしょうか(しかし時々マジでパーフェクトに整備不良な粗大ゴミのようなアンペグしか置いてない場所もあるので油断は禁物です。そういうのに遭遇した時は爆笑しながらEQをフルテンにするか、二度とそこを使わないようにしましょう。一応フォローしときますがちゃんとしたアンペグからはちゃんとした音が出ます。機材がちゃんとしてないのはほぼ確実にその場所の管理者の責任です)。
 エレキベースの場合、楽器とエフェクトボードだけならきちんと厳選すれば両方合わせて7kg台に収めることも不可能ではないでしょう。徒歩での移動もあまり苦にならない重量だと思います。試しに今自分が日常的に使ってる機材(今回のヘッダ画像です)の重量を合計してみたら、本体がケース込みで6.5kg、エフェクトボードは2.2kgでした(前回記事の舌の根の乾かぬ内に構成が変わり、位牌にしたいとか言っていたビッグマフが外れました)。9kgを切れてるのでまあ自分的には合格点って感じです。と、こんな感じの記事を書きながらあれこれ考えているうちにまだ軽くできそうな気がしてきたので今度試してみましょう。お時間あるかたもぜひあれこれ考えてみてください。いい音を出せるまま荷物をグラム単位で軽くしていくの、結構楽しいですよ。徒歩移動をラクにして交通費を削り、浮いたお金で最終的にハイエースを買えば全てが丸く収まります。

 全く関係ない文末で恐縮ですが、学園祭学園のサポートをしてくれているブラボーカフェの小松秀行氏がnoteを始めたそうです。たぶん楽しい感じの記事が読めるnoteになっていくでしょう。チェキ!(CV:半場友恵)。



#学園祭学園 #ユートピアだより #楽器

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