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授業の様子⑮:グローバルスタディーズ学科

今回は、人文学部3・4年生を対象に開講している「社会起業演習」の取組を紹介します。グローバルスタディーズ学科の学生が、直接受講する機会はないですが、人文学部に所属する先輩が普段どのような学びをしているかを知ることは、近接する学問領域の動向を知る機会にもつながるものだと思います。
 
ところで、読者の皆さんの中には「ソーシャル・イノベーション」や「ソーシャル・ビジネス」等の用語を聞かれたことがあるかと思います。「ソーシャル・ビジネス」とは、経済産業省の定義では「環境や貧困問題など様々な社会的課題に向き合い、ビジネスを通じて解決していこうとする活動」を指します。その言葉を一躍有名にしたのは、バングラディッシュのツムチッタゴン大学教授、ハマド・ユヌス氏です。バングラディシュは、アジアの中で最も貧困層の多い国です。新たなことにチャレンジしたくても、担保の少ない個人が融資を受けることは難しい状況です。そこで、その貧困層の支援を行うために、ユヌス氏は、1983年にグラミン銀行を立ち上げ、マイクロクレジットという比較的低金利による無担保融資を農村部、とりわけ大規模銀行からの資金の借り入れが難しい女性に焦点をあてて行いました。そのため、借り手の90%以上が女性だと言われています。結果として、5000万人以上の顧客の半数が、絶対的貧困から抜け出せました。その実績からユヌス氏は、2006年にノーベル平和賞を受賞しました。

グローバルスタディーズ学科の学生の皆さんの中には、諸外国の貧困や格差問題を是正したいという熱い思いで大学に入学された方もいます。しかし、その解決手段をどうするべきか考えあぐねている方も多いかと思います。その際に、「ソーシャル・イノベーション」の発想は重要となります。日本でも2008年頃から日本経済新聞等で用語が普及していきました。最近では、ベンチャー企業の多くに「ソーシャル・イノベーション」や「ソーシャル・ビジネス」の視点が取り入れられています。ユヌス氏は、以下のように「ソーシャル・ビジネス」の目的を記します。

①利益の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、技術、環境といった問題を解決すること。
②財務的、経済的な持続可能性を実現する。
③投資家は、投資額を回収する。しかし、それを上回る配当は還元されない。
④投資の元本の回収以降に生じた利益は、ソーシャル・ビジネス の普及とより良い実施のために使われる。
⑤環境へ配慮する。
⑥雇用者は良い労働条件で給料を得ることができる。
⑦楽しみながら実施する。
  『ソーシャル・ビジネス革命』ムハマド・ユヌス 2010年、早川書房。

「社会起業演習」では、「ソーシャル・イノベーション」や「ソーシャル・ビジネス」の視点をベースに、自身のアイディアを元に提案書にまとめることを課題としています。授業以外でも上記のお話をもう少し聞きたい方はぜひ研究室を訪ねて下さい。

2022年12月12日
南了太(グローバルスタディーズ学科教員)

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