【2022年4月フクシマ部現地ツアー】参加者レポートVol.1
参加者の自己紹介
西川 真央(English Team 参加者、Global Shapers Community 大阪ハブ メンバー)
株式会社SEM(サスティナブルブランドの事業戦略策定・ブランディング支援)、サステナブルな製品の購入サイト(EARTH FRIENDLY)、土に還すファッションブランド(Syncs.Earth)や、沖縄ローカルに根付いたコミュニティプラットフォーム(一般社団法人サスティナブルオキナワ)など、サスティナビリティを軸とした4つの法人にて、Founder・取締役を務めています。
ツアー参加を決めた動機
仕事柄、”サスティナビリティ”という文脈で、”エネルギー”や”ローカルからのサスティナビリティ施策の社会実装”に興味があり、
今の福島原発の状況や、現地の街・復興の状態を、リアルに自分の目で見て、考えたくてこのツアーに参加しました。
福島原発の視察で感じたこと
原子力発電を、なんとなく怖いと思っていた。
今回は、原子力発電所内まで、特別に経産省の方からご案内いただきました。
メルトダウンが起きた1号機、水素爆発が起きた3・4号機などの現状や復興目処、放射線量など、実際に様々な説明や、質疑応答にも答えていただき、
事故の起きていない5号機(他号機と同様の設計)には、実際に原子炉の中にまでご案内いただきながら、今回の事故がどのように起き、現在どのような事後処理が行われているのかまで具体的にご説明いただきました。
私は、このツアーに参加するまで、なんとなく”原子力発電所は怖くて、危ない場所”だと思っていました。
でも、現地視察を通して、「何がどうなると危なくて、どの状態だと危なくないのか」という線引きが自身でできたことは大きな学びだと感じました。
また実際に、原発施設内に入る際には、何度もIDチェックや持ち物検査が行われ、
放射線汚染物質を万が一にも外に持ち出さないよう、防護服をそれぞれの施設を移動する毎に変えたり、施設出入り時には内部被曝のチェックなども行われており、できる限り、アクシデントが起きないよう配慮がなされている管理体制も印象的でした。
現地の人たちの、顔を見て話すことの大切さを改めて感じた。
当日、施設では二人の方にご案内いただきました。
一人は、原発事故が起きた10日後から福島で事故処理を担当し、今は福島のために骨を埋める覚悟で移住をされてきた経産省の方。
もう一人は、原発事故の際に、最後まで原発施設に残り、できるだけ事故を小さくするため命懸けで対応された職員の方でした。
多くの学びがありましたが、何より衝撃的だったことは、
それぞれの方に、こっそりと
『たくさん怖い思いをしてきて、事故処理も今めちゃくちゃ大変だと思うんですが、原子力発電所ってぶっちゃけ再稼働させるべきだと思いますか?』
と聞いたときに、返ってきた言葉でした。
お二人とも、揃って
『今の日本のためには、原発が必要だから仕方ないと思う。』と。
その時に私が感じたことは、
“日々の生活で使っている電気に、どれだけの人が感謝できているだろう?”という疑問と、
“そのために、少なからず命懸けで頑張っている人たちがいるという事実”も知らず、平然と過ごしていた自分の至らなさでした。
(もちろん、当人たちは”命懸け”という認識があるかは分からないですが。)
もし、ネット上でたくさんの記事を読んでも、きっと私は”安全性”についての情報など、ここまで信じられなかっただろうし、この人たちの日本への情熱を感じることはできなかっただろうと思いました。
叶うことなら、日本人としてできる限りの人に、直接話を聞いて、感じてほしいと心から思いました。
(聞いたのち、どのような意見を持つかは個々人の自由ですし、私が原発賛成というわけでもありません。)
今はたったの5%、2030年では22%。
私たちはこのままで良いのだろうか?
