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【GSC福島スタディープログラム 2020】 現地訪問レポート➁福島2日間の振り返り&未来を考えるワークショップ

みなさまこんにちは。GSC横浜ハブの竹田響です。

2020年12月4日(金)~6日(日)の日程で、GSC Yokohama hubのメンバーを中心として、福島県浜通り地区にお邪魔しました。現地では、東京電力福島第一原子力発電所を初めとする施設を見学させていただきました。大熊町役場では、役場で働く職員の方と意見交換をさせていただく機会をいただきました。前半の二日間で浜通り地区でのフィールドトリップを実施し、最後の一日は東京に戻りワークショップを行うという行程でした。本記事では、特に3日目に東京で実施したワークショップについてまとめさせていただきます。

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私たちは、今回の訪問に際して、事前に二つのテーマを設定していました。一つは「産業」。今の福島の特性を生かして、どのような産業活性化ができるのか。既存産業、新規産業の発展に向けての取り組みをフィールドトリップを通して学び、私たちができることを探ることです。そしてもう一つが「エネルギー」について。持続可能な社会の形成に向けて私たちはどのようにエネルギー問題に向き合っていくべきなのか。個人、組織レベルでエネルギーについて見つめなおすことです。

浜通り地区でのフィールドトリップでは、経済産業省資源エネルギー庁の協力の元、朝から晩まで視察や意見交換を設定いただいていたため、三日目のワークショップでは、まずはじめに、フィールドで学んだこと、感じたことを振り返るセッションとして、個人での振り返りを行う時間を初めに持ちました。その後、話し合ったことをチーム内で共有しました。

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 チームに分かれて2日間の振り返りとチーム内での共有

今回のフィールドトリップの参加者の中には、これまでに何度も浜通り地区を訪れている人もいた一方で、今回の訪問を通して、初めて浜通り地区を訪れる人もいました。今回初めて浜通り地区に足を運んだ参加者からは「どこか(震災に関する課題は)解決した気になっていた。10年も経っているし、福島産のモノも買っているし。未解決な問題であるという事自体に目が向いていなかった」「東日本大震災で津波の被害にあった他の地区は訪れたことがあったが、浜通り地区は、(他の地区と比べて)人がいない、今も住んでいない、という点で全く状況が違った」といった声が聞かれました。

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帰還困難区域の様子。バリケードが張られており、まだ居住はできない。

個々の振り返りの後に行ったセッションは「福島のために私たちにできること」についての参加者同士のディスカッションです。
 「外部者として最終的に地域に介在すべきなのか、まだ答えが出せていない」という意見も参加者から共有された一方、「(浜通り地区に)課題が山積していることは理解しているものの、住民、東京電力、地方自治体、国といった各セクターがそれぞれ考えている課題感が別々にあり、それぞれが別々に動いている様に感じられたので、それらを上手くまとめていくためのお手伝いが『外の人』としてできるのではないか」、「産官学の連携が重要だと思うが、今のところ学術分野における連携が薄いと感じるので、その点を強化することが必要なのではないか」、「それぞれの地域自治体が別々の方向を向いており、連携が上手くできていないように見受けられたため、自治体間の調整という点でも何か私たちが協力できるのではないか」、「何か新しいものを生み出していこうとするダイバーシティ(多様性)の可能性は感じたものの、全体として他者を巻き込んでいくような連携が取れておらず、また明確なゴール(目標)が設定できていないように感じたため、目標設定のフェーズで何か手伝えることがあるのではないか」といった意見が出されました。

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ディスカッションのチーム決めの様子。興味のあるトピックが似ている人たちでチームを作り、ディスカッションを行った。

浜通り地区は津波の直接の被害に加え、福島第一原子力発電所の原発事故により、区域によっては放射能汚染の影響を受けました。そのような中で国家主導のプロジェクトとして打ち出されているのが、「福島イノベーション・コースト構想」です。「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」の6つが重点分野として設定されていますが、この「福島イノベーション・コースと構想」についても「構図自体は良いと考えるが、一方で、地域に根差した人びとの意見が不在であり、また地元の町との連携ができていない様に見受けられた。国が推進している事業を地域にどのように根付かせていくのか、その点が課題であり、ニーズを拾い上げる点で力になれるのではないか」といった意見が出ました。
 一方で、「『科学技術主義』の限界が来ているのではないか」という意見も。「科学技術は人間が生み出したものの、原発を含め、どのように対処したらよいのか分からない状況が生み出されており、何か新しい技術を更に生み出すのではなく、『再生産』や『循環』といった価値観を導入できたとしたら、より優しい社会、包括的な社会になっていくのではないか」という声も聞かれました。

 町づくりに関する議論も出てきました。「現在は主語が国や地方自治体になっていることが多いが、個々の動いている人が見えないと周囲の人々を巻き込んでいくことは難しい。その仕組みづくりで手伝えることがあるのではないか」、「外者としては、安易に『復興』という言葉を用いるのではなく、『新しい町づくり』という観点から取り組んだ方がよいのではないか。新しく何かを行う時のはじめの一歩の手伝いができるのでは」といったコメントが出てきました。

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街づくりに関する出てきたアイディアの一例

 また原子力に関する議論も多くなされました。東日本大震災以前は「夢のエネルギー」として扱われていたが、発災後10年が経過した今日においても、その影響は色濃く残っている他、廃炉そのものについてもまだ道半ばの状態にある、という現状がある。「人間が生きる時間軸に対して、原子力発電所で用いた核燃料から出る放射線を管理するためにはより長い時間が必要であり、この点について、日本社会に暮らす一人一人が向き合っていく必要がある。エネルギーについて考える取り組みで出来ることがあるのでは」、「福島第一原子力発電所自体が、東京と密接に関わっている場所。事故の前も後もそれを意識せずに生活してしまっていること自体が搾取なのではないか。国・東京電力・地元の住民だけが問題について考える構図がおかしく、この構図を変えるためのアプローチを私たちが作っていくべきなのではないか」といった話がされました。

 その後、お昼休みを挟んで午後に「カーボンニュートラル社会の実現に向けて」というテーマで講義が行われました。自然電力と経済産業省に勤務されているお二方から講義をしていただいた後に、その内容をもとに、再度ディスカッションを行いました。参加者からは「日常の中で、使っている電力の何が問題なのか、再生可能エネルギーを用いた電力を使わないとどんな影響があるのか、その構造が見えづらいということが問題な気がする、正直CO2が出るか出ないかで電力を選んでいない中で、カーボンニュートラルの問題と自分をどのように結びつけるのか、この点が課題である気がする」といった意見が聞かれました。

 最後にリフレクションを行い、三日間の日程を終えました。今回のフィールドトリップに参加した人びとは日頃首都圏に暮らす者が多かったが、現地に住んでいなくてもできることを考え、一つ一つ取り組んでいきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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