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【2022年11月フクシマ部現地ツアー】参加者レポートVol.2

こんにちは、グローバルシェイパーズ横浜ハブのしまきちです。
前回に引き続き11月に実施した福島ツアー2日目の様子をお届けします。

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廃炉資料館

 天候にも恵まれ、11月にもかかわらず暖かい快晴の金曜日。
朝食後、まずは福島第一原発(以下1F)から南へ10kmほど離れた富岡町の東京電力廃炉資料館を訪れました。

廃炉資料館の外観

1日目に訪れた伝承館とは異なり、こちらは東京電力(以下東電)が運営する施設。東電の目線から事故の記録と教訓を後世に伝え、廃炉事業の現状を伝える目的の施設で、原発事故のこれまでとこれからが展示・説明されています。
 
東電の施設ということもあり、展示が事故への謝罪から始まるなど通常の博物館施設とは異なる独特の雰囲気ですが、シアターや模型などを活用して事前の知識がない訪問者にも分かりやすい説明がされていました。

資料館では発電所内の作業員数のパネルも

館内見学後は、レクチャールームで福島第一廃炉推進カンパニー(東京電力HDの持株会社)の担当者の方から廃炉の「今」について説明いただき、バスでいよいよ1Fへと向かいます。

国道6号線を通りいよいよ1Fへ

 

福島第一原発

私が前回1Fを訪れたのは2017年春頃。
当時から既に防護服は必要なくなっていましたが、1F構内での必要な装備は手袋と線量計をいれるベストだけになっており、装備が更に簡素化されていることに、まずは驚きました。

協力企業看板を見上げながら管理棟に進む

施設内で案内バスに乗り込み構内を進むと、まず圧倒されるのは汚染水の処理に使用されるALPS(多核種除去設備)の大きさと、目の前に立ち並ぶ処理水の保存タンクの多さ。

汚染水処理に使われるALPS
立ち並ぶタンク


中には、大量の汚染水を保管するタンクが不足した際に全国から集めてきたタンクが現在は使用されなくなって空きタンクとして並んでいるなど、未曾有の状況に対する混乱の跡が垣間見えます。

震災直後には日本中からかき集めたという防火水槽。今は使用されていない

そして、1F内で最も印象的だったのは、1〜4号機を全て見渡せる高台からの景色でした。
前回の訪問時には立ち寄らなかった場所ですが、原子炉のすぐ目の前(原子炉まで僅か100mほどの地点)の立地にもかかわらず、線量が低くなっているためバスを降りての見学が可能となっていました。

高台からの眺め。左が3号機、右が4号機の建屋

そびえ立つ4つの建屋の大きさに対して、一人一人の作業員の方の小ささがとても印象的です。そして、この先に待つであろう途方もなく地道な作業を思うと、無力感とも焦燥感ともいえる複雑な感情が胸に迫ります。

続いて、津波の被害を受けた海側の建屋や今後行う海洋放水のための施設なども見学しました。案内中も、参加者の素朴な疑問や感想に、担当者の方との質疑応答が活発に続きます。
 
他の参加者からも、
「原発と海の近さに驚いた」
「想像以上に原子炉の建屋が想像以上に大きかった」
など実物を見たからこその声が数多く上がっていました。

建屋近傍の井戸から地下水を汲み上げ処理水の発生量を抑えるためのサブドレン設備
1号機のすぐ向こうには太平洋
施設内には焼却炉も



1時間弱の構内ツアー終了後は、集合場所に戻って持ち歩いていた線量計の数字を元に、被ばく量についての説明を受けます。
私の数値は0.02ミリシーベルトで、これは歯医者でのレントゲン2回分に相当するそうです。

環境省HPより。同じ説明図表が集合場所にも掲示されていました

 
「福島第一原発の廃炉」と一括りに語ってしまわれがちな「廃炉の今」ですが、原子炉によって事故での損傷具合も今抱えている課題も異なり、廃炉に向けては別々のプロセスが待っているそうです。
 
例えば、最初に水素爆発を起こした1号機には、建物の外側に大型のカバーを設置した後に破損している原子炉設備を解体後に燃料プール内に残る使用済み燃料を取り出す。
一方で、2号機では、原子炉建屋の解体は行わず、原子炉を原子炉建屋に直接、構台を設置してプール燃料の取り出しを実施予定。

今後大型のカバーを設置予定の1号機建屋
1号機よりもプール燃料を取り出し予定の2号機


誰も経験がしたことがない特殊なミッションに対して、
東電だけでなく世界中から最新の知見を取り入れながら、個別にカスタマイズされた計画とプロトタイプ実験、実行を繰り返す地道なプロセス。
想像を絶する難しいチャレンジに立ち向かう全ての関係者に感謝と尊敬の想いすら湧いてきます。
 