2020年の電力供給のうち、原発の割合は5%。2030年の電源構成は22%になるよう計画されています。
私は仕事柄、「原発は良くない!(石炭)火力発電は良くない!」という主張を強くする方と接することも多いです。
もちろん、色んな考えや価値観があって、主張することは良いことだと思います。
でも、こうして”日本のために” と頑張っている人たちと話す中で、
すごく違和感があったことは、
『だから、みんなで使う電気を5%減らそう!2030年までに22%減らそう!』
という主張や、実際にアクションまでしている人に、まだ出会ったことがなかったことでした。
経済合理性やCO2排出、エネルギー源の他国への依存率など、様々な理由から、
“日本のために” と想いを持って頑張ってくれている人たちがいて、
でも、与えられることが当たり前のように電気を使い、計画停電でさえ起きれば文句を言う人たちも、日本にはたくさんいます。
私たちは本当に、これだけの電気が必要なのだろうか。少し疑問でした。
福島の街々は、夜になると真っ暗で静かでした。でも星空がとても綺麗でした。
帰路につくと、煌びやかな街のネオンがたくさんあって、暖かく便利な場所がたくさんありました。
防犯や経済的な面で、電気を使ったほうがよいものもたくさんあるけど、
私たちがもう少し、心のスタンスを変えるだけでも、大きな変化があるのかもしれないと感じました。
ツアーを通して感じたこと
参加者間のディスカッションからも、多くの学びが。
仲間ができたことも、大きな価値に感じた。
本ツアーでは、原発施設の視察だけでなく、参加者の方々とディスカッションができる場もたくさん設けられていて、
再エネの電力会社、商社や研究者の方など、様々な立場の人たちと仲良くなれるキッカケをたくさんいただけたことや、
フラットにディスカッションをできたことも、大きな学びになりました。
特に、私が興味深く思ったトピックは、
「数字上、原発を減らして、再エネの割合を増やしたって意味がない。それはただ表面上は問題が解決したように見えるだけで、森を削って太陽光パネルを敷き詰めたのであれば、それは原発事故と同じで本当の解決じゃない。」
という、再エネ電力会社に勤務する方からの言葉でした。
私自身、人類は技術を過信しすぎていて、あたかも自然や、原子力は、”コントロールできるもの”という前提で議論されていることに、もともと違和感がありました。
太陽の光や風を使って、人類のためにエネルギーをつくることは当たり前で、
空気中のCO2を減らすためには、もっと地球からもエネルギーをいっぱいもらおうよ、
いやいや、原子力を使えば、もっと安いコストで大きなエネルギーを得られるよ、
と、あたかも全てコントロールできると思い込んで話されているような感覚に違和感がありました。
そんな中、ディスカッションで上記の言葉を聞いたとき、
もしかすると太陽光発電は、森や木々からの土地や太陽の搾取になるのかもしれないし、
それは森に住む生態系からの搾取になるのかもしれない。
やはり地球・生態系は複雑に絡み合っていて、まだ完全に人間がコントロールしきれるものでもないのかもしれない、と自身の考えにも気付きがありました。
私たち自身が、きちんと見て、学んで、考えて、決めないといけない。
今回の旅を通して、私たち一人一人が、もっと色んなことを積極的に知ろうとして、自分で考えて、ちゃんと自分の意思を決められるような人になっていかないといけないと感じました。
2021年のCOP26では、石炭火力発電を大きな理由の一つとして、「日本が化石賞を受賞した」と国内でも大きく騒がれました。
当時、ヨーロッパでは天然ガスによる火力発電をベースに進んでいましたが、天然ガスの価格が高騰するなどで継続が難しくなってくると、
気づけば、”原子力もグリーンな電気としよう” という話がEUであがっています。
日々の生活で忙しいことも、そんな余裕がないこともたくさんあるけど、
“良い”・”悪い” の判断は、遠い国の誰かの意見を鵜呑みにして決めるのではなく、
もっと近くにいる人たちと話して、自分は何を大切にしたいのかを考えて、行動できるような日本人でありたいと思いました。
最後に。
旅の企画から運営までしてくださった、フクシマ部のみなさま。
休日にも関わらず、ボランティアで施設内をご案内いただいた経産省の方々。
本当に、貴重な機会・体験をありがとうございました。
ここには書ききれないほどの学びや気付きがあり、またこの旅で出会った仲間たちとの縁や、一緒に取り組んでいけそうな活動にも、非常にワクワクしています。
福島原発やそこで働く人たち、街の復興やそこに住む人たちの”リアル”を、より多くの方が感じられる機会を得られるよう、これからもみなさまの活動を心から応援しております。