それと同時に、今後廃炉作業だけでも少なくとも30〜40年がかかるという途方もない時間軸に、人類が背負ってしまった十字架の重みを感じる、
1Fはそんな複雑な思いが湧いてくる場所でした。
 
 
そして、個人的に改めて難しさを感じたのは
科学コミュニケーションの難しさ。
 
放出する水に含まれるトリチウムの濃度は1Lあたり1500ベクレル未満。
これは国が定める環境放出の基準である60,000ベクレル/Lの40分の1。
WHOが定める飲料水の指標である10,000ベクレル/Lよりも厳しい基準です。
 
一方で、どんなに「科学的」な説明をしようとも、
消費者の中で「1,500だって十分大きな気がする」「薄めれば大丈夫なのかな」という素朴な反応、感情が生じることも理解ができます。
 
あれだけの関心を世界中から集めたFukushimaにおいて、過剰とすら思えても徹底的な数値管理・公表がなされることはやむを得ないと思う一方で、全てを見える化してしまうからこその弊害があるのかもしれないなとも感じました。
 
飛行機に乗る、X線検査を受ける、天然石のアクセサリーを身につける、
どれも日常生活の中では被ばくの観点から「リスク」であることを認識しないまま、ごく当たり前にとっている行動です。
これらの行動は放射線の被ばくと結びついて考えられることが少ないため「リスク」として捉えられない一方で、原発事故と直接紐づく処理水の話題はどうしても「リスク」を精査するという文脈で見聞きすることが多いため、初めからネガティブに捉えられてしまいがちです。
 
もちろん、事実を数字で示した上で判断をしてもらうのが王道ではありながら、これが想像以上に難しい。
東京電力や政府だけでなく、私を含む福島の現場を少しでも知る人が発信を続ける重要性を感じる一方で「科学」と「感情」のギャップの問題は特効薬の存在しない解決できない難しい課題であることを、再度感じさせられました。


大熊町交流ゾーン・町役場

その後、大熊町に移動してランチ。
ランチは2021年にオープンした商業施設内でいただきました。

煮物にお刺身が豪華なお魚定食

昼食後は大熊町役場の方にお話を伺いました。
全町が避難区域となり全町民が町外への避難を余儀なくされた大熊町では、長きにわたり役場の機能も町外の拠点へと移していたとのこと。
2019年から段階的に避難指示が解除され、役場の新庁舎も2019年5月からようやく大熊町内に戻ってきました。 


大熊町役場のある施設内。ツアーの案内をしていただいた経済産業省木野参事官と

印象的だったのは、毎年行っている住民への帰還以降調査では、6割近くの住民が大熊町には「戻らないと決めている」回答していたこと。
 
避難解除がいつになるのか不透明であった2012年の段階で「5年間は帰町しない」方針を打ち出したことで、多くの住民が避難先の拠点での生活基盤を作りやすくなったそうです。
一方で、避難から10年経って避難解除がされた今でも、なかなか町民が帰っては来にくい事情を伺いました。
 
とはいえ、新設のインキュベーション施設や、太陽光を利用したイチゴ工場などの新産業の推進など、一度何も無くなった町だからこそのゼロからのチャレンジに挑戦したい外部の企業を巻き込んでの街づくりはユニークな点だと興味深くお話を伺いました。

双葉町散策

その後再度バスに乗り、JR双葉駅の周辺を散策。
双葉町の役場がある駅の周辺は、2022年8月に避難指示が解除されたばかりの地域。駅の西側の地域には新設の公営住宅・賃貸住宅が立ち並びます。

駅周辺の公営住宅プロジェクト
立派な公営住宅が立ち並ぶ

また、駅の東側はArt Districtとして、建物の外壁や倉庫などの建物がフォトジェニックなスポットになっていました。

本当に住民が0になった町をこの後どうしていくのか、
というのは本当に難しい問いであることを目の当たりにすると同時に、
立ち寄った駅内の案内所でお話したスタッフの方が
「(私は)住めるだけで十分なので、それ以上は望んでいない」
と話していたことがとても印象的でした。

「ずっと、ふるさと。」

どんなに数は少なくとも故郷に帰ることで救われる思いの人が確かにいる、
どれほど時間が経とうとも、そこをふるさとする人の思いは消えない、
ことをまちづくりや復興の制度設計に関わる人は決して忘れてはいけないと改めて思いました。

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以上、ツアー2日目の報告でした!

個人的には、随分と久しぶりの福島訪問で、訪問前はお世話になった福島の方々・町に対しての後ろめたさ(?)もあったのですが、
少しずつだが着実に変わっている町の姿と、変わらない人の温かさ・町のユニークさを改めて体感し、行ってよかったと思えた3日間でした。

長文を最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
少しでも良いなと思った方、ぜひ次回のフクシマ部ツアー・活動にもご参加ください!

